雑ネタ

日本にも熱心なファンがいる! 海外の農場・牧場のみで使われる特殊車「農業バイク」って何だ?

「アグリカルチャーバイク」や「ファームバイク」という存在をご存じでしょうか? 直訳すれば「農業バイク」という意味ですが、文字通り、そういうジャンルのバイクが世界にあるんです。

とりあえず、当記事では「農業バイク」とそれらを呼ぶことにしますが、どんなバイクかというと、アメリカやオーストラリアなど広大な土地で農業や牧畜業を行っている国々で、作業者が農地や牧場内を移動するために用いられるバイクです。

……というわけで、そうした環境がない日本国内では販売されていないバイクですが、実は、日本メーカー4社全てが海外向けに「農業バイク」を生産しています。

パッと見、オフロードバイクのような「農業バイク」ですが、ならではの装備として、左右両方にサイドスタンドがあったり、フロントとリヤに大型のキャリヤを備えていたり、そして、長い泥よけを装着していたりする点が挙げられます。

まず、左右両方にサイドスタンドがあるのは、農地や牧場では、必ずしも左側にサイドスタンドを立てて、安定して車両を停められるとは限らないため。
農地や牧場の地面といえば、当然、土、草地、砂利など未舗装なのが当然。そして、地面は平らとは限らず、あぜ道は狭い。
そんな状況下でも、左右それぞれにサイドスタンドがあれば、どちらかのスタンドで安定して駐車できるほか、あぜ道の左右両方に畑などがある場合、スムーズに目的の畑へと降車できます。
キャリヤはもちろん、作業道具や収穫物などをたくさん運ぶため。
泥よけは……ここまで読んでいただいたら、説明不要でしょう(笑)

日本メーカーの車両でありながら、残念なことに輸出専用車である「農業バイク」は日本で見ることはできない……と思いきや、なんと「農業バイク」を手に入れて、日本で乗っている人を発見!

一体「農業バイク」のどんな部分を魅力に感じたのでしょうか?
農業バイクのスズキTF125に乗って楽しんでいる様子をTwitterなどで発信しているうるちさんに話を聞きました。

1977年に輸出専用車として発売されたスズキ TF125。ベースとなったのTS125(ハスラー125)で、エンジンは123ccの空冷2ストローク単気筒ピストンリードバルブ。現在も南米向けに新車で販売されている。

南米では今も新車で販売されている スズキTF125

うるちさんのTF125。リヤキャリヤにはコンテナを積んでいる。

──なぜ「農業バイク」のTF125を購入しようと思ったのでしょうか。

10年間くらい乗っていたスズキ バーディー50からの乗り換えで、通勤にも使える125ccのバイクを探していたんです。
CT125・ハンターカブも検討していたのですが、納車まで時間がかかるようなので断念しました。

そもそも、林道走行にも興味があったのでオフロードをある程度走れるバイクで、移動手段として使うので大きなキャリヤが装備しているバイクがいいなと思っていたのですが、その条件を満たすバイクとして「農業バイク」という選択が出てきたのです。
牧場や農場など過酷な環境下でも活躍する「農業バイク」は、タフなイメージがあるのもいいな、と。「農業バイク」ならではの装備ってカッコいい!と思うようになり(笑)。

──「農業バイク」と言っても色々ありますが、TF125を購入する決め手となった理由はありますか?

「農業バイク」の中では、ヤマハ AG100やスズキ DF125も検討しましたが、中古でしか購入できないのでこちらも断念……。そうこうしているうちに、TF125なら新車が購入できることを知り、最終的に決定したという次第です。

あと、TF125はデザインが気に入りました。
オフロードバイクっぽいのにリヤサスペンションは2本ショックでレトロな雰囲気ですし、ハンドル周りの無骨なガード類や国産車っぽくない奇抜な色使いなども味があって。

CT125・ハンターカブは超売れているといいますが、TF125というチョイスならカブる人もいないと思いますし、いいバイクを買ったのかなと思います(笑)。

左側が10年間活躍したスズキ バーディー50。中央がスズキ TF125で、ほかにもヤマハ SDR200(右)も所有しているうるちさん。

──本来、牧場や農地などを走らせるためのバイクである「農業バイク」ですが、キレイに舗装された公道を走ったときの乗り心地はどんな感じなのでしょうか?

「農業バイク」として使う分にはいいのかもしれませんが、舗装された道を走らせると少し厳しい部分があるように思います。

スポーツバイクみたいな感覚で運転するとスルッと滑るし、純正装着されていたブロックタイヤはウェット性能が無いに等しいので、雨の日に運転はけっこう注意が必要です。

タイヤは交換しようとも考えていたのですが、せっかくなら「農業バイク」ならではの乗りにくい状態をしばらく味わってみようかなと思って、タイヤもそうですが、ちょっと暗い感じのヘッドライトなどもそのままにしています。

これといった故障もなく手が掛からないスズキTF125

スズキ TF125。タイヤはIRCのファームスペシャルZという銘柄。

──日本で販売していないバイクですから、万が一故障してしまうと部品を調達するのも大変そうだと思うのですが……故障もあったりして手が掛かるバイクでしょうか?

手が掛からないバイクだと思います。これといった故障もなく、購入した時からキャブの調整もしてないし、エンジンのかかりが悪くなったこともありません。
強いて言うなら、車両の発電量が足りないのか、ウインカーを多用する場面が多いと、バッテリーが上がってしまうことくらいです。
あとはギヤ抜けですね。この車体に対する最大の不満はギヤ抜けと言っても過言ではないです。

スズキ TF125はシートの座り心地がいい!?

スズキ TF125のリヤキャリヤ。

──ブログでは、シートの座り心地を絶賛していましたね。

すごく良いですね。自宅のある愛知県から静岡県まで往復400km走ってもお尻が痛くなりませんでした。
ハンドルも丁度いい位置にあって、普通のオフロード車と比べても姿勢がラクなので腰も痛くなりづらいですね!

──うるちさんがTF125に乗っていて一番楽しいと感じる部分はどこですか?

2スト全般に言えることかもしれませんが、パワーバンドをつかんでどんどんギヤを変えて走るのがとても面白いです。ゲーム感覚じゃないですけど、その瞬間は乗ってていて本当に楽しいと感じますね!


冒頭でお伝えしたように、TF125のような「農業バイク」は国産メーカー各社が生産していて、様々な車種があります。
次は、その一例として、オーストラリアやニュージーランドなどで活躍する農業バイクを紹介していきます!

次ページ:各国で販売される日本メーカー製「農業バイク」の例を紹介

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