パンクしにくい空気入りタイヤをアピール
フランスに本拠地を置くタイヤメーカー、ミシュラン。世界で初めてラジアルタイヤを製品化し、さらにはレストランやホテルのガイドブック『ミシュランガイド』を発行するなど、知らない人はいないであろう世界規模の企業ですね。
もちろん、バイクのタイヤもスーパースポーツ用からハーレー用、小排気量スクーター用など、幅広くラインアップを展開しています。
さて、そんなミシュランのマスコットも多くの人が見たことあるはず。バイクのタイヤでは、タイヤの端やサイドウォールにいることでおなじみの彼です。ビバンダム、またはミシュランマンと呼ばれ、誕生したのは1898年4月。今年でじつに122歳になります。
誕生のきっかけは1894年にフランスのリヨンで行われた博覧会。入口の両側では、大きさの異なるタイヤが山のように積まれ、来場者を出迎えていたところ……それを見た創業者のミシュラン兄弟の弟エドワールが「コレに腕をつけたら人間になるじゃないか」と兄のアンドレに言ったのが始まりだといわれています。
その後、アンドレ・ミシュランは広告デザイナーのオ・ギャロと会います。
タイヤのパンクが日常茶飯事だった当時、クギやガラスなどを入れたグラスを例のタイヤ男に持たせれば、「空気入りタイヤは障害物があってもそう簡単にはパンクしない」といったアピールになると考えました。
そして実際、広告には「ヌンク・エスト・ビバンダム(ラテン語で「いまこそ飲む干す時」という意味)というキャッチフレーズがつけられました。
最初は「ビバンダム」と呼ばれた
そのとき彼の名前は具体的に決まっていなかったものの、レーシングドライバーから「あっ、ビバンダムが来た!」と呼ばれたのを機に、ビバンダムと呼ばれるようになったそうです。通称ではあるものの、最初は「ビバンダム」と呼ばれていたのです。
ただ、日本ミシュランタイヤの公式webサイトを見ると、彼は「ミシュランマン」と呼ばれています。ビバンダムはあくまであだ名ってことなのでしょうか? というわけで、日本ミシュランタイヤ広報部に話を聞いてみました。
ミシュランマンはもともと「ミシュランの製品やサービスの象徴」という位置づけです。フランス本国では長きにわたりその位置づけで親しまれていたために当初の名前「ビバンダム」で呼んでいますし、愛称である「ビブ」という名称でも呼ばれています。
ただそのほかの国では呼び名としてビバンダム(ビブ)ですと端的に弊社へのイメージや理解がしにくいため、現在では「ミシュランマン」とさせていただいております。
つまるところ呼び名としてはビバンダムでもミシュランマンでもどちらも正解です。そのため日本でもSNSはもちろんサーキット、各イベントで「あ、ミシュランマンだ!」と呼ばれることもありますし、古くからご存じの方は「ビバンダムと写真撮らせてください!」、また「Bib(ビブ)!」という呼び方や表記をされる方もいらっしゃいます。
確かにビバンダムという呼ばれ方の経緯を知らない人にとっては、ミシュランマンという呼び方のほうが企業名を強くイメージしやすいですね。
ミイラにも見えるけど……ミシュランマンはなぜ白い?
そういえば、なぜ彼は白いのでしょうか? タイヤって黒いはずじゃ……。タイヤの歴史に詳しい人には言わずもがななネタではありますが、改めて。
今では黒いのが当たり前のゴムタイヤですが、黎明期のゴムタイヤは黒くなかったのです。タイヤが黒くなったのは1918年、今ではミシュラン傘下のBFグッドリッチが初めてタイヤの材料にカーボンブラックを採用したときからになるのです(カーボンブラックを採用することで、タイヤの性能は劇的に向上しました)。
しかし、それでは彼が白い理由にはなりません。生ゴムの色は飴色で、黎明期のタイヤも飴色でした。
どこから「白」がやってきたかというと、タイヤの包み紙でした。当時、タイヤはまだまだ高級品で、タイヤは1本1本白い紙に巻かれて売られていたのです。その紙にくるまれたタイヤを重ねてできたのが彼なのです。
ちなみに、なぜデビュー当時(?)の彼はなぜかメガネをしています。これにも理由があって、最初にミシュランマンが登場したころ、車は上流階級の人しかもっておらず、そうした人たちは、丸メガネを掛け、葉巻を吸い、ワインを飲んでいたので、上流階級のライフスタイルを反映させたものだと言われています。
ミシュランマンのイラストは時代とともにタッチが変わっていきます。最初はミイラのようでちょっと怖かった彼も、どんどん表情は柔らかく、そして笑顔に。タイヤの進化とともに、彼も進化していってのでしょうか。
ただ、今後タイヤの色がさまざまに変化していったとしても、ミシュランマン誕生からの歴史を踏まえれば、彼の体はきっと白いままだろう。タイヤ1本1本を大事に……というミシュランマンの思いは、いつの時代もかわらないはずですから。
まとめ●モーサイ編集部 & driver@web編集部 写真●日本ミシュラン
参照●日本ミシュランタイヤ
https://media.michelin.co.jp/