新聞配達や蕎麦屋の出前、白バイ、赤バイ(※消防用二輪車)、自衛隊車など……働くバイクはたくさんあるが、中でも一番身近なのが郵政バイク。真っ赤なボディに大きなリヤボックス&集配カバンを装備したその姿は、街中でもよく見かけると思う。
また郵政バイクと言えば、2020年1月からは(一部地域で)電動バイクの導入が始まるなど、新たな歴史が刻まれたが、実は100年近いヒストリーがあることをご存知だろうか?
戦前からバイクが使われていた?
「この年から」というちゃんとしたデータはないが、遅くとも1930年代ごろには郵便配達にバイクが使われていた(1910〜20年代からとする説もある)。正確には「バイクがベースの三輪車」と「補助エンジンを搭載した自転車」なのだが。
三輪車は大型バイクの後ろ半分に台車をくっつけたもので、それまで馬に引かせていた荷車を流用したためだと思われる。
おそらく配達よりも集荷業務のほうで活躍したのではないだろうか?

また補助エンジンを搭載した自転車(自転車バイク)は写真電報の配達のために使用されていた様子(残念ながらどこのメーカーのどんなエンジンを積んでいたかの資料はなかった)。

国産初の郵政バイクはラビットスクーター!(多分)
第二次大戦終結後は、平和産業へと方針変換した中島飛行機、改め富士産業(後の富士重工業で、現在のスバル)のラビットスクーターが郵政バイクとして採用されている。

写真は不鮮明だが、ヘッドライトの形状より、ラビットS-23(135cc)と思われる。写真提供:郵政博物館
「ラビットスクーターの初代モデル、S-1(1946年、135cc)のころから郵便配達に使用されていた」という話もあるが、真偽のほどは定かではない。
ただし、S-23(135cc)の郵政仕様車の存在は確認しているので、遅くとも同車の発売された1950年には郵政バイクとして採用されていたのだろう。
【2020年3月4日追記】
また、郵政博物館から寄せられた情報により、1948年ごろに三菱重工のシルバーピジョン・C-10(あるいはC-12)の郵政仕様車の存在も確認された。C-10の生産年度(1946〜)を加味するとラビットスクーターとほぼ同時期に同車の車両も使用されていたのかも知れない。

また、最後のラビットスクーターであるS211(1966年、90cc)の姿も確認されており、少なくとも15年間はラビットが郵政バイクとして活躍していたことがわかる。

ヘッドライトの位置が下がり、カバンを置く用のキャリヤが搭載されている。写真提供:郵政博物館
1955年ごろから多くの会社が参入!
日本郵便に聞いたところ、バイクによる郵便配達業務が一般化したのは昭和30年代、1955年以降。
そしてそのころになると前述のラビットだけでなく、スズキ・コレダやブリヂストン・BS90など、ほかのメーカーの郵政仕様バイクが次々と登場した。

ちなみに今も現役として走り続けている郵政カブことMD(Mail Deliveryの略)が登場したのは1971年。
同車の好敵手(?)として話題に上がる郵政仕様のヤマハ・メイト(50/80/90cc)&スズキ・バーディ(50/90cc)も、1970年代から採用され、市販モデルのカタログ落ちとともに現役を退いている。

取材協力●日本郵便、郵政博物館