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「カマキリっぽく見える」だとか「ガンダムに似ている」だとか、バイクの見た目はユーザーの好き勝手、何かに例えられることも多いものです。しかしこの記事で紹介するカスタムマシンは偶然“似た”のではなく、はじめから「深海魚」という明確なモチーフを持って創り出された、世界にたった1台のもの。
実車を目の前にしてみると。そのあまりの「生き物っぽさ」に圧倒されます。
FRPアーティスト川上哲治氏作、外装は全てカーボン製
生き物っぽいカスタムマシンを手掛けたのは、日本のトップFRPアーティストであり、『TVチャンピオン』ペイントアート王で優勝経験を持つ川上哲治氏のカスタムブランドBALLYHOO(バリーフー)。
マシンの制作テーマは「理解しがたい奇抜な姿の深海魚」だということですが、モチーフは深海魚のみにとどまらず、「マンタレイ」(世界最大のエイ)などの海棲生物の隠れ要素も遊び心となっているのだとか。
実は川上氏が「深海魚」をモチーフとしたカスタムマシン(四輪車を含む)を手掛けるのは今作で9台目で、車名もギリシャ語の「9」から取って「ENNEA」(エネア)と付けられています。


外装は全てカーボン製!! つなぎ目なくし“生き物っぽさ”を徹底追求
そんな「ENNEA」の外装はすべてカーボン製で、純正のものを撤去して新たにワンオフ制作・装着したシートレールやスライダーにはカーボンケブラーが使用されています。
さらに、空気の流れを意識したダクトの増設も特徴としており、外装部分は原則取り外しができるようにするなどメンテナンス性にも気を配りつつ、カウルのつなぎ目や取り付けボルトなどが目立たないよう最大限配慮することで、“機械っぽさ”を抑え、“生き物”感を強調しているのだそう。
外装表面には魚類の「エラ」をイメージしたというヒダが刻まれ、カーボンの柄がザラザラとした鮫肌のような質感をよく表現しています。


また、「ウインカー」や「ミラー」といったどうしても“機械っぽさ”の出てしまうパーツも、工夫を凝らして生き物の身体の一部に見えるようなデザインにまとめられています。
例えば、ウインカーはオオクチホシエソなど目の付近が発光する深海魚をイメージし、FRP(繊維強化プラスチック)の板をならべ、無点灯時は目立たず、点灯時にはFRPの板を通じてネオンオレンジに発光するように仕上げています。
ミラーは折りたたみ式とし、収納時には車体から地面に対して水平に伸びるヒレのように見えますが、使用時にはくるっとひっくり返すことで鏡が現れます。




「シートカウルはカブトガニ、リアフェンダーはチョウチンアンコウ、エキパイは……」
テーマは「理解しがたい奇抜な姿の深海魚」……ということで、実在する複数の海棲生物の特徴をキメラ的に取り入れています。例えば、リヤフェンダーはチョウチンアンコウの「イリシウム」(誘引突起)をイメージして“提灯”の形、シートカウルはカブトガニ、車体下から覗き込んだエキパイ部分は悠々と足を伸ばすダイオウイカをイメージしているのだそう。




ちなみに「ENNEA」のベース車両はMVアグスタのブルターレ800だということですが「ほとんどエンジンくらいしか形が残っていない」ため、外見からベース車両を予想するのは困難。それでも「公道を走れるように設計、製作した」ということで、近々ナンバーを取得する予定なのだそうです。
公道を走る(泳ぐ!?)「ENNEA」に会えるのが楽しみですね。

レポート/写真●モーサイ編集部・中牟田歩実