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バイクに3気筒エンジンが少ないのはなぜ?「中途半端」か「良いとこ取り」か……トリプルエンジンの魅力

バイクのエンジンは単気筒や2気筒、4気筒がメジャーとなっていますが、3気筒というのはどちらかというと稀有な存在として認知されています。しかし数は少ないものの、3気筒エンジンの現役モデルも確かに存在しています。

そこでこの記事では、3気筒エンジンの特徴や、他のエンジン形式との違いについて詳しく解説していきます。

デメリット克服のためには専用設計や長い開発期間が必要な3気筒

2気筒と4気筒の良いとこ取りをしていると言える3気筒エンジンは、中途半端なエンジンと言われることもあるようです。

軽くて低速からのトルクを求めるのであれば、単気筒や2気筒エンジンで十分であるし、反対に高回転域までしっかり回りきるようなエンジンが欲しいのであれば、伸びのある4気筒エンジンがある。確かに「トルク重視」か「高回転重視」か問われると、どちらつかずのエンジンと言えなくもない。

さらに3気筒のようにシリンダーの数が奇数列のエンジンは、ピストン運動の際に生じる振動を打ち消す運動方向が無いため、回転を上げるとエンジンから余計な振動が生まれやすいデメリットもあります。

このネガティブな部分を克服するには、新たに3気筒用エンジン専用の開発が必要であるため、設備投資費や開発期間が必要になります。そう考えると、開発コストを考えても、敬遠されがちであるエンジンだということは否定できません。

しかし、過去には3気筒エンジンを採用している魅力的なバイクが存在していたのも事実です。

ヤマハ XSR900に搭載された888ccの3気筒エンジン。

3気筒エンジンは意外と歴史が古い

3気筒エンジンが登場したのは1916年。イギリス発祥の世界最古のオートバイブランド「ロイヤルエンフィールド」が試作したものが始まりと言われています。

1950年代になると3気筒エンジンはロードレースの世界で目立ち始めるようになります。ドイツのDKWがV型3気筒エンジンを搭載したワークスマシンで世界GP年間ランキング2位を獲得。1960年から70年代にかけてはMVアグスタが4ストローク並列3気筒エンジンを搭載した車両で500ccと350ccの両クラスを5年連続で制覇しています。

また、1971年にはカワサキ「750SS」や、スズキ「GT750」など国産の市販車からも3気筒エンジンが採用されているモデルが登場しています。

しかし時代が進むにつれ、レース界では高回転・高出力の4気筒エンジンが主流になり、市販車も一気に4気筒エンジンの流れに変わります。こうして3気筒エンジンは徐々に姿を消すことになりました。

しかし3気筒エンジンが完全になくなるということはありません。たとえ開発費や時間がかかったとしても、独自のアイデンティティを持つ個性的なモデルとして3気筒エンジンを採用したバイクを開発するメーカーも現れるようになります。

1971年登場のカワサキ 750SS(749cc、空冷2スト並列3気筒)。 先行した500SSの最高出力が60psだったのに対して、750SSは74psを発揮。この数値はCB750フォアを7psも上回る、当時の最高値だった。
1971年登場のスズキ GT750(749cc、水冷2スト並列3気筒)。その気になればCB750フォアや750SSを凌駕できたはずなのに、GT750の最高出力は67psで、最高速は180km/h。佇まいが重厚だったため、ウォーターバッファローと呼ばれた。

現行量産モデルに「3気筒エンジン」を採用しているバイクメーカー

現在3気筒のエンジンを採用しているのは、次の3メーカーがあります。

● ヤマハ発動機(日本)
● MVアグスタ(イタリア)
● トライアンフ(イギリス)

ただし、限られたモデルのみに採用されているため、街中では滅多にお目にかかれないかもしれません。

しかし3気筒エンジンが採用されているモデルはどれもメーカーのブランドイメージを背負う主力製品ばかり。

例えばヤマハ発動機がラインナップしている3気筒エンジンのモデルは、ストリートファイターを代表する「MT-09」や、エンジン・フレームはMT-09と共通で、より走破性を高めた「TRACER9 GT」、ヘリテイジスポーツとして登場した「XSR900」、そして3輪バイクの「NIKEN」と、個性豊かなモデルが揃っています。

また、MVアグスタは逆回転クランクを採用する800cc3気筒エンジンを搭載した「ロッソ」シリーズを展開しています。

トライアンフは、2019年よりスーパースポーツモデル「デイトナ765」に搭載されている765cc3気筒エンジンをロードレース世界選手権Moto2クラスにも供給しており、世界中に3気筒エンジンの存在をアピールしています。現行の市販車でも、ストリートトリプル、スピードトリプル、タイガー、トライデントなど多くのシリーズに3気筒エンジンが採用されています。

ヤマハ MT-09。
MVアグスタ F3ロッソ。
トライアンフ デイトナMoto2 765リミテッドエディション。

独特なサウンドと扱いやすさが定評の3気筒エンジン

では一体、3気筒エンジンの魅力はどのようなものとなっているのでしょうか。

3気筒エンジンの魅力は、次の3つにまとめることができます。

● 2気筒エンジンよりパンチがある
● 4気筒エンジンよりコンパクトで軽量
● 独特なエンジンサウンド

中途半端なエンジンとして位置付けられてはいるものの、考え方を変えると、2気筒や4気筒エンジンの良いところ取りをしているエンジンだと考えることができます。

2気筒エンジンより低速からの立ち上がりにパンチがあり、高回転域での伸び上がりもある。しかも並列4気筒エンジンより横幅を短くでき、1気筒少ない分重さも抑えることができます。

そう考えると、求める性能によっては3気筒エンジンが丁度良いサイズだと考えることもできます。

ヤマハ発動機の「MT-09」は、ネイキッドとスーパーモタードの融合がコンセプトで、街中での扱いやすさに重きを置かれて開発された大型バイク。コンパクトで低速からのパンチがあることに加え、意外性の面からも3気筒エンジンが採用されるようになったようです。

そして何より3気筒エンジンは独特のエンジンサウンドを奏でるのが大きな魅力です。

2気筒のような太い低音でもなく、4気筒の淀みのないフラットな高音でもなく、荒々しさが残る力強いエンジンサウンド。このサウンドを求めて3気筒エンジンを選んでいるバイク乗りも少なくないようです。

トライアンフ タイガー900に搭載された3気筒エンジン。

トリプルエンジンを搭載するバイクをぜひ一度味わってみては

エンジンはシリンダーの数やメーカーの開発の仕方によってエンジンの特徴は一長一短。どのエンジンが優れているとは一概に言い切ることはできません。

しかし、今回ご紹介したように、3気筒エンジンを搭載するバイクにはたくさんの魅力が詰まっているのも間違いありません。ほかとは異なる意外性のあるバイクに乗りたいとお考えであれば、ぜひ一度お試しください。

レポート●モリバイク 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

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