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高速道路には、一般道と比較すると目的地までの到着時間を短縮できるなど、さまざまなメリットがあります。
また、高速道路は道路の設計速度(道路を設計する際の基準のひとつで、想定するクルマの走行速度)を速く設定しているため、舗装を頑丈に造らなければならないのです。速い速度制限を実現するためにはより強固な道路構造が必要になるため、結果として高速道路は一般道よりも舗装の耐久性が増し、安全性が高い道路になると言えます。
そんな高速道路は、安全性を保つための工夫のひとつとして、一般道よりも水溜まりが生じにくい舗装構造であることをご存知でしょうか。
この記事では、高速道路に水たまりを生じない理由である高機能舗装について解説します。
そもそも「道路に水が溜まる理由」とは
道路は基本的に屋外に整備されるため、雨をはじめとする自然現象の影響を大きく受けます。
その中でも安全性を確保するため、道路は道路法や道路構造令などで定められている道路の傾き(雨水を路肩に流して排水するため、道路に勾配がつけられている)や車線の広さ(雪国では道路脇に雪を積み上げ、走行車線の幅を広げる「拡幅除雪」作業が行われることも)など、さまざまな規定を遵守して造られています。
なお、一般道の舗装に使われるアスファルトも耐久性や走行性などの基準をクリアしていますが、長年使用していることで経年劣化に伴う損傷が発生します。
経年劣化では、アスファルトにひび割れ(クラック)が生じることや、車両走行時タイヤが通る部分にくぼみが生じることがあります。
アスファルトには雨水を排水するための傾きが設けられていますが、くぼみが生じている部分は舗装が凹んでいるため雨水を排水できず、そこに水溜りが生じてしまうのです。

高速道路は「雨水が浸透する」素材
上述したように、道路は雨水を適切に排水するように設計されています。
しかし、アスファルト表面にくぼみが発生するとそこに水溜まりが生じてしまいます。そこで、高速道路では水溜りが生じさせない工夫のひとつとして「高機能舗装」が採用されています。
高速道路のアスファルトの舗装構造は、私たちが普段目にしている表面の「表層」と、その下の「基層」と呼ばれるアスファルトの2種類で構成されています。
表層部分に使用しているアスファルト材料に、一般的なアスファルト材料よりも空隙率の高い(空洞部分の多い)材料を使用することで、表層部分の雨水が浸透可能となります。一般的なアスファルトでは空隙率が5%程度ですが、高機能舗装では15~25%になっています。
浸透させた雨水は2層目である基層部分のアスファルト層に染み込んでから排水されますので、高速道路ではアスファルトの表面に水が溜まらない構造となっているのです。
このような性能を持つアスファルトは「高機能舗装」と称され、施工時や完成後の維持管理のコスト・手間は一般的なアスファルト舗装より増えるものの、快適な走行性を維持することができます。タイヤと路面の間に水膜ができることでグリップが失われ、ハンドル操作やブレーキも効かなくなる「ハイドロプレーニング現象」の抑制に寄与したり、先行車の走行による水はねを防止して雨天時の視界の確保に役立ったりと、さまざまなメリットが期待できるのです。
進化し続ける「高機能舗装」
「高機能舗装」導入の歴史は意外と古く、1989年に東北自動車道で試験的に採用されたのを皮切りに、今では全国のほとんどの高速道路・自動車専用道路で採用されています。
また、近年では舗装の表層部だけに高機能舗装を用い、基層部分には一般的なアスファルトを使用することで、これまでの「高機能舗装」が持つ耐久性の課題を解決しつつ、雨水が表層部を浸透した後、一般的なアスファルトの部分を伝って、排水溝に流れてゆくという雨水排水機能も併せ持つ「高機能舗装Ⅱ型」といった舗装が導入される高速道路も増えてきています。
高速道路を走行するバイクやクルマの安全は、改良され続ける高い技術力によって支えられているのです。
レポート●pooh 写真●モーサイ編集部 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実