コラム

シート高を信じるな!? 身長165cmが伝授する「シートは低いのに足着きが悪いバイク」の見極め方

バイクのシート高と足つき性の関係とは

筆者の身長は165cmと男性としては平均以下なのですが、低身長クラスタのご同輩においては、バイク選びの重要ポイントが「足つき性」という方も多いのではないでしょうか?

足つき性というのは、バイクに跨ったときに足がどのように接地するかを表現するもので、かかとまでしっかり接地する、いわゆる「ベタ足」であるほど安心して乗っていられるというイメージも強く、またがったときにベタ足になるバイクを探しがちかもしれません。

身長153cmの女子ライダーでも「ベタ足」のホンダ レブル250。

個人的には、ベタ足よりも指を曲げた状態でつま先がしっかりと接地するくらいの足つきのほうが、バイクを支える際にも力が入りやすくて乗りやすいと感じますが、そのあたりも体力や体型によって評価は異なるポイントでしょう。

それはさておき、足つき性を判断するために多くのライダーが注目しているのが「シート高」のスペックでしょう。その数値はカタログのもしっかりと記載されています。

シート高の測定については型式指定にかかわる数値ではなくメーカーによる自主測定値という扱いになっています。基本的にはシートの一番低い部分から地面までの距離を示すのがシート高の数値と理解しておけばいいでしょう

では、シート高が低ければ足つきはいいのでしょうか。シート高が高いバイクは足つきが悪いのでしょうか。そうとは言い切れません。

スペックには載らないシート形状が足着きに与える影響大

シート高が極端に低いバイクであれば、足が地面につかなくて困るといったことはないでしょうが、数字ほどは足つきがよく感じないな、というケースもあるはずです。

なぜなら、シート高はあくまでもシートの一点で測定したものであって、シート形状やクッション性とは関係ないからです。

たとえば、筆者の経験でいうと「シート高は低いはずなのに、思ったほど足つきがよくない」と感じることが多いのはスクーターです。スクーターはシート下収納を広くとっている車種が多いことからもシートの幅が広く、またステップ部分が広がっている傾向があるために、実際に足をつくリーンでは、かなり斜めに脚を開くことになるからです。

逆にスーパースポーツ系ではタンク部分がキュッと絞られていることが多く、脚を曲げずに伸ばすことができるので、シート高の数値ほどは高く感じないこともあります。

そもそもボディがナローなシングルエンジンなどのネイキッドモデルでもシート高のスペックよりも足つき性がよく感じることもあるかもしれません。

余談ですが、スーパースポーツ系モデルのライディングポジションとしてステップが高いところにあるので脚が窮屈に感じるという評価もあるようですが、低身長の筆者はそのように感じたことはありません。コンパクトなポジションは、短足族にはメリットといえるのかもしれません。

カタログ数値上のシート高は795mmと低めだが、足を下ろしてみると意外とつま先立ちに……(写真はホンダ ADV150に身長159cmのライダーがまたがった様子です)。

サスペンションの沈み込みにも注目!!

それはさておき、シートのクッション性も足つき性の印象を変えてくれます。クッション性が皆無のようなスパルタンなモデルではシート高の数値通りの高さ感となりがちですが、沈み込むようなシートであれば、実際に座ったときには数字よりは低く感じることは容易に想像できるでしょう。

つまり、シート高というピンポイントでの数値だけでは足つき性は判断できないといえます。車体形状やシートのクッション性など複合的な要素が、足つき性に影響してくるのです。

その意味ではサスペンションの設定も影響するファクターといえます。

タンデムライド(二人乗り)すると足つきがベタッとつくようになったという経験を持つ方も多いでしょうが、サスペンションの沈み込みは足つきへの影響大です。

当たり前の話ですが、乗車時にサスペンションが沈み込んだ分だけ、静的状態でのシート高よりも低くなるからです。

ですから同じような身長であっても、体重の重いライダーのほうが足つき性には有利(運動性能の面では不利ですが)といえるのです。

サスペンションが沈みこみ、シート高が高くても足着き性は意外と良好というパターンも(写真はシート高830mmのヤマハ セロー250ファイナルエディションに身長159cmのライダーがまたがった様子)。

モーターショーなどで固定された車両に跨ったときの「ワナ」

モーターショーなどで最新モデルへまたがる機会を得ることもあるでしょうが、そのときの印象と、ショップでまたがったときのイメージが異なるのは、サスペンションの影響もあります。

ショーでは前後の車軸をスタンドに固定しているためサスペンションの動きが制限されていることが多いのですが、ショップの店頭などでまたがるときには設計値通りに沈み込んでくれるので、シート高の数値に比べて足つきがいいと感じる傾向にあるといえます。

サスペンションというのは新車時には動きが渋い傾向にもありますから、ナラシが終わってくると、ますます足つきがよくなってきたと感じるケースがあるかもしれません。

ちなみに、筆者がサスペンションの動きを意識するのは信号待ちなどで停止するときです。

フロントブレーキメインで止まると、どうしてもフロントサスペンションが沈み込んでしまい、相対的にリアが浮き上がる印象になります。逆にフロントブレーキで十分に減速しておいて、最後はリアブレーキだけで止まるようにすると、フロントサスペンションの沈み込みが少なくなり、結果として足つきがわずかですがよくなるような気がするので、最後はリアブレーキだけで止まるという乗り方を実践しています。

工夫次第で克服できる「足着き」カタログ数値だけで諦めないで!!

前述したように、筆者の身長は165cmです。そして愛機のホンダCBR1000RR-R FIREBLADEのシート高はカタログ値で830mmとなっています。股下は自己計測で67cmですから、普通に考えると足つきが悪すぎて乗るのがつらいと思えるでしょう。

しかし、まったく苦にならないというか、シート高は気になりません。そもそも、信号待ちなどでは右足でリアブレーキをかけているので、両足をつく必要性とはありません。座っている位置を少しずらせば、左足のつま先は十分地面につけることができます。

もっとも左右の足を踏みかえるときには、それなりに両足が浮いた状態になってしまいます。そのときにバランスを崩して立ちゴケをするリスクを減らすために、停止時もギアをN(ニュートラル)にすることはなく、1速に入れたままクラッチを切って対応するようにしています。少々、左手は疲れますが足つきに不安のある方にはおすすめの乗り方です。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実

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