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ガソリンエンジンの熱効率は最大でも4割程度
2022年夏、新型コロナウイルスの世界的な流行、ロシアのウクライナ侵攻、急激な円安進行など、ガソリン価格が上がる要素はあっても、下がる要素は見当たらないというのが昨今の情勢です。日本政府は元売り各社に「燃料油価格激変緩和補助金」を出していますが、それでもレギュラーガソリンの小売価格は全国平均で170円/Lに迫る勢いです。
ちなみに、もし補助金がなかったとしたら、レギュラーガソリンは220円/Lになってもおかしくないほどだそうです。クルマに比べて省燃費が期待できるバイク人気が高まっているのもうなずけますね。
ところで、ガソリンの持つ熱量がそのままクルマやバイクを動かすエネルギーなっていないことはご存知でしょうか。難しい話は置いておくとして、結論からいえば日常的にはガソリンの熱量の1~3割程度しか動力として利用できていないのです。
そもそもガソリンエンジンというのは、最大でどのくらいの熱量を利用できるのでしょうか。量産エンジンで最大熱効率に優れるエンジンといえば、ハイブリッド車用に開発されたものが代表格といえます。たとえば、ホンダ シビックのe:HEV(ハイブリッド)に積まれている2.0L 4気筒ガソリン直噴エンジンの最大熱効率は41%です。半分以上の熱量は仕事に変換できていないのですが、これでも市販車としては世界最高レベルの熱効率です。
では、残りのエネルギーはどこに消えているのでしょうか。
おおよそのイメージで多い順に記すと、熱として放出されるぶん(冷却損失)、排気として出されるぶん(排気損失)、エンジン内部のフリクションで消費されるぶん(機械損失)、吸気するために使われているぶん(ポンプ損失)、そして未燃焼ガスとなっています。
ハーフスロットルでの熱効率はさらに低い
しかも、最大熱効率というのはもっとも負荷が高い状態で発揮します。分かりやすく言うと、アクセル全開でエンジン回転数が最大トルク発生領域にあるような状態で、熱効率は最大になります。
ですが、よほど小排気量のモデルでない限り、日常的にバイクに乗っていてアクセル全開にするということは少ないでしょう。そして、ハーフスロットルのようなシチュエーションでは、熱効率はさらに落ちます。
エンジンや車種によっても異なりますが、ガソリンエンジンの一般論でいえば、日常領域での熱効率は15%程度というイメージで捉えておけばいいでしょう。効率的に使っているような状況でも、せいぜい30%くらいの熱効率といえるでしょう。
駆動系でも伝送中にロスが発生!! チェーンでさらに駆動力1割程度減
ここまで記してきたのはエンジン自体の熱効率の話です。ですから、エネルギーとして取り出している「仕事」というのは、クランク出力のことです。実際には、エンジンのそばにトランスミッションがあって、多くのバイクではチェーンを介してリアタイヤを回しています。
歯車を使ったトランスミッションの伝達効率は95%といわれますが、チェーンによるロスはけっこう大きく1割程度が失われているといえます。ざっと計算すると駆動系で15%程度のロスが生まれていると考えられます。
ガソリンの熱量を100%として、エンジンで仕事に変換できているのが約20%、駆動系のロスを加味すると、タイヤに伝わる段階で、エネルギーは17%程度に減ってしまうのです。
さらにタイヤや路面コンディションによるロスもあります。それらは無視するとしても170円のレギュラーガソリンを燃やして得られる駆動力は、熱量ベースで換算すると、30円程度という風に考えることもできるのです。
レポート●山本晋也 写真●ホンダ/モーサイ編集部 編集●中牟田歩実