コラム

クルマではよく聞く「タイミングベルト交換」バイクではしなくてもいい!?

クランクシャフトとカムシャフトをつなぐのがタイミングベルト

中古車のクルマを探していると、備考欄などに「タイミングベルト交換済み」という文言を見かけることがある。交換という言葉とセットになっているということは、定期的に交換が必要な部品であろうことは想像つくだろう。一方、二輪ではあまり馴染みのない「タイミングベルト」。どこについていて、どんな役割を果たしている部品なのだろうか。

その役割をひと言でいえば「バルブを動かす」ためと表現できる。当然だが、吸排気バルブがあるということは2サイクルエンジンではない。4サイクルエンジンに必要な部品だ。具体的にレイアウトでいえば、クランクシャフトとカムシャフトをつないでいるのがタイミングベルトである。

あらためて確認すると、レース用を除く通常の量産エンジンでは、クランクシャフトの回転によってカムシャフトを動かすというのは当たり前の設計だ。そして多くのエンジンではクランクシャフトはオイルパンの近く、カムシャフトはヘッドの最上部にある。その間をつなぐには何らかの長いものが必要なのは容易に想像できるだろう。

タイミングベルトはベルトの内側に凹凸のあるコグドベルトで、歯車と噛み合うようになっている。
ホンダ NSX用の3000ccV型6気筒DOHC4バルブエンジン。V型エンジンなので各バンクにタイミングベルトが回されている。

同じ役割のパーツに「タイミングチェーン」「カムギアトレーン」など

クランクシャフトとカムシャフトをつなぐのに使われるのは大きく3つのメカニズムがある。クランクシャフトとカムシャフトそれぞれに歯車的なパーツをつけ、ベルトもしくはチェーンでつないでクランクシャフトとカムシャフトを連動させて動かそうというのが一般的で、繋ぐ方法によってそれぞれ「タイミングベルト」「タイミングチェーン」と呼ばれる。ちなみに「タイミングチェーン」は「カムチェーン」と同義。二輪ユーザーにとってはこちらの呼び名の方が親近感があるかもしれない。

3つ目には、歯車だけでクランクシャフトとカムシャフトをつなぐ「カムギアトレーン」と呼ばれるメカニズムが採用されていることもあるが、ごくごく一部の特殊なエンジンに限られたメカニズムだ。

広く使われるものとして「タイミングベルト」と「タイミングチェーン」という2つのメカニズムは共存しているのはなぜなのだろうか。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを優先するかによってベルトにするか、チェーンにするかが決まってくる。

シンプルにいえば、タイミングベルトのメリットは静粛性に優れていることで、デメリットは耐久性に難があること。タイミングチェーンのメリット・デメリットはその逆といえる。

耐久性に難ありということは、タイミングベルトは定期的な交換が必要ということだ。冒頭で記したように中古車で「タイミングベルト交換済み」というのをアピールしているのは、大掛かりなメンテナンスは済ませていますよということを想起させるのも狙いだ。

カムギアトレーン採用のエンジン例(ホンダ初代VFR750F)。
タイミングチェーン=カムチェーン採用のエンジン例(カワサキ GPZ900R)。

タイミングベルト交換周期を逃すとオーバーホール級の修理が不可欠に

では、タイミングベルトの交換サイクルはどれくらいなのか。耐久性には定評があり、二輪ユーザーにもよく知られているトヨタ ハイエースの場合でも、その交換サイクルは10万kmとなっている。10万kmを超えた瞬間に切れてしまうということではないが、いつ切れてもおかしくないと判断すべき目安が走行10万kmということだ。

なお、タイミングベルトが切れてしまうとバルブとピストンが当たってしまうというトラブルが起きうる。そうなるとピストン、バルブともに交換が必要になる。すなわちエンジンオーバーホール級の修理が不可欠になるのだ。逆に、タイミングベルトだけの交換であればエンジンを降ろさなくてもカバーを外してできるように設計されている。安心のためにはタイミングベルトの交換時期は無闇に伸ばさないほうがいい。

タイミングベルトは、長く使っていると切れてしまうことのある部品と聞くと、ハイパワーエンジンには向かないと思ってしまうかもしれないが、そんなことはない。国産車でいえばハイパワーなターボエンジンで知られる三菱自動車のランサーエボリューション・シリーズが長年にわたって搭載してきた「4G63」型エンジンはタイミングベルトを使っていた。同じく、世界ラリー選手権で活躍したイタリアのランチア・デルタインテグラーレのターボエンジンもタイミングベルト仕様だった。

ちなみに、ランサーエボリューションについては国産らしく10万kmが交換の目安とされているが、ランチア・インテグラーレについては2万kmもしくは4年ごとの交換が望ましいというのが、イタリア車を扱いなれているショップの見解といえる。そして、この交換サイクルはイタリアのバイクについても同様だったりする。

少数だがバイクにもタイミングベルト採用車がある

そう、二輪でもタイミングベルトを採用しているメーカーはある。その代表格がドゥカティだ。ドゥカティの代名詞ともいえるL型エンジンには、まさにL字のカバーがついているが、それこそがタイミングベルト・カバーだ。カバーを開けると、クランクシャフトからそれぞれのシリンダーに向かってタイミングベルトがつながっている様子が確認できるはずだ。

L型エンジンのタイミングベルトについては交換サイクルが、2~3万kmもしくは5年ごとという風になっている(車種によって異なる)。タイミングベルトを採用しているバイクは少数派なため、様々なバイクに乗っているライダーだと、ついつい交換パーツであることを忘れてしまうかもしれないが、ドゥカティに乗っているのであれば車検ごとにタイミングベルトを交換するような心持ちでいれば、安心して乗り続けることができるだろう。

ドゥカティ モンスター900。エンジンは900ccの空冷L型2気筒デスモドロミック2バルブ。
ドゥカティは長らくタイミングベルト駆動を採用している。写真のモンスター900で言えば、エンジン右面の黒い部分がタイミングベルト・カバーだ。

レポート●山本晋也 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実 写真●ホンダ/カワサキ/ドゥカティ/八重洲出版

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