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ホンダは既にカーボンニュートラル化に向けて交換式バッテリーを展開中
2022年4月12日、ホンダが「四輪電動ビジネス説明会」を開催した。ホンダとしては2050年のカーボンニュートラルに向けて、どのような進捗にあるのか四輪部門に絞ってメディアやアナリスト向けに説明する機会だ。
「四輪電動ビジネス説明会」で、ホンダの三部敏宏社長は「二輪車、四輪車、パワープロダクツや船外機、そして航空機まで、幅広い製品を提供するモビリティカンパニーであり、同時に、合計すると年間で約3000万台規模の世界一のパワーユニットメーカーでもあります」と発言した。
モビリティ分野における世界のリーディングカンパニーであり、ホンダがカーボンニュートラル化を進めることは世界的な影響も大きいという自負があることを感じさせた。そんなホンダの電動化戦略において、四輪業界では他社と連携しつつ、独自に全固体電池を開発するなど攻めの姿勢を見せている。同時に二輪業界では「Honda Mobile Power Pack e:(モバイルパワーパック イー)」という交換式バッテリーを展開する方針がある。
コマツが小型ショベルを電動化する動きも
実際、交換式バッテリーに関する具体的な動きも出てきている。2022年3月29日に「着脱式可搬バッテリー『Honda Mobile Power Pack e:』がコマツ電動マイクロショベルに搭載開始」という発表があったのだ。
コマツの建設機械の中でも管工事や造園、農畜産など、人や樹木・花卉と密接した作業現場で利用されることの多いマイクロショベル「PC01」を電動化。そこにホンダのモバイルパワーパックe:と電動パワーユニット「eGX」を搭載したモデルをレンタルビジネスとして展開するということだ。
そもそも小型二輪(電動スクーター)を動かすための交換式バッテリーとして開発されたモバイルパワーパックe:だが、開発時には小型重機や自律型ロボットなどへ展開することも考慮されている。そのため、小型パワーショベルで活用されること自体は驚きではない。
日本全体として2050年カーボンニュートラルの実現を目指している中で、重機のようなジャンルにおいてもゼロエミッション化は求められるため、こうしたアプローチは自然だ。また、京都アニメーション放火殺人事件の影響もあって携行缶で持ち帰るスタイルでのガソリン購入が難しくなっている。
その意味でも、小型パワーショベルの電動化というのは筋がいい。さらに発電機についても徐々にポータブル電源に置き換えられつつあるのが昨今のトレンドだ。もし、ホンダのモバイルパワーパックe:をポータブル電源として使うことができれば、電欠時に交換することですぐさま充電が満タンになるわけで、使い勝手としても従来の発電機と同等になることだろう。
国内バイクメーカー4社が出資する「ガチャコ」とは
そんなモバイルパワーパックe:を普及させるには、バッテリー交換インフラをどれだけ整備できるかが大きく影響することは容易に想像できる。そうしたサービスを展開するのが、エネオス・ホンダ・カワサキ・スズキ・ヤマハの5社が出資する株式会社Gachaco(ガチャコ)だ。
2022年4月1日に会社が設立されたガチャコの使命は、交換式バッテリーのシェアリングサービスと交換ステーションなどインフラ整備を行うこと。当然ながら、その交換式バッテリーとは「ホンダモバイルパワーパックe:」であり、国内4社の二輪メーカーの共通仕様として、この交換式バッテリーがインフラになるという未来が明確になった。
しかし、新会社であるガチャコの出資比率をみるとエネオスが51%と過半数を占めている。このことからガソリン販売が縮小する将来を見越して、エネオスが電動化に関して主体的になっていることがわかる。
ライバルとなるバイクメーカー4社は、交換式バッテリーのインフラ整備において主導権争いをすることなく、エネオスに協力するという姿勢を取れるはずだ。
また、エネオスは長年のサービスステーション運営の経験がある。ガチャコの充電ステーションを、従来からのサービスステーションに併設するのか、新たに便利な場所に新設するのかなど、エネオス主体であればユーザーが使いやすいインフラが期待できるというものだ。
利便性が高くなれば、ユーザーとしては交換式バッテリーの電動バイクを選ぶメリットが出てくる可能性もある。いずれにしても、ホンダのモバイルパワーパックe:が日本中で様々な用途で使われる時代は間もなくやってくる!
レポート&写真●山本晋也 編集●モーサイ編集部・小泉元暉