コラム

マン島TT現役ライダーで最多の23勝!ジョン・マクギネス選手インタビュー「2022シーズンへの思い、大英帝国勲章MBE授与への感慨」

マン島TTのヒーロー、ジョン・マクギネス選手

マン島TTの現役ライダーで最多となる23勝を上げ、ジョイ・ダンロップ(故人)が持つ26勝に最も近い男、ジョン・マクギネスが大英帝国勲章のMBEを与えられた。
これによって氏名にMBEをつけることができ、彼の名はジョン・マクギネスMBEとなった。

MBEといっても多くの日本人にはなじみが薄く、何のことかわからないだろう。MBEとは大英帝国勲章のひとつで、「The Most Excellent Order of the British Empire」、栄誉ある活動をした人に対してイギリス王室が授与する勲章だ。

大英帝国勲章には5クラスがあり、MBEとは「”Member” of the Most Excellent Order of the “British Empire”」で、大英帝国勲章のメンバー(会員)となったことを意味する。

大英帝国勲章は、日本の文化風習でたとえると褒章にあたると考えていいだろう。日本では毎年春と秋に叙勲がありさまざまな褒章がある。
そのなかで一般的に有名なのは、科学技術分野における発明・発見、学術およびスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた人に与えられる紫綬褒章だ。

これはあくまで例えだが、加賀山就臣が紫綬褒章を授与されたような出来事だ。
しかし残念ながら日本のモータースポーツ界で紫綬褒章を与えられた選手はいない。

MBEを授与されたレーシングライダーはほかにサミー・ミラー、ジョナサン・レイ、マリア・コステロなどがおり、イギリスではモータースポーツが文化としてしっかりと根づいていることがわかる。

このニュースを受けて、アダム・チャイルドがジョン・マクギネスMBEにインタビューしたレポートが編集部に届いたので紹介しよう(インタビューが行われたのは2021年1月)。
アダムはイギリスでもっともメジャーなバイクメディア「MCN」でテストライダーを務めた経歴を持ち、ジョンと同チームでマン島TTに参戦したこともあるジャーナリストだ。

ジョン・マクギネス選手。イングランド出身、1972年4月16日生まれで、初めてマン島TTに参戦したのは1996年のこと。1999年にマン島TTライトウェイト250クラスで初優勝して以降、様々なクラスで優勝を重ねていく。ロードレース世界選手権 500ccクラスへの参戦経験もある。
49歳を迎えたが、現役でマン島TTに挑み続けるライダーである。


大英帝国勲章MBE授与のきっかけはチャリティ活動

アダム:新型コロナ禍の影響で、2020年、そして2021年もマン島TTが中止になった。そんな状況だけど、ジョンは今何をしている?

ジョン:2020年のスーパーエンデューロ世界選手権で優勝したビリー・ボルトのマネージャーをしているイアン・ホルトからCBR600RRを買ったんだ。イアンはブルース・アンスティ(ニュージーランド出身のマン島TTトップライダー)が初めてTT参戦するためにここへ来たときに彼をサポートした人物だ。僕はこのバイクを2002年スーパースポーツ世界選手権のチャンピオンマシンレプリカにしようと思ってる。
僕のバイクコレクションはマン島TT関連のものばかりだから、ちょっと違うものも欲しかったんだ。バイクは手に入れたから、あとは塗装をするだけだよ。

アダム:そうそう、僕は君のことを「サー」をつけて呼ばなくてはいけないのかな?

ジョン:そうさ、なにしろ勲章だからね!いやまあ、僕のことをどう呼んでもいいけど、名前の後ろにMBEがつくんだよね。博士号を取ることとMBEは違うけど、ちょっと妙な気分だ。なぜなら推薦によってMBEを授与されたからで、レースで勝ったわけでもないのに賞をもらえたことに戸惑ってるよ。
首相や内閣府が僕のチャリティ活動を認めてくれたんだ。できる限りのことをしたいと思って、僕は血液バンクや救急航空機配備のためにチャリティをしてきた。そういうことをきちんと見てくれてた人がいて、それが推薦につながっった。やり続けることは大切だと思ったよ。

アダム:MBEの候補になっていることは知っていたの?

ジョン:まったく知らなかった。「イギリス政府」と書かれたメールが来たから、自動車税を払い忘れたと思って不安になったくらいだよ。読んでみたら「叙勲者リスト」と書いてある。すると妻が言ったんだ。「あなたもそのひとりよ」って。
彼女は僕を推薦してくれた人と一緒に推薦状を作ってくれていたんだ。推薦状には僕と仕事をした人の署名が必要なんだけど、僕を推薦してくれた人とそうでない人がわかるのは興味深かったね。

アダム:そんな重要な通知がメールで来るの!?

ジョン:そうなんだよ。だから僕は彼らに電話をして「非常に光栄です」と伝えたんだ。MBEのことを事前に公言してはいけないと言われたから、僕はもちろんそれを守って誰にも話さなかった。知っていたのは家族だけだよ。女王陛下からの通達とあれば襟を正さなければならないからね。平凡な一年の終わりに起きた、とてもうれしい出来事だったよ。

アダム:それで君の氏名は正式に変わったの?

ジョン:そう。僕は正式にMBEになった。電話代の請求書の宛名は以前のままだったけど、地元の副統監からお祝いの手紙をもらったよ。ツイッターの名前を「John McGuinness MBE」に変えてみたけど、自慢してるみたいで恥ずかしいね。

アダム:女王陛下には会えるの?

ジョン:パンデミックが終わったときに、ガーデンパーティーが開催されたら最高だよね。

2019年、2020年は中止となったマン島TTだが……

アダム:そのパンデミックのせいで2020年、そして2021年とマン島TTが中止になったけど、2022年のことは考えている?
(*2021年8月時点では5月29日〜6月10日開催予定となっている)

ジョン:2016年はシニアTTで自己最高速度を出したけど、2017年、2018年は怪我のために乗れなかった。2019年もダメだったし、それからはレースが中止になってしまった。どうなるかはわからないよ。気持ちは若いままだけど、2022年に僕は50歳になってるんだ。

もちろんTTは僕がやりたいことの重要なひとつだし、動機はいくつかある。僕にとってTT参戦100回目となるスタートを切りたいし、リタイヤしたままで終わらせたくないんだ
(*2019年シニアTTで、ジョンはエンジンボルト脱落により1周目でリタイヤした)

マシントラブルは何度も経験してきたけど、バンガロー(マン島TTで走るスネーフェルマウンテンコースの31マイル地点の名称)のストローバリアに腰掛けてたことを、僕のTTキャリアの最後になんてしたくない。だけど、あとは時の運に任せるしかない。最後がどうなるのかは誰にもわからないよ。

50歳になっても、あと10年はヨロヨロとクラシックバイクを走らせることはできるけど、230馬力もあるスーパーバイクでブレイヒル(スタートから数十秒で到達するポイントで、勾配がきつい下り坂を全速力で駆け下りる)を走るのは厳しいだろうね。でも、どうなるかは僕次第だ。次のTTまでに僕は歳をとってしまうけど、焦らずに待つしかないよ。

アダム:このままカワサキに乗り続ける?
(*2020年からジョンはQuattro Plant Bournemouth Kawasakiと契約)

ジョン:今のところはそうだね。僕は忠実な男だし、追い詰められたら何があっても勝負に出るよ。

アダム:TT-ZERO(電動)の無限、そしてスーパースポーツ(600cc)は?

ジョン:600とスーパーストック(市販車1000ccクラス)は、ボーンマス・カワサキがあるから大丈夫。でも無限はどうかな。本田博俊さんとは今もよく話してるし、彼は僕のMBE叙勲を最初に喜んでくれた人のひとりだ。2019年、怪我がまだ治っていない僕の代わりに、彼は他のライダーを起用することもできたんだ。それなのに彼は僕が完治するのを待ってくれた。いい人だよ。
(*この年ジョンはTT-ZEROで2位入賞して無限のワンツーフィニッシュに貢献した)

写真は2019年、電動バイクのクラスTT-ZEROに無限 神電で参戦したときのもの。右がジョン・マクギネス選手、中央が本田博俊氏、左がTT-ZEROで優勝したマイケル・ラッター選手。
2022年のマン島TTをどう戦うか

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