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なくならない高齢ドライバーによる交通事故……免許所持者の「自主返納」への意識は?
2019年4月に東京・池袋で発生した高齢ドライバーによる事故などをきっかけに、「高齢者の免許返納」についてこれまで以上に注目されるようになりました。しかし、その後2019年をピークに免許返納する高齢者の数は減少傾向にあると言われています。2023年現在、クルマやバイクの免許を持っている人の「免許自主返納」への意識はどうなっているのでしょうか。
Webまたはアプリから事前予約・事前決済してバイクやクルマの駐車場を利用できる駐車場のシェアリングサービス「akippa」が、自社サービスのユーザー1万4262人(有効回答数)を対象に「高齢者の免許返納」に関するアンケートを行ったところ、以下のような結果になりました。
「将来的に免許返納を考えている」人は約75%、都市部と地方でほぼ差異なし
「免許返納についてあなたの考えを教えて下さい」との質問には、回答者の74.9%が「将来的に免許返納を考えている」と答える結果になりました。
そう考える理由としては「自分の身の回りの高齢者の運転に不安を感じるから」「事故が怖いから」などが挙げられました。一方「将来的に免許返納を考えていない」と回答した人は「クルマがないと不便だから」「将来のことはまだわからないから」などの回答理由を挙げました。
行政が「免許返納」を推進するにあたってしばしば取り沙汰される懸念事項に「公共交通機関が発達していない地方において免許返納後の交通手段がない」「クルマやバイクがなければ生活できない地方もある」といった問題がありますが、今回の調査では居住地別による回答の差異は特になく、公共交通機関が発達している首都圏や関西圏と、その他地域において免許返納の意志について大きな差は見られなかったということです。
「クルマやバイクの運転は何歳までしたいか?」半数近くが70代までと回答
続いて「クルマやバイクの運転は何歳までしたいと考えていますか?」との質問には「70代まで」と回答する人が最も多く46.1%、次いで「60代まで」と回答した人が17.4%と多く、合わせると6割以上のドライバー・ライダーが70代までには免許返納を考えていることが分かります。
運転免許の更新時には、70歳〜74歳が高齢者講習、75歳以上は認知機能検査と高齢者講習の受講(いずれも運転免許証の更新期間が満了する日の年齢)が必須となっていることもあり、70代は免許返納について考えるひとつのタイミングになっているのではないかと推察できます。
「免許返納のきっかけになり得るものは何?」運転技術の衰えが約70%で首位
「免許返納のきっかけになり得るものは何ですか?」(複数回答可)という質問では、「運転技術の衰え」(69.0%)との回答が最も多くなりました。一方でその他の回答にも分散する結果が見られ、「年齢」(46.5%)、「高齢者の運転による事故のニュース」(45.3%)はいずれも半数近くの回答者が選んでいます
自身の運動能力や運転技術といった主観的な要素に加え、年齢やニュースといった客観的な要素、外部要因も合わせて総合的に判断しよう考えているドライバー・ライダーが多いようです。
「免許返納すると日常生活の移動にどのくらい困るか」まったく困らない……はわずか0.9%
これまでのアンケート結果から読み取れるように、大多数のドライバー・ライダーが免許返納を検討している状況ではありますが、返納後の生活には不安も残るようです。
先の問いで「将来的に免許返納を考えている」と回答した人に対して行った「免許返納をした場合、日常生活の移動にどのくらい困ると思いますか?」という質問には、「とても困る」(38.0%)「やや困る」(46.5%)という回答が多く、合わせると84.5%もの免許返納を考えるドライバーが「返納後は移動手段に困るだろう」と考えていることがわかりました。逆に「全く困らない」と回答した人は、はわずか0.9%という結果となりました。
また、「免許返納後の主な交通手段は何になると思いますか?」という質問には「電車」(35.2%)と回答する人が最も多く、次いで「バス」(24.8%)となりました。続く3位となったのは「家族や知人が運転するクルマ」(13.0%)となっており、公共交通機関が少ないなど、居住場所によってはクルマやバイクがないと移動が難しい人が一定割合いる様子が伺えます。
レポート●モーサイ編集部・中牟田歩実 写真●株式会社akippa/モーサイ編集部