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偽装ナンバープレートを「天ぷらナンバー」と呼ぶことがある
ナンバープレートは使用用途(自家用か、事業用か、貸渡用かなど)や使用本拠地(原則として管轄する「運輸支局」か「自動車検査登録事務所」のある地名、ご当地ナンバーについてはその限りではない)などのほか、車両情報と紐付いて所有者の個人情報がわかるもので、乗り物自体が推進力を持って公道を走るほとんどの車両(電動自転車や電動車椅子、セニアカーなどを除く)に装着が義務付けられています。
しかし中には正式にナンバープレートを申請せず、偽装したナンバープレートを取り付けている不届きな人もいます。
そしてそんな偽装ナンバープレートは「天ぷらナンバー」と呼ばれることがあります。一聴するとどこか響きに愛嬌のある「天ぷらナンバー」という呼称。どのような由来でこう呼ばれるようになったのか、また、どのような目的で使用されるのかを紹介します。
そもそもナンバープレートって何の意味があるの?
そもそもナンバープレートはどのような目的で付けられているのでしょうか。
冒頭の繰り返しになりますが、ナンバープレートには、管轄する運輸支局や自動車検査登録事務所のある(ご当地ナンバーについてはその限りではない)「地名」、自動車の種別を表す「分類番号」、ひらがなやアルファベットで車両の用途を表す「区別文字」、最大4桁の数字で表す「一連指定番号」といった情報が記載されています。
厳密にはナンバープレートにもいくつか種類があり、二輪車を除いた小型・普通・大型の自動車に取り付けられる「自動車登録番号標」、軽自動車及び二輪の小型自動車に取り付けられる「車両番号標」、原付やトラクターといった小型特殊自動車に取り付けられる「原動機付自転車番号標」などのうち、どれなのかによって記載される内容や体裁も多少変わってきます。
しかし、いずれにしてもこれらの数字や記号の組み合わせは唯一無二のもので、所有者が車両を登録した時の個人情報と紐付いています。そして警察は犯罪や事故が起こった際に、ナンバープレートの番号を元に車検証上の所有者を特定することができます。
このように車両固有の“身分証明証”のようなものとして機能するナンバープレートは、治安を守る上で有効活用されます。

一方で車両を使った犯罪や、意図的な違反走行などを行う人にとっては、ナンバープレートの持つ「所有者特定」の機能が煩わしく感じられるようです。そのため、そういった人の中にはナンバープレートを跳ね上げて番号が見えないようにしたり、ナンバープレートの上にカバーをかけたりしている人もいます。
しかし、「ナンバープレートを所定の位置に表示すること」は道路運送車両法第19条(自動車登録番号標の表示の義務)で義務付けられています。特に2016年4月1日から施行された国土交通省省令及び告示では、これまでも道路運送車両法第19条で禁止されてきた、カバー等で「被覆すること」に加え、ナンバープレートについて、シール等を貼り付けること、汚れた状態とすること、回転させて表示すること、折り返すこと等が明確に禁止されました。さらに2021年10月1日から適用された「ナンバープレートの表示に係る新基準」では、前後それぞれのナンバープレートの取り付け角度の適正範囲、ナンバープレートに取り付けるフレームやボルトキャップの幅や直径、厚みなどが数値で明確に規定されています。
ゆえに、ナンバープレートが見えないように加工してしまっては、誰が見ても違反していることが一目瞭然。
そこで“パッと見でバレにくい”と思われているのが、違う車両のナンバープレートなどを装着してカモフラージュしてしまう方法。個人情報を特定されないように、異なる数字や記号のナンバープレートを装着してしまえば、一見しただけでは違和感を持たれることなく違反車が運転できてしまいます。この時に使用されるナンバープレートが「天ぷらナンバー」です。
衣(偽装ナンバープレート)で中身(そのクルマの身元)を覆うから天ぷらナンバー
では一体なぜ偽装ナンバープレートは「天ぷらナンバー」と呼ばれるのでしょうか。
天ぷらは衣で具材を覆ってしまうため、実際に食べてみないと中身がわかりにくい料理。偽装ナンバープレートを取り付けた状態(衣で覆った状態)は盗難車や違反車(中身)としての外見上の判断がしづらいため、このような名前になったと言われています。
ちなみに大学が制服指定だった時代に、大学に在籍していない人が学生服を身に纏って無断で講義を受けている人のことを「天ぷら大学生」と呼んでいたため、そこから「天ぷら」という言葉が拝借されたのかもしれません。

天ぷらナンバーを装着したらどんな罰則があるの?
違反者の中には本物のナンバープレートそっくりの「天ぷらナンバー」を自前で制作する人もいますが、多くの場合、廃車から取り外したり、街中に駐車している車両から盗んだりしたナンバープレートを別の車両に取り付けることで「偽装」します。そのため、パッと見ただけでは取り付けられているのが「天ぷらナンバー」なのかどうかを見分けることはできません。
言うまでもなく「天ぷらナンバー」の装着は悪質な違反。使用するとどんな罰則があるのでしょうか。
冒頭でもご紹介したように、ナンバープレートは犯罪や事故の調査に役立つ情報を提供する重要な役割を持ちます。そのためナンバープレートの不正利用は「道路運送車両法違反」の中でも比較的重い罰則となります。
道路運送車両法第98条(不正使用等の禁止)の第1項では偽造や変造の禁止、第3項では当該車両以外へのナンバープレートの取り付けの禁止が記載されており、「天ぷらナンバー」の使用はこれらの項目にそれぞれ違反することになります。
また、それぞれの罰則についても道路運送車両法第106条、第109条に定められており、98条の第1項に違反した場合には「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」(106条)、そして第3項に違反した場合では「50万円以下の罰金」(109条)が科されると記されています。
「天ぷらナンバー」という愛嬌のある名前で呼ばれることもありますが、その罪は決して軽くはありません。いかなる理由があっても絶対に使用しないようにしましょう。
レポート●森中 忍 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実 写真●JAF/モーサイ編集部