バイクライフ

ラクにのんびり楽しめる「ロングストロークエンジン」搭載バイク4選! これなら“てきとうに”走っても許される!!

「スポーティさ」以外にも目を向けてみると……トルク感あふれた走りの魅力に気付ける!

趣味の世界では、隣のカテゴリーを知らないまま自分の趣味に没頭していくことがままありますよね。中華料理作りが趣味の人がイタリア料理の技法に全く疎かったり、パソコンマニアの人がWindowsだけを扱ってきたためにMacについては完全に守備範囲外だったり……などなど。

バイクの世界でもそうしたことは起こり得ます。多気筒の高回転型エンジンでスポーティに走ることばかりを考えてきたため、低速トルクが豊かなハーレーやネオクラシックマシンについて、実は全く知らないまま生きてきた──といったケース。

ここでひとつ視点を変えて、隣の芝に踏み入ってみてはいかがでしょうか。そこで提案したいのが、ロングストロークなエンジンという選択肢。回転数も稼げないし、なんかダルそうで、あんまりちゃんと乗ったことないけれど……なんて方もいらっしゃるかと思いますが、これはこれで良いところがあるんです!

「ロングストロークエンジン」のいいところとは何だろう?

ロングストロークエンジンとはシリンダー内径が小さめで、そのぶんピストンの上下移動距離が長いエンジン。特性をものすごくざっくり言ってしまえば、低回転域から豊かなトルクで車体を前に押し出してくれるエンジンです。

スポーツバイクがショートストロークエンジンを回して回して大きなパワーを絞り出す、というのに対し、ロングストロークエンジンはどの回転数からでも必要十分なトルクを発生させることが得意。

さて、そう聞くとなんだか刺激の弱いつまらないエンジンに思えますが、そこはバイクという乗り物の楽しみ方の方向性が違う、というだけのことです。

ストップアンドゴーの多い街なかで楽チン……大トルクのおかげ

低回転域で大トルクを発揮してくれるので、赤信号で停まる機会の多い街なかでの走行ストレスが非常に少なく済みます。停車時からのスタートでクラッチを適当につないでもスルスルと走り出してくれるので、発進時にいちいち気合を入れる必要がありません。エンストもあまり意識せずに済みます。

これが排気量が小さめの高回転型エンジンなどであれば、青信号になるたびに繊細にクラッチをつなぎ、けたたましく唸りを上げるほど回転数を上げ、シフトアップを繰り返し、ようやく4速、5速とギアを上げ切った頃に、また赤信号で停車……。これではバイクの操作に疲れてしまい、街なかへバイクで出かけるのが嫌になりますね。

ラフな操作でも加減速が容易で、頻繁なシフト操作から解放される

複雑な交通の流れの中にあっては、他車に影響されて自身も加減速を強いられるケースが少なくありません。また、ワインディングなどもコーナーの曲率に合わせ車速をコントロールする必要がありますね。そうしたシチュエーションの中、減速から再加速をスムーズに行うために、トルクが最も発生する回転数付近を維持できるようシフトダウンとシフトアップを小まめに行うことになるでしょう。

ところがロングストロークエンジンは、必要十分なトルクを発生させる回転数の幅が広いため、シフトダウンをしなくともアクセルをひとひねりしてやれば十分に加速してくれるケースが非常に多いです! 

そのためシフト操作が苦手な方も、またそうでない方も、バイクの操作に必要な手数が高回転型エンジンと比較して絶対的に減るので、より他の何かに意識を割けられます。例えばそれはツーリング中の景色や空気のにおい、道の両側に並ぶ木々の葉色、木漏れ日。バイクに乗って移動するという行為を操作以外の部分で豊かなものにしてくれるのがロングストロークエンジンの魅力です。

ロングストロークエンジン車を4台紹介! 排気量それぞれに魅力的な走り

さて、そんなロングストロークエンジンの魅力をご理解いただいたところで、実際の搭載車種を見ていきましょう!

ハーレーダビッドソン スポーツスターシリーズ(883ccモデル)

ハーレーダビッドソン スポーツスターシリーズ(883ccモデル)。スポーツスターシリーズは複数の車種がラインアップされていたが、こちらはXL883N Iron883(モノトーン138万8200円※2021年モデルとして)。ソリッドな鉄っぽさを醸す、硬派なスタイリングが特徴。エンジン型式は空冷V型二気筒OHV。ボアストロークは76.2mm×96.8mmのロングストローク設定だ。

ハーレーの中でも軽量・小排気量のクラスとして、近年はエントリーユーザーからシニアライダーまで幅広い層から人気を博していたスポーツスターシリーズ。残念ながら2021年モデルを最後にカタログからその姿を消すことになりましたが、中古市場ではまだまだ数多くの車両が取引されています。

近代的な作りで故障が少なく維持が容易なエボリューションエンジンを搭載した1986年以降スポーツスターの883ccモデルは、ピストンのボア76.2mmに対してストロークが96.8mmというロングストロークエンジンを搭載しています。このエンジンはまさしく前述の特徴どおり、常用速度域においてはアクセル操作だけでどのギヤからでも非常に力強い加速をしてくれ、ハーレーらしさあふれるドコドコとした鼓動感も相まって、ライディングテクニックに秀でていなくてもただ乗っているだけで楽しい気持ちになれる、そんなバイクに仕上がっています。

カワサキ W800

カワサキ W800(価格:119万9000円)。1966年にカワサキより発売されたW1の流れを組む末裔となる現行モデル。排気量773ccの空冷並列二気筒OHCエンジンはボアが77.0mm、ストロークが83.0mmのロングストロークエンジン。カムシャフトの駆動伝達にはチェーンではなくベベルギヤを採用しているのが特徴。

カワサキのラインアップの中でもとりわけトラディショナルなスタイルがむしろ新鮮に映るWシリーズ。いわゆるZ1ことカワサキ900SUPER4より先に登場したW1のデザインイメージを踏襲しており、旧車の佇まいが印象的なバイクです。W1からモデルチェンジを重ね、車名も変わり、時には排ガス規制でカタログ落ちしたりしつつ、今は現行車として名を連ねるW800ですが、こちらもまた883ccのスポーツスターに負けず劣らずのロングストロークぶり。

それに加えてW800 のエンジンはクランクシャフトの回転に慣性を与える「フライホイール」が同クラスの車種よりやや重めに設計されているため、エンジンの回り方が悪く言えばダルな印象ですが、しかしクランクの慣性力が強いため発進時のエンストもしづらく、独特のパワーフィールを実現しています。

W800にはスタイリング違いのバリエーションモデルとして「W800」「W800 CAFE」「W800 STREET」の3種類が用意されていますが、「W800」はフロントホイール径が19インチ、後者2つは18インチという違いがあります。よりおおらかな操縦性を求めるならば、フロントホイールの大きい「W800」がオススメです。

ホンダ GB350

ホンダ GB350(価格:55万円)。もともとインドで展開されていたハイネスCB350というバイクを日本市場向けに改修したもの。348ccの空冷単気筒OHCエンジンは20馬力という控えめな数値でありながら、わずか3000回転で3.0kgf・mのトルクを発生。ボアストロークは70.0mm×90.5mm。

2021年に鳴り物入りで国内展開が始まったGB350は、またたく間に人気車種としての地位を確立し、同年の11月には販売台数ランキングにおいて251cc以上のモデルの中でもトップセールスを実現しました。実際に走っているGB350を見かけることも多いように感じますね。

さて、そんなGB350は上記の2モデルと違いいわゆる普通二輪免許で乗れる車種となりますが、その分だけ軽量な180kg(GB350 Sは178kg)という装備重量に収まっており、老若男女問わず扱いやすい質量感。それでいて最大トルクを非常に低い回転数で発生させるロングストロークのエンジンが搭載されているため、どんなシチュエーションにも対応できる懐の深さが魅力と言えます。

また、やや小柄なサイズ感は市街地を流すのにも非常に都合がよく、20馬力というパワーは最高速度の速さこそは望めませんが、お出かけの足やツーリングと常に穏やかに寄り添ってくれる丁度いい相棒として、エンジンの発する小気味いいパルス感とともに長らく楽しむことができるでしょう。

スズキ Vストローム250 ABS

スズキ Vストローム250 ABS(価格:61万3800円)。「Vストロームシリーズ」の末弟として、250ccクラスらしからぬ本格的なスタイリングを持つ。GSR250に搭載された水冷並列2気筒OHCエンジンは、53.5mm×55.2mmのややスクエア気味なボア×ストロークとなっており、回した印象は「頑丈」そのもの。

スズキの誇るアドベンチャーバイクであるVストロームシリーズは、1050、650、250ccのクラスで3兄弟車として展開されていますが、その末弟となるVストローム250 ABSに搭載されるエンジンはピストンのボアが53.5mm、ストロークが55.2mmという若干のロングストローク設定。このエンジンも低・中間回転域のトルク感に優れ、上記のGB350とは違って2気筒であるため、穏やかに、しかし確実に回っていく優しさと信頼感を発揮し、テーマにたがわぬ扱いやすさを発揮します。

しかしこのバイクの扱いやすさはもう一つあります。それは価格! 車両価格が61万3800円(税込)とリーズナブルな設定です。そしてこのスタイルならばサイドケースやトップケースを着けてロングツーリングに出かけたくなることでしょう。そんなオーナーのためにスズキは純正のケース類を販売しており、その価格は

トップケースセット…2万7500円
トップケースプレートセット…6600円
サイドケースセット…4万9500円
サイドケースプレートセット…6600円
スリーケースロックセット…4400円
となっています。

つまり車両価格とケース類をすべて合わせると70万8400円! 実際にはここに工賃がプラスされますが、なんと70万円ちょっとでロングツーリングに適したフルパニア状態のバイクが完成してしまうのです。

この扱いやすさと価格設定が功を奏したのか、北海道ツーリングにスズキの純正ケースを着けたVストローム250で行くのがちょっとしたブーム(?)になった時期もあったように思います。それだけユーザーフレンドリーなモデルであるということでしょう。


穏やかなロングストロークエンジンは、スポーツ走行だけではないバイクの楽しさをきっと気づかせてくれるはず。ここで挙げたモデルを駆り、のんびりと景色を楽しみながら走るツーリングに出かけてみてはいかがでしょうか?

レポート●緒方誠一 写真●ホンダ/カワサキ/スズキ/ハーレーダビッドソンジャパン

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