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安全のための取り締まりは……キタナイと思われつつも続けられる
「やられた!」
「ズルいぞ!」
こんな批判を受けることもめずらしくない交通取り締まり。
警察官だって、生まれながらにして警察官だったわけじゃありません。大学生、一般企業、就職浪人を経て警察官になるまでには、一般の人としてハンドルを握りながら取り締まりを受けて「やられた!」と感じた経験をしています。
そうして、一般目線の「いまなら大丈夫」「ここは大丈夫」という心理も熟知しているので、ウラをかくのもお手の物です。
今回は、違反者のウラをかく、「その取り締まりはキタナイ!」と思われがちな取り締まり方法をピックアップしていきます。
「物陰に隠れて違反を見張る取り締まり」はキタナイと思う?……例その1
今さら触れるまでもない常套手段ですが、取り締まり中の警察官は総じて「隠れて」います。
とくに、違反を最初に現認する係の警察官は徒歩で物陰に隠れていることが多く、街頭を歩いていると変なところに人が潜んでいるので「びくっ!」と驚いてしまうなんてケースも少なくありません。
しかし、これが車やバイクで走っているとなかなか気づけないもので、運転手側から警察官が見えたときにはすでに違反を現認されています。
「そんなところに隠れていないで堂々と姿を見せろ!」
「そもそも、制服の警察官が姿を見せてくれていれば違反なんてしないだろ?」
こんな批判が絶えませんが、いくら批判しても違反が事実なら問答無用で切符を切られます。
「通勤時間帯の取り締まり」はキタナイと思う?……例その2
「違反したこっちが悪いのはわかる、でも『今』じゃなくていいだろ!」
そう言いたくなるのが通勤時間帯の取り締まりでしょう。
違反が見つかってアレコレと説明を受けながら免許証を提示しているうちに数分、警察官が違反切符を書いているのを待つこと数分、さらに切符の内容の説明や反則金の納付などの説明で数分……わずか数分でも遅れると渋滞の具合が大きく変わる通勤時間帯に、10分前後の時間をロスするのは点数や反則金よりも痛かったりすることもあります。
とはいえ、通勤時間帯だからこそ軽微な違反が大きな事故を招くのも事実です。「抜け道を使ってしまえ!」と通行禁止の生活道路を走ってしまい、通学中の児童・生徒をはねてしまったなんてことになれば人生がめちゃくちゃになるでしょう。
急いでいるからこそ、ムリをせず安全運転で。これが基本であり、ムダな時間、ロスを防ぐ秘訣です。
「下り坂でスピード違反を取り締まる」のはキタナイと思う?……例その3
スピード違反は重大な交通事故につながりやすいので厳しい取り締まりを受けるのは当然です。
しかし、わざわざスピードの出やすい道路を選んでの取り締まりだと「ここで取り締まりをするのはキタナイ!」と感じるでしょう。
とくに多いのが山間部の長い直線道路で、しかも下り坂。アクセルに足を乗せているだけで自然とスピードが出てしまうので、メーターに注意を払っていないとあっという間に20〜30km/hオーバーを叩き出してしまいます。
場所の選定がズルいと思われがちですが、うっかりスピードオーバーしやすい場所だからこそ重大事故につながりやすいので仕方がありません。切符を切られないためではなく、悲惨な事故を防ぐためにも、下り坂はエンジンブレーキを活用してスピードを抑える対策が必要です。
「高速道路の出口付近でスピード違反を取り締まる」のはキタナイと思う?……例その4
下り坂と同じ理屈でスピード違反のメッカになっているのが高速道路の出口付近です。
とくに郊外では不便な場所に設置されているインターチェンジが多く、インターチェンジと市街地を結ぶバイパスが整備されているところも少なくありません。高速道路を走っていた感覚そのままで整備されたバイパスなどに入ると、一般道であることを忘れてアクセルを踏んでしまい、スピードオーバーしやすくなります。
ドライバーの感覚マヒを逆手に取った実に巧妙な取り締まり方法だと腹を立てる方もいますが、「高速道路での感覚が抜けずにスピードを出しすぎて大事故に発展した」といったケースがあるのも事実です。
高速道路の本線から外れた時点でしっかり気持ちを入れ替えないといけません。
「出発直後にシートベルト不着装を取り締まる」のはキタナイと思う?……例その5
意外と「その方法はキタナイ!」と言われることが多いのが、「ある状況」におけるシートベルト不着装の取り締まり。どんな状況なのかというと、それは「クルマが出発した直後」です。
ドライバーのなかには、クルマを出発させながらシートベルトを装着したり、しばらく走って大通りに出て落ち着いてからシートベルトを締めたりする方がいます。出発時の周辺確認や大通りまでの見通しが悪い交差点での安全確認にはシートベルトをしていると窮屈……といった理由のようですが、これがクセになっているなら要注意です。
出発して数十メートルしか走っていなくても、警察官に見つかるとしっかり停止を求められてしまいます。「いま出発したところなんだけど」、「ちょうど装着しようとしていたところなんだけど」と言い訳をしても通用しません。
シートベルトを少しでも外して走行すれば違反であるのは間違いありませんが、ほんの数十メートルしか走っていない状況だと狙い撃ちされたと感じてしまうのです。そこでいくら「キタナイ!」「ズルい!」と反発しても切符を切られてしまうので、誤ったクセがついてしまっているなら早めに矯正しましょう。
レポート●鷹橋公宣

元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。