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とつぜんの交通取り締まり!違反をしていないときでも……
交通ルールを守って安全運転に努めているのに、とつぜん取り締まり中の警察官に止められてしまった経験がある方は多いはずです。
「え? なにか違反した?」と不思議に思いながらも一応停止すると「さっきの交差点、一時停止していませんでしたよね?」とか、「スマホ触ってたでしょ?」なんて疑いをかけられたら、文句のひとつも言いたくなるでしょう。
しかし、現場の警察官も簡単には引き下がりません。苦しい言い訳をして「あえて切符を切らなかった」という体裁を整えたり、あるいは「警察官が見ていたことが証拠になる」なんて無茶苦茶を言い出すのだから始末の悪い話です。
当記事では、実際には違反がなかったときの「警察官の苦しい言い訳」や、実際の取り締まりでも耳にする「警察官が見ていたことが証拠」は本当に通用するのかを解説します。
警察官が見間違いを素直に認めることもある
警察官は街路樹や電柱の陰に隠れていたり、少し離れたところに停めているパトカーの中から見ていたりすると、違反をしていないのに見間違って、停止を求めることがあります。
シートベルトをしていないように見えた、耳元をさわっていたのがスマホを耳に当てているように見えたなど、停止させて確認しないとわからないケースが多いのも事実です。こんな場合、大抵の警察官は「すみません、違反に見えました」と素直に謝罪するはず。
違反ではないことが明らかなら、ドライバーに時間を取らせる理由もありません。もっとドライな話をすれば、自信をもって「違反だ!」と言えない限り、そこで言い争いをしても時間のムダになってしまいます。
だからこそ、違反だったかどうかはっきりしない場合は「勘違いでした」と間違いを認めて謝罪したり、少し意地悪な警察官だと「気を付けてくださいよ」なんて言いながらあえて切符処理しなかったという体裁を整えてくるでしょう。
ただし、違反がなかったことが明らかになり、警察官の態度が気に入らなかったとしても、そこで突っかかっていくのはおすすめできません。
あまり時間をかけていると「でも、これも違反だよね」などと言い出して、別の違反で切符を切ろうとしだすこともあります。
たとえば、違反をしていなかったことが明らかになったのに「あれ?サンダル履きで運転してますね」なんて重箱の隅を突き出すので、すみやかにその場を離れたほうが安全です。
「いいや、違反だ」と食い下がってきた!「警察官が見ていただけ」でも違反になってしまう?
往生際が悪い警察官に当たってしまうと「いいや、違反だった!」と食い下がって見間違いを認めないパターンもあります。
もっとも典型的な苦しい言い訳が「警察官が見ていたこと自体が証拠だ」という主張です。
なんて横柄なことを言うんだと憤ってしまいそうになるのもムリはありません。しかし、苦し紛れに放ったようにも感じるこの言い訳は、ある意味では真実です。
警察官がその場で見た状況を説明する「現認報告書」を作成し、作成者として裁判に出廷して「実際に見た状況をウソ偽りなく書いた」と宣誓すれば、証拠として採用される可能性があります。
ここでいう「証拠」とは、一般的なイメージの証拠とは少し意味が異なるものです。
証拠といえば、その存在があることで違反が間違いないものだと決まってしまうもののように感じられるでしょう。すると、違反をしていないのに警察が「これが証拠だ」と提出したものは「捏造(ねつぞう)したもの」になります。
しかし、警察の捜査や裁判における証拠とは「証明しようとしていることの根拠」という意味で、それだけで違反や有罪を決めるものではありません。現認報告書は「その位置から警察官が見ていた」という事柄を証明するだけであり、それ以上でもそれ以下でもないのです。
ただし、警察官がその位置から見ていたという事実は、裁判に出廷した警察官の証言とセットになって評価されます。やはり「警察官が見ていたのだから間違いない」という理屈の主張が続くので、ドラレコなどの装備で防御力を高めておくのが望ましいでしょう。
現場警察官の違反がなかったときの「言い訳」は個人の経験次第
実際は違反なんてしていなかったのに停止させられて、やっぱり違反はなかったと明らかになったとき、どんな言い訳をするのかは現場警察官の個人の経験次第です。
否認されたときの対応や停止させても違反ではなかったときの対応といったマニュアルは存在しません。もちろん、法律や規則によるルールも決められていないので、どんな言い訳をするかは現場警察官の経験則によって異なります。
多くの警察官は「すみません」「この後も気を付けて」と素直に謝るでしょう。しかし、なかには自分の間違いを認めたくないかのように「次は切符を切るぞ」と吐き捨てる横柄な警察官が存在するのも、残念なことに事実です。
もし、違反をしていないのに停止させられたら、冷静に淡々と「違反してませんけど?」と状況を説明するのが一番です。
強く押せば強く返ってくるから「よく見ろ!」なんて最初から強気で攻めているとその場が混乱します。
時間をかけてしまうと「なんとかして切符を切ってやろう」と別の違反に目を向けられてしまうおそれがあるので、どんなに腹が立っても「はい、ごくろうさま」とスマートにやり過ごすのが最善です。
レポート●鷹橋公宣
元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。