// 2024.12.13 add -start // 2024.12.13 add -end
バイクライフ

新旧『トップガン』に登場の新旧カワサキ ニンジャ、36年分の進化とは?「出力は115馬力から242馬力に!」

トム・クルーズが乗った2台のニンジャ「GPZ900R & H2」

1986年公開の大ヒット映画『トップガン』から36年、続編『トップガン・マーヴェリック』が上映され話題を集めている。バイクファンも熱い視線を送る作品だが、理由は前作で主人公マーヴェリック(トム・クルーズ演じるアメリカ海軍のパイロット)が基地でかっ飛ばしたGPZ900R(ニンジャ)が新作でも登場するニクい演出があるからだ。

ちなみに、1984年デビューのカワサキ製フラッグシップモデルの同車は、北米向けにNINJAの名称が付けられた初のモデル。以降もその流れは継承され、今に至る。
そして『トップガン・マーヴェリック』にも再び「カワサキ ニンジャ」が登場する。
ガレージに収められているかつての愛車・GPZ900R。それだけでなく、滑走路を最新スーパーバイク・ニンジャH2カーボンで疾走していくのだ(*)。USカワサキはこの作品のためにレストアを施したGPZ900Rを2台と、ニンジャH2カーボンを4台提供し、1986年当時と2022年時点でのカワサキの最強モデルが映画に花を添えた訳だが、さてその36年の間にバイクはどれほど進化したのだろう。

では、カワサキの新旧ニンジャの性能差はどれくらいあるのか、スペックを見比べてみよう。

*編集部註:映画公式の紹介では、マーヴェリックが乗るのはクローズドコース専用で灯火類やバックミラーなど保安部品も付いていない「H2R」となっている。一方、劇中に登場する車両は保安部品が付いているほか、ウイング形状などから公道走行可能なH2カーボンに見えるのだが……。H2カーボンをベースにマフラーなど一部にH2Rのパーツが使ったキメラ的存在なのかもしれない。

GPZ900R(A2 アメリカ仕様)

■カワサキ GPZ900R。写真は『トップガン』に登場した1985年型=A2のアメリカ仕様(エボニー×ファイヤークラッカーレッド)。映画が人気に拍車をかけ、ZX、ZZRなど後継のフラッグシップモデルが登場した後も、2003年型=A16までと長く販売された。

ニンジャH2カーボン(2021年型)

■2015年より海外向けに発売されたニンジャH2(クローズドコース用モデルH2Rも同時発売)。その後、アッパーカウル部をカーボン製としたH2カーボンを2017年に追加。また2019年型ではニンジャH2、同カーボンともにエンジン出力、ブレーキ性能向上が図られ、H2カーボンの国内販売を開始。価格は356万4000円と超弩級だった。『トップガン・マーヴェリック』に登場するモデルも2019年以降のカーボンだが、国内や欧州向けは新排出ガス規制への対応が施されず2021年型を最後に販売終了(2021年型は363万円)。一方、北米向けは2022年も継続販売されている模様だ。

ニンジャH2R(2021年型)

■クローズドコース専用のニンジャH2R。H2カーボン同様、2021年型を以て国内販売は終了され、価格は605万円。保安部品・灯火類以外に外観上で大きく異なるのは、カウルに装着されているウイングが大型となる点やエキゾーストシステムなど。

GPZ900R vs ニンジャH2カーボン

エンジン性能「908cc 115馬力から、過給器付き998cc 242馬力に!」

GPZ900R=水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク72.5×55mm 排気量908cc

ニンジャH2カーボン=水冷4サイクル並列4気筒DOHC4バルブ+遠心式スーパーチャージャー ボア・ストローク76×55mm 998cc

ストロークが同じ55mmとは意外な発見だったが、ボアはH2カーボンが3.5mm大きく、排気量は90cc増し。またニンジャH2は量産二輪車初のスーパーチャージャー搭載でも話題を集めたが、同車誕生の2015年当時、カワサキの航空宇宙カンパニーとガスタービン・機械カンパニー、技術開発本部の技術協力で開発されたパワーユニットは、既存エンジンへの後付けスーパーチャージャーではなく、エンジンと一体の「スーパーチャージドエンジン」を標榜して大きく宣伝された。

GPZ900R=最高出力115ps/9500rpm 最大トルク8.7kgm/8500rpm

ニンジャH2カーボン=最高出力231ps(ラムエア加圧時242ps)/1万1500rpm  最大トルク14.4kgm/1万1000rpm

■GPZ900Rのエンジン。新開発されたDOHC4バルブの水冷並列4気筒は、幅のコンパクト化と吸気のストレートポート化などを狙って左サイドカムチェーン方式を採用。

■ニンジャH2シリーズ専用の並列4気筒は、当初から機械駆動の遠心式過給器(スーパーチャージャー)と組み合わせる前提で開発されたのに由来し「スーパーチャージドエンジン」と命名されている。クランク回転を利用して駆動するタービンで空気を強制的に圧縮し吸気に使うことで、パワーを増大させるのがスーパーチャージャー。排気圧を使うターボのようなタイムラグがなく、低回転からパワー増大効果が得やすいのが特徴だ。

GPZ900Rは当時の世界最速250km/hを誇ったが、1999年にスズキ GSX1300Rハヤブサ(最高出力175ps/9800rpm)が300km/hを余裕で超えて以降、300km/hリミッター装着とそれ以上の速度目盛りを記さない方向へ各社が自主規制。
ニンジャH2も300km/h超の性能を持つが、リミッターがかかる仕組みになっている。なお、量産車を時代で大別するなら、200km/hの世界を現実に近づけたのがCB750フォア(1969年)で、以降も性能進化は続き、GPZ900R登場の80年代半ばには、大排気量スポーツでの200km/h超のスペックは当然となった。

ちなみにH2シリーズのクローズドコース専用バージョンH2Rは、最高出力310ps(ラムエア加圧時326ps)/14000rpmで、わずか26秒で400km/hに到達する記録を残している。モーターサイクルがこの領域まで性能を高められた要因には、車両の動力性能、車体性能はもちろん、タイヤや空力特性の進化も欠かせない。

車体面「車重は−10kg、サイズもかなりコンパクトに」

GPZ900R=全長2200×全幅750×全高1215 軸距1495 シート高780(各mm) 装備重量249kg キャスター29度 トレール114mm タイヤ F120/80V16 R130/80V18

ニンジャH2カーボン=全長2085×全幅770×全高1125 軸距1455 シート高825(各mm) 装備重量238kg キャスター24.5度 トレール103mm タイヤ F120/70ZR17 R200/55ZR17

両車の車体サイズの違いを、どう見るかは人それぞれだが、全長はコンパクトになり、キャスター角&トレール量は結構変わっている。1980年代のGPZ900Rは、特に超高速域での直進安定性に対応すべく、車体長とホイールベースは長めとし、キャスター角はある程度寝かしてトレール量を稼ぐ手法が取られた。
だが、量産車のテクノロジーも進化し、コンパクトな車体でキャスターを立てトレールを短めとし、コーナリングでの俊敏さを狙った上でも、高い直進安定性を確保できることが、ニンジャH2カーボンのスペックを見て分かる。

1980〜1990年代を経て、2000年を越え、2020年代に突入しながらバイクは年々進化してきたが、最も大きいのはフレーム、サスペンション、タイヤといった進化だろう。そして、これらの恩恵で今のスポーツモデルは成り立っているものの、人間様(乗り手)の方はどうなのか。

GPZ900R カワサキ
GPZ900R カワサキ

■GPZ900Rのフレーム。メインフレームはダイヤモンド形式でスチール製の丸パイプ、シートレールはアルミの角パイプ。その二つをステップホルダーに当たるアルミ製パーツで結合する構造。低振動エンジンゆえに成立した骨格だ。なお、ホイールは初期=A1からA6までがフロント16/リヤ18インチなのに対し、1990年型=A7以降はフロント17インチ化と、前後ホイール&タイヤのワイド化を実施。


■ニンジャH2Rのストリップとメインフレーム。過給機付きエンジンが、複雑な構造のフレームに支持されているのが分かるが、アルミツインスパーフレームでなく、スチールトレリスを採用したのは、熱をこもらせずエンジンの放熱性を高めたかったこと、そのために自由度の高いフレーム造形にしたかったなどの意図があるという。

「30年以上経てば」アラ還を前に、人間側の性能は徐々に退行する……

1

2
  1. 還暦からセカンドライフをスタートさせた『Rebel (レブル)1100 <DCT>』のオーナー

  2. 技術者たちが語る「Honda E-Clutch」。新しい技術に秘められた苦労と想いとは?

  3. Rebel 1100 T <DCT>で母と息子がナイトツーリング。共通して感じたのは乗りやすくて楽しさが伝わってくることだった

  4. CL500はストリートが楽しいバイク。ビギナーからベテランまでを満足させる万能マシンだ!

  5. 原付だから多くの人に愛された。『スーパーカブ50』の歴史を辿ってみる。

  6. CL250はセカンドバイクじゃない。この250ccは『メインの1台』になり得るバイクだ!

  7. ダックス125でボディサーフィンを楽しむ。バイクがあれば遊びはもっと楽しくなる。

  8. Rebel 1100〈DCT〉は旧車を乗り継いできたベテランをも満足させてしまうバイクだった

  9. 定年後のバイクライフをクロスカブ110で楽しむベテランライダー

  10. CL250とCL500はどっちがいい? CL500で800km走ってわかったこと【ホンダの道は1日にしてならず/Honda CL500 試乗インプレ・レビュー 前編】

  11. 【王道】今の時代は『スーパーカブ 110』こそがシリーズのスタンダードにしてオールマイティー!

  12. 新車と中古車、買うならどっち? バイクを『新車で買うこと』の知られざるメリットとは?

  13. ビッグネイキッドCB1300SFを20代ライダーが初体験

  14. どっちが好き? 空冷シングル『GB350』と『GB350S』の走りはどう違う?

  15. “スーパーカブ”シリーズって何機種あるの? 乗り味も違ったりするの!?

  16. 40代/50代からの大型バイク『デビュー&リターン』の最適解。 趣味にも『足るを知る』大人におすすめしたいのは……

  17. ダックス125が『原付二種バイクのメリット』の塊! いちばん安い2500円のプランで試してみて欲しいこと【次はどれ乗る?レンタルバイク相性診断/Dax125(2022)】

  18. GB350すごすぎっ!? 9000台以上も売れてるって!?

  19. “HAWK 11(ホーク 11)と『芦ノ湖スカイライン』を駆け抜ける

おすすめ記事

【いまどきライダーの秋冬スタイル】発売以来人気のモデルに今季は2色の新色登場──ALPINESTARS セクター v2 テックフーディー XT660Zの後継モデル、ヤマハ・テネレ700がついに日本上陸! 【NEWS】ホンダコレクションホールが 開館20周年イベントを開催

カテゴリー記事一覧

  1. GB350C ホンダ 足つき ライディングポジション