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70年代車「ホークII CB400T」のオーバーホール用ピストンセット
国内自動車メーカー、同じく二輪メーカーに純正部品としてピストンリングやバルブシートを納入している大手サプライヤー、日本ピストンリング。
そんな同社が7月末より、ホンダ ホークII CB400Tのオーバーホール用ピストンセットの受注販売を開始した。これはかなり異例なことである。
通常、ピストンリングの受注は最低1000本単位であり、これまで日本ピストンリングは個人向けの販売はしてはこなかった。
しかし、クラウドファウンディングという方法ではあるものの、12本〜個人レベルの受注を始めたのである。ホークIIのエンジンは並列2気筒なので、12本……最低6人集まればこの企画は成立する。いかにミニマムなロットであるのがわかるだろうか。

■1977年に登場したホンダ ホークII CB400T(写真は初期型)。漫画『東京リベンジャーズ』などの影響もあって、幅広い世代から注目を集めている旧車だ。OHC3バルブの空冷4ストローク並列2気筒エンジンは総排気量395ccで、ボアは70.5mmと当時としてはかなり大きなものだった。当時、教習車として用いられたので、乗ったことのあるベテランライダーも多いのではないだろうか。
ピストンはワイセコ製、ボア0.5mmプラスのオーバーサイズも設定
具体的な製品としてはピストンリングだけでなく、老舗メーカー「ワイセコ」のピストンとセットとなっており、ボアはスタンダードの70.5mmと、+0.5mmのオーバーサイズの2種を設定。2022年7月25日よりクラウドファウンディング「Makuake」で募集が開始となり、締切は8月30日まで。価格はどちらも7万7000円で、納品は2023年2月28日までに行われるという。

■日本ピストンリング製ピストンリング3本にワイセコ製ピストン(ピストンピン、Cクリップ含む)というセット。純正品との互換性を担保しつつ、いずれも現代の技術で作ったピストンリングとピストンなので、耐久性と信頼性は十分だという。
70.5mmスタンダードサイズ・ホンダホークIIピストンセット(Makuake)
+0.5mmオーバーサイズ・ホンダホークIIピストンセット(Makuake)
ピストンリングはエンジンをちゃんと動かすための必需品、だからこそ……
冒頭で述べたように、日本ピストンリングは何千、何万台と生産される新車用部品を製造している企業だ。一体なぜこのようなプロジェクトを始めたのだろうか。
企画担当者によれば「純正部品の供給が途絶えた旧車は維持に苦労が多いですが、中でもピストンリングの調達に困っているという声が聞こえてきたのです。エンジンは乗り物の心臓といえる存在、それがちゃんと動かなければ。メジャーな旧車ではリプロパーツが流通していることもあるものの、そうでない車種のオーナーさんたちはきっと必要としているに違いないと思ったのです」とのこと。
しかし、見込み生産はさすがに厳しい。
そこで、登録台数調査や企画担当者が当時バイクに触れた記憶などを基に、ホンダ ホークII CB400Tを含めた1970年代の4車種が候補として挙がった。そのうえで市場調査を行い、第一弾としてホークII CB400T用をクラウドファウンディングMakuakeで展開する運びになったという。
2022年7月25日の募集開始より、早速問い合わせも入っているそうだ。
ホークII CB400Tは「第一弾」ということで、他車種への展開もあるかもしれない。これからも快調に乗りたい旧車オーナーにとって、日本ピストンリングの取り組みは大きな朗報と言えるだろう。

■ちなみにこちらは長年使い込まれたホンダ ホークII CB400Tのピストン類。ピストン本体やピストンリングに腐食が見られるほか、ピストンピンは当たりがついてしまっている。
まとめ●モーサイ編集部 写真●八重洲出版/日本ピストンリング