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追記2022年5月7日・動画を補足しました。
レジャーバイクの祭典「モンキーミーティング」
ホンダが「レジャーバイク」と呼ぶカブ系エンジンのファンモデル。その原点といえるのが、今なおファンも多いモンキーだ。
当初は遊園地(多摩テック)用の乗り物として造られ、それをベースに輸出モデルが造られ、日本でも公道を走れるバージョンが登場し……というエピソードはあまりにも有名なのでここでは割愛。
知らなかった人は「多摩テック モンキー」などでググってみてね。
そんなモンキーファンが集う「モンキーミーティング」というイベントが年に1回開催されているのだが、新型コロナウイルスの影響により2020年、2021年は中止となってしまったものの、2022年4月に第13回が開催された。
モンキーミーティングにはモンキー以外のレジャーバイクで参加する人も少なくないのだが……
エンジンはカブ系だがイタリアンクラシックバイクのような……
一体コレは何ですの!? 元になったバイクが全くわからない謎のカスタムバイクを第13回モンキーミーティングで発見した。
左の水色のバイク、まさか誰もビジネスバイクであるベンリィCD50だと思わないだろう。もちろん筆者もベース車が何なの全くかわかりませんでした。
なんせ、本来ベンリィはバックボーンフレーム。なのにこの車両は独特なパイプフレームとなっているのだ。
車両を製作したオーナーの高村優平さん(52歳)によると、外装としてパイプを貼り付けてしたわけではなく、ちゃんとフレーム=骨格として機能しているのだという。というのも高村さんは伊豆大島在住で、潮風による腐食が激しく「ベンリィのフレームがサビて穴が空いちゃったんです、それを延命させる一環で……」と謙遜気味に仰るが、もはや補強や修復のレベルではないのは一目瞭然。
自宅の作業場でスチール製パイプを切っては溶接し、製作期間は1年ほどかかったとのこと。
イタリアのクラシックバイクにも見えるデザインだが、高村さんが昔から形が好きだったという「神社仏閣スタイル」のホンダ ドリームC70がモチーフとなっている。美しい淡いブルーのカラーリングは娘さんによるアイディアで、「女性ならではのセンスって凄くて、こんな鮮やかな色は自分では思いつかなかった」とのこと。
モンキーミーティングに参加するため本土へ運んできたのを機に、この車両は本土で暮らすその娘さんに託すそうだ(やはり島ではサビが心配だという)。ただ「造った本人は特徴をよくわかっているけど、他人が造ったカスタム車って乗るのが難しいから、慣れるまでそこがちょっと心配」とも。
走らせてみるとフレームで組まれた車体は「かなり硬い」らしい……。
「DAX-R」とカウルに描かれているが……
さて、そのベンリィCD50カスタムの隣にあるフルカウルスポーツバイクもまた凄い。DAXってロゴが描かれているのでもしやと思ったら、ベース車は本当にダックスだった。この車両を造ったのは、なんと高村さんのご子息、凪輝さん(18歳)。
「モンキーにはRがあるけど、もしダックスにもRがあったら」というコンセプトだそう。凪輝さんは本土の大学に進学し、この車両で通学するつもりだという。
かろうじてダックスのT字型フレームは確認できるが、お父上・優平さんの車両同様パイプを組んだフレームによる補強が。一方、液晶メーターやLEDヘッドライトなど現代的な装備も取り入れられている。
車体は小さく、部品も安いので「イジりやすい」と言われるカブ系モデル。そこには無限の可能性が広がっていたのである──なんて言葉ではまとめられない。この場合、高村親子の技術とセンスが凄すぎなのである。
レポート●上野茂岐 写真●上野茂岐/ホンダ