バイクライフ

転倒で破壊してしまったタンクを修復せねば!90年代隠れ名車「カワサキZZR600」リフレッシュ計画【第11話】

「痛恨のタンク損傷」からのZZR400用(!?)タンク調達、錆取り

空力を向上させてハンドリングへの悪影響を減らすべく、トップケース取付け位置の変更をレポートしましたが、その最後に起きた「夏の悲劇」。

夏の暑い最中、エンジンオイルのテストレポートのため、あえて渋滞区間に突入するなど熱ダレ実験を1日行なった後のことでした。
車庫に戻りセンタースタンドをかけて記録用のメモを取った後、スタンドを外してZZR600をしまおうと思ったんです。そうしたら軽い熱中症なのかクラっとしてしまい、ZZR600を自分の反対側にある車庫の支柱に倒しちゃったんですよ。

何十年ぶりかの痛恨のミスですが、その時期右肩を傷めていて力が入らず、車体を立て直せませんでした。そうして燃料タンクはボッコリと凹み……(涙)。ショックは大きかったんですが、いつまでも凹んでいたって仕方ありません。

考えてみれば、今現在装着しているタンクは錆が相当多かったし、残っている肉厚も怪しいところ。「あと何年使えるか分からないタンクだし、ぼちぼち取り替えなさいという一種の啓示かも!?」とテキトーにプラス思考に切り替え、数日後にはネットオークションで格安の「ZZR400用」というタンクを落札。お値段なんと2000円!

オークションに出品されていた「ZZR400用」という中古タンクを入手。でも裏側を見たら実はZZR600用でした。中の錆は軽症だったので、これを今後のメインタンク(?)に決定。

「錆はそれほど無い」という商品説明があったものの、届いてみれば予想どおり軽く錆びていました。それでも凹んだタンクよりは全然少ないレベル。早速、錆取りに定評ある榮技研「花咲かG・タンククリーナー」をスタンバイ。入手したZZR400用……もといZZR600用黒タンクの錆除去作業に取り掛かりました。

で、タンクをクリーナーに漬け込んでいる間、キャブレターも分解。冒頭で書いたオイル実験の際に、燃費性能が気になったんです。
テストを行っていたのはアッシュオイル「FSE MOTO-SPEC」というもので、レーシングユースにも対応できる高性能オイル。注入してみると気持ちいい吹け上がりで、調子づいてアクセルを開け気味に走ってしまった……というのはあるものの、16km/Lと正直あまり褒められた数字ではないのが気になっていて(アッシュオイル交換前、交換後とも16km/L台であるのは変わらず、大きな差はなかった)。

カウルなど車体の上物を分解してタンクを外し、ガソリンも抜いて点検にかかりました。
今まで使ってきたタンク(凹ませたヤツ)。以前に相当しつこく錆を落としたものの、まだこんな錆が出てくる。新品状態から比べると、タンクの肉厚も薄くなっているんだろうなぁ……と。

そこで、以前交換した140番のメインジェットを元の135番に戻して、再度燃費を試してみようと思ったんです。燃料タンクを外したことだし、その下にあるキャブにもアクセスしやすいのでこの機会に、と。

どうせ走れないのだからと、その他の作業も進めました。
車載工具がめっちゃ汚かったのと(中古で車両を買ったときに搭載されていたもの)、スパナの先端が広がり気味だったのも思い出し、それらのリフレッシュや修正に着手!仕上げのユニクロメッキの再処理は、東京都葛飾区にあるクルマ・バイク部品のメッキ加工を得意とする神谷電化工業さんに依頼しました。

タンク処理の待ち時間もせっせと有効活用。
同じく「花咲かG」シリーズの錆取り剤「ラストリムーバー」を使って、旋盤やボール盤の固定ツール、万力のバイス部分といった工作ツール類の錆落としをば。普段は錆を削り落としていたのですが、あまりに削り過ぎると平行度や精度に影響があるかも……と気になっていたのでした。

せっかくの機会。キャブの分解掃除をして、メインジェットを140番から135番に戻す作業に着手。
新品で入手した140番ですが、アッシュのオイルがあまりに調子良く、回し過ぎて燃費を落としてしまったのか、メインジェットによる影響か、番手を戻して燃費の再確認をしてみたかったのです。
135番のメインジェットに変更。欧州仕様は135番が標準指定だったと思うのと、140番だとチョークを全く引かずにいつもエンジンがかかっていたため、元々「燃調濃かったんじゃね?」疑惑もあり。
「花咲かG・タンククリーナー」同様に愛用している錆取り剤「花咲かG・ラストリムーバー(鉄・ステンレス用)」。短時間で強烈に錆を置換してくれます。
車載工具って4輪なら別に社外の工具でもいいけれど、収納部に制約のあるバイクだとそうもいきません。しかし、これだけ表面の傷んだ車載工具ってどういう使い方・保管状況だったのでしょう? 開き気味だったレンチは大型の万力で修正して、メッキ工場に再生を依頼。
当たり面に傷みの目立つ工具はポリッシャーで軽く研磨して、ユニクロメッキで再処理。純正は黒色だった6角レンチも同様にしたので、純正の新品よりも錆に強くなったかも? バイクの外観からは全くわからない、シート下に隠れた自己満足ですが……。
「花咲かG・ラストリムーバー」で処理後のボール盤用のバイス。赤錆だらけだった部分に筆で何度か塗り、しばらくすると金属の地肌がすっきり表出。浮いた錆をウエスで拭き取り、あとは保護用にオイルを塗布して軽く磨けばOK!

ブレーキキャリパーのピストンの作動を揃える

TOKICO製ブレーキキャリパーは、車両から外して整備に取り掛かりました。キャリパー自体も外せる部品を外し、洗剤で丸洗い&拭き取りしたら、翌日まで乾燥。

一方、タンクを凹ませてしまう前から取り掛かっていた作業もありました。純正ブレーキキャリパーのピストン同調の見直しで、これはかなりやった分の効果がありました。
ZZR600純正であるTOKICOのブレーキキャリパーは、対向4ポットのピストンが作動しますが、効きに文句はないし、今でも通用する性能のいいブレーキだと個人的に思っています。

でもそれなりに年季の入った「90年代車」、油圧がかかった際にキャリパーのピストン4個がちゃんと同時に出てるんだろうかとふと気になり、確認してみたのです。
キャリパーをフォークから外してブレーキパッドも外し、ブレーキレバーを軽く数回握りつつピストンの出具合を見てみると「全然同時じゃない……」。サンデーメカニックなので「完璧に」とは言わないにせよ、同時に近い感じで4つのピストンが出てローターを挟み込んだほうが、そりゃ気持ちよくブレーキがかけられるはず。というわけで、整備に取り掛かりました。

キャリパーを丸洗いしてから乾燥させ、ピストンのグリスアップと擦り合わせをしつこくやってみました。オイルシール類の傷みやピストンの傷も、全周よく観察してみました。そうして各ピストンが滑らかに往復するようになると、油圧をかけた時の作動タイミングが大体合ってくるようになりました。
これを左右キャリパーともに、気長にやってみました。何年も手入れがされていなかったようで、ピストンの縁には汚れが固まっていましたが、これもキレイに除去。キャリパー全体の作動がスムーズで、いい感じになりました。

蓋を開けてみると、4つの対向ピストンは下側のほうがだいぶ先に作動していました。ピストンは汚れの輪が少し固まっていたし、ピストンのロールバックにもきっと影響していたでしょう。
ピストン周囲の微妙に硬い汚れを磨き落とし、円周方向で研磨。良質なラバーグリスを使ってピストンの動きを全部見直した後は、いい感じで同調したみたいです。4ポットでも丁寧にやると時間がかかるので、6ポット車だともっと大変かもしれませんね。

中古黒タンクを、現在の愛車の純正色に仕上げたい

ところで、新たに入手した「状態の良い中古黒タンク」は、純正塗装の再現で評判のいい旧知のプロにお願いしてみたいと考えました。
一方凹んだ方は相当ベッコリいっちゃってますが、最悪の場合はパテだらけでもいいので、サーキット走行などの予備用に自家作業で復元できればいいかなと。

さて、「中古黒タンク」の塗装を依頼する旧知のプロというのが、埼玉県寄居町にあるドリーム商會さんで、かれこれ20年以上も前に2輪整備専門誌の撮影でもご協力いただいた老舗です。
腕が確かなのはその当時から存じ上げていましたが、取材した時ことはもう忘れられてるかもなと思いつつ連絡を取ると……当時表紙撮影をしたことも覚えてくださっていて「中古の黒タンクから紫系純正色への再現は十分できますよ」とのお返事。凹んだ紫のタンクを見本に付けて一緒に預けてもらえればいいですよ、という話になりました。

純正色再生ペイントのベテラン「ドリーム商會」の小島明夫社長に相談に乗ってもらうため、約20年ぶりに工房を訪問。工房には個人からのもの以外に、有名ショップからの依頼なども沢山あって繁忙期で、作業着手タイミングは要相談とすることに。

そこで「色見本」とすべき部分は残しつつ、凹みタンクの暫定修復を先に開始しました。とりあえず走らせるのは置いておいて作業に集中しているせいか、凹んだ部分の修復は意外なほどの早さで進行。我ながら、失敗を案外楽しんでるフシがあります(笑)。

レポート&写真●小見哲彦 編集●上野茂岐

取材協力

神谷電化工業
https://kamiyamekki.com/

 

榮技研(「花咲かG」シリーズ)

https://www.hanasaka-g.com/

 

ドリーム商會

http://www.dream-shoukai.info/

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