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利用車の97%がワンストップ型ETCの今後の導入に期待、バイクでも利用可能
今や高速道路を使ってツーリングに出かけるときには欠かせないのがETC。国土交通省の調べによると、2021年7月現在、全国の高速道路でETCの利用率は93.3%、首都高速では96%にも上るという。しかし、その一方で地方自治体が管理・運営している有料道路では、ETCを設置・運営するコストの負担が大きく、導入が進んでいない。
高速道路はETCによってノンストップで料金所ゲートを通過できても、地方のほとんどの有料道路では、料金所ゲートでいったん止まり、サイフから小銭をまさぐり、収受員や料金徴収機に投げ込でいるというのが現状だ。ライダーの立場からすると、こうした地方の有料道路でもETCが使えたら、と感じているのではないだろうか。
従来のETCのシステムは、利用車をノンストップで通過させるために、瞬時に車両の検知から決済までを行う装置を料金所毎に設置しており、その費用は10億円程度かかるとされる。このコストが地方の有料道路の料金収入では見合わないために、導入が進まないという背景があった。そこで、ETCレーンで一時停止させることで時間を確保し、その時間を利用してネットワーク上のシステムで決済を行うようにしたのが「ネットワーク型ETC」技術だ。

これまで利用車をノンストップで通過させるために必要だった装置をネットワーク側に集約させる委ねることでコストを削減。利用者側はこのワンストップ型ETCのために特別な機器を用意したりする必要はなく、従来のETC車載器を使ってゲートに進入し、バーの手前でいったん停止して、ゲートが開いたら進むという形で利用する。このスタイルは全国の高速道路に設置されている、スマートETCインターチェンジの利用方法と同じだとイメージすればいい。

神奈川県道路公社では横須賀市の本町山中有料道路に、有料道路として日本で初めてこのワンストップ型ETCを2020年3月に導入。2カ月間にわたってネットワーク型キャッシュレス決済サービスの社会実験を、クレジットカードのダイナースクラブ会員を対象に行った。実験終了後のアンケートでは利用者の95%が「スムーズに感じた」「ややスムーズに感じた」としており、97%の利用者が、今後、未設置の有料道路でもワンストップ型ETCを「導入した方がいい」「できれば導入した方がいい」と前向きに答えている。
2021年10月〜12月にかけて「ワンストップ型ETC」導入にむけた第2回社会実験を実施、参加者を募集中
こうした結果を踏まえて神奈川県道路公社では2021年10月22日(金)から12月20日(月)にかけて、第2階の社会実験を行う。今回は「ジェーシービー(JCB)」「トヨタファイナンス」「三井住友トラストクラブ」「三菱UFJニコス」の4社が参画しており、各社のカード会社の会員それぞれ先着200名(合計800名)が対象となっている。モニターの募集は9月15日から始まっており(三菱UFJニコスのみ11月上旬から)、社会実験期間中に本町山中有料道路を1回以上通行し、アンケートに協力すると、「QUOカードPay」1000円分相当がプレゼントされる。


ETCは高速道路や有料道路の料金所で、料金収受員に現金やクレジットカードなどを受け渡して料金を支払うという手間がなくなるのが最大のメリット。特にバイクはクルマと違って停車時の不安定な状態で、サイフなどをライディングウェアのポケットやバックから取り出し、料金収受員にそれを渡して、お釣りやレシートを受け取り、再びきちんとしまう、という一連の動作を丁寧に行わないといけないのは、ライダーなら誰しもがわずらわしく感じているのではないだろうか。
うっかり、お金やカードを路上に落としてしまうと、それを拾うのにバイクから降りなければならなかったり、受け取ったレシートやお釣りをきちんとポケットやバッグにしまわないと、走り出した途端に落っことしてしまうなど、とにかく手間が増えてしまう。ETCを使えばこうしたトラブルも当然防げるわけだ。
新型コロナウイルス感染症対策としての非接触決済
近年は全国の高速道路の料金所にETCが設置されていて、高速道路を利用するなかではETCが使えないということもまずないが、地方の有料道路の料金所では「手払い」がほとんど。ETCに慣れてしまうと、改めて料金を支払う手続きの煩わしさを痛感するものだ。さらに、昨年から新型コロナウイルス感染症の拡大で、一般的には人との接触機会をなるべく少なくするという向きが強い。料金所をノンストップで通過できるETCは、こうした人との接触を避けるという点で、感染予防にも役立つという見方もある。
ETCは元来、高速道路や有料道路の決済だけでなく、有料駐車場の非接触決済や、ファーストフードのドライブスルーなどでの利用が想定されているシステムでもある。昨年来のコロナウイルスに対する予防として、「非接触」はひとつのキーワードになっている。ワンストップ型ETCは、今回の本町山中有料道路のような有料道路に限らず、今後こうしたさまざまな分野で使えるようになると、決して安くはないETC車載器のメリットも膨らむというものだ。
レポート●八百山ゆーすけ 写真●日立製作所 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実