バイクライフ

「バイクによるあおり運転」どんなケースが罪になる? クルマの場合と罪状は違う?弁護士さんに聞いてみた

後方や左右から車間距離を詰めたり、意図的に急停止して後方車両に迷惑をかけたりする「あおり運転」。
昨今あおり運転による事故・事件の報道が増えているが、その中にはクルマによるものに限らず、バイクによるあおり運転も含まれている。

2020年11月、京都府京都市でバイクに乗っていた男性(46歳)が後続車に対して急停止を繰り返したとして、道交法違反の疑いで逮捕されたほか、2021年2月には神奈川県大和市の東名高速道路にて大型トラックの走行を妨害したとして、道交法違反の疑いでスクーターに乗っていた男性(44歳)が逮捕された事例がある。

そこで当記事では、どのようなケースでバイクによるあおり運転となるのか、そしてどんな罪が問われるのかなどについて、刑事事件や交通事故に詳しい坂口 靖弁護士に話を聞いてみた。


運転妨害罪(あおり運転)はバイクとクルマを区別していない

後ろから接近して走り続けるあおり運転の例(写真はイメージ)。

──どのようなケースがバイクによる「あおり運転」となるのでしょうか?

いわゆる「あおり運転」をした場合、「運転妨害罪」(道路交通法117条の2の6号又は117条の2の2の11号)が成立します。

妨害運転の種類としては、通行区分違反、急ブレーキの禁止違反、車間距離の保持違反、進路変更の禁止違反、追い越しの方法違反、車両等の灯火違反、警音器の使用違反、安全運転の義務違反、最低速度違反、停車及び駐車違反等の類型が規定されており、いわゆるあおり運転で想定される行為類型について処罰の対象としています。

妨害運転により高速道路上等で車両を停止させたりする等、「著しい交通の危険を生じさせた場合」には、「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」となり、そこまでの危険を生じさせていない場合には「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。

そして、運転妨害罪はバイクとクルマを区別していませんので、バイクもクルマも基本的に同じ判断基準で運転妨害罪の該当性の有無は評価判断されます。
運転妨害罪は「他の車両等の通行を妨害する目的がある」ということが要件となっています。
この目的が認められなければ、運転妨害罪は成立しません。

運転妨害罪にある目的というのは、当事者の心の中で判断するものですから目には見えません。結局は、外形的な行動から「他の車両等の通行を妨害する目的」の存否が判断されます。

したがって、「他の車両等の通行を妨害する目的」は、同じような妨害行為を繰り返し実施している(例:急停止を繰り返している)、継続的に実施している等の事情(例:長時間車間距離を詰めている)や、妨害車両の運転手の言動等(例:「この野郎!」と叫んでいる)から外形的、客観的に判断されると考えられます。

たとえば、1回だけ急ブレーキをしてしまった等の事情に留まるような場合では、この目的があるか否かは判断できない場合が多いと考えられますので、運転妨害罪の責任を問われる可能性は極めて低いでしょう。

──バイクによるあおり運転で課せられる罪は、クルマによるあおり運転と違いがあるのでしょうか?

法律ではバイクとクルマを特に区別していませんので、特にバイクだからどうこうということはないと思われます。
しかし、バイクであおり運転をすることと、クルマであおり運転をすることの危険性については、(車両の大きさなど)本来的に差があるようにも考えられますので、基本的にはクルマよりもバイクでのあおり運転の方が多少刑罰が軽くなる可能性はあると思われます。

あおり運転で相手が死亡した場合、初犯でも長期実刑となる可能性がある

──バイク、クルマ問わずあおり運転をした場合は、どのような実刑が下されることになるのでしょうか?

基本的には運転行為の内容(執拗さなど)から、刑罰は決まることとなりますが、初犯であれば、いきなり刑務所に入るという可能性は低いと考えられます。

もっとも、あおり運転行為を実行しその結果、相手が死傷してしまったような場合には別途、危険運転致死傷罪が成立する可能性があります。
したがって、特に人が死亡してしまったような場合には、この危険運転致死傷罪によって、初犯でも長期実刑となってしまう可能性はあります。

──しかし本人の意思ではなく、バイクが故障などで急停止するケースも考えられますが、そういった場合も罪に問われてしまうのでしょうか?

あくまで、妨害運転罪は故意に行われた場合を処罰するものです。
したがって、故意に急停車を繰り返した等の事情がない場合であれば、処罰されることはありません。

また、前述のように「他の車両等の通行を妨害する目的」も必要となるため、1回の急停車に過ぎない場合は、通常はこの目的も認められないと考えられます。 
もっとも、故意では無かったことや上記の目的が無かったという事実を証明するためにも、バイクであってもドライブレコーダーを設置しておくことが、自身を守るためには望ましいと考えられます。

あおり運転被害に遭うことを想定してドライブレコーダーは設置するべし

あおり運転被害にあった場合、ドライブレコーダーなどで運転状況を明らかにすること(写真はイメージ)。

──あおり運転の被害者になった場合、ドラレコがなくても被害を受けた証明はできますか?

ドライブレコーダーが無い場合であっても、目撃者の存在や路面に面したコンビニ等の店舗の防犯カメラ映像から、あおり運転行為を証明することは可能であると考えられます。

しかし、死亡事故にまで至らないような場合、協力してくれる目撃者が現れるということもあまりありませんし、必ずしもコンビニ等であるとも限りませんので「あおり運転」だと証明されるケースはかなり少ないと思われます。

したがって、自分の安全を守るという観点からすると、やはりドライブレコーダーは設置した方がよろしいのではないかと思われます。

──実際にあおり運転被害に遭った場合、私たちはどのような対処を取ったほうがいいのでしょうか?

やはりドライブレコーダーを搭載し、実際の運転状況を客観的に明らかにできるようにしておくことが極めて重要です。
またバイクに乗っている場合、死亡事故に至ってしまう危険性もあるため、できるだけ冷静に運転をし、危険を回避する行動(例:クルマが進入できないような狭い道に逃げる)を取ることも重要かと思われます。

なお、あおり運転をした相手から暴力被害を受けることも考えられます。
停車した際には、直ちに110番通報をすることや周辺の方に助けを求めること等も、さらなる暴力被害回避のためには重要かと思われます。

監修●坂口 靖 まとめ●モーサイ編集部・小泉元暉

プロフィール

■坂口 靖(さかぐち やすし)

大学卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」などのラジオ番組制作業務に従事。28歳のとき弁護士を目指し、3年の期間を経て旧司法試験に合格。
1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当する。
以後、弁護士としてさまざまな刑事事件に携わり、YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」でも活動中。

事務所名:佐野総合法律事務所

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