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交通取り締まりは「未然に防ぐため」ではなく「違反行為を探して検挙するため」?
クルマやバイクで運転中に「なんでそんな所に警察官がいるの?!」という運転者からすれば死角ともいえる場所で、交通違反の取り締まりをしている警察官の様子を一度は見たことはないだろうか?
たとえば「右折禁止」の標識がある道路を曲がってしまい、交通違反をしてしまった人がいる。よく見てみると、警察官は右折禁止エリア周辺にいるかと思えば、運転者からも見えない位置で検挙していたそうだ。
運転者に向かって警察官は「交通ルールは守りましょう。危ないですからね」と言った。
警察官も隅っこにいるのではなく、右折禁止エリア付近で堂々と注意喚起をすればいいのに……。
そう思った運転者は「なぜここに隠れているのか?」と疑問をぶつけたところ警察官から「私は地域課なので、このあたりの住民からここを曲がる危ないクルマがいると苦情を受けている」という的はずれな回答が返ってきた。
なぜ警察官たちは、パトカーや白バイなどで巡回をし、運転者からも視認できる位置で検挙しないのだろうか。
そんな警察官による理不尽すぎる交通違反について元白バイ隊員が語っていく。
私は中学生のとき、家族同然に飼っていた最愛の犬を交通事故で亡くし、そのとき交通事故削減に貢献できる警察官になろうと決意しました。
そして念願の白バイ隊員となりましたが、交通取り締まりを行っていくうえで疑問を抱くようになりました。自分たちがやっている取り締まりが交通事故削減につながるのか、私がやりたかったのはこんなことじゃないと……!
ですが、たった一人の巡査が組織の方針に声を上げたところで何も変わらない。聞く耳さえ持ってもらえない。本当に失望しました。
その理由は、交通事故を減らそうというのは建前で、評価されるために検挙の数を増やそうとし、それを煽る上司がいること。だから現場の警察官は数を稼ぐことばかりに精を出すからです。
たとえば、信号無視をする人が多い交差点で信号無視をした車両を待ち伏せしたり、居酒屋から出てくる車両を追跡したり……。
「未然に防ごう」というより、そういった「違反行為を探して検挙しよう」という姿勢が強いのです。
本当に交通事故の削減を目指すのであれば、白バイやパトカーが走っている姿を見せて、堂々とアナウンスするのが効果的なのに、あえて「やらせて捕まえる」といったスタンスが今でも続いているように見えます。
飲酒運転を無くしたいなら、居酒屋近くで張り込みをするのではなく……
通勤ラッシュ時間帯のバスレーン規制では、レンタカーを運転する観光客にはわかりづらい標識などがあり、普段その時間帯に運転しない人からすると悪気がないとしか言えない状況でも警察側は容赦しない。
たしかに「知らなかった」では済まされないこともあるし、事故が起きてからでは遅いという言い分もわかるけど、「人間味がないと感じる取り締まりの仕方」を多く見てきたし、強要されてきた。
こんな光景ばかり見てきたから、軽微な違反者が「もっと悪質な交通違反を捕まえろ!」と言いたくなる気持ちはよくわかります。
本当に飲酒運転をなくしたいなら、居酒屋で張り込みをするのではなく、居酒屋を出てクルマに乗ろうとする人に飲酒の有無を確認する、居酒屋周辺をパトロールした方が効果的です。
また信号無視や一時不停止をなくしたい場合は、交差点付近に白バイやパトカーを配置し、警察官が近くにいることを周知させるやり方がいいに決まっています。
高速道路における速度超過を減らすためには、覆面パトカーで違反者を探すよりもパトカーが走っている姿を見せることの方が何倍もいいと思います。
現場の警察官が実行に移さなければ意味がない
現場の警察官は頑張っています。それを否定したり、非難したりするつもりはありません。
ですが、組織の方針でこういった理不尽なことをしている限り、本当の意味での交通違反や交通事故の削減にはつながらないと私は思います。なぜなら、業務に励んでいる警察官たちが頑張る方向性を間違えているからです。
「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」という刑事ドラマのセリフがありますが、幹部がいくら頭を使うより、現場の警察官が実行に移さなければ意味がないということに早く気づいてほしい、と現役時代から思っていました。
そうはいっても知識が増え、経験を積み、階級が上がっても勇気ある発言をする人はいません。
余談にはなりますが、これから先は交通違反に関してだけではなく、組織の根本を変えていく時代なのではないかと元白バイ隊員として感じました。
レポート●宅島 奈津子 編集●モーサイ編集部・小泉元暉
■宅島 奈津子(たくしま なつこ)
反抗期・不良行為専門育児アドバイザー、青少年未来育成コーチ、元白バイ隊員。
大学卒業後、沖縄県警察にて交番勤務を経て、交通機動隊白バイ隊に配属。以降、少年課、刑事課等を経て、1000名以上の子どもたちの補導に関わる業務に就く。
現在はコーチングスキル、カウンセリングスキルを身につけ、元警察官・白バイ隊員による非行、反抗期、不良行為に悩む親御さんのサポートを行っている。
事務所名:株式会社 アーティスト.FIVE