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「もしも出先でヘルメットを盗難されたら、自宅までどうやって帰るのだろう」バイクに乗っていると、こうした疑問も浮かぶのではないでしょうか。そもそもヘルメット窃盗犯は、なぜ人が使った中古のヘルメットを狙うのでしょうか。理解に苦しみますよね。
そこで今回の記事では、窃盗犯がヘルメットを狙う理由や、出先でヘルメットが盗難されたときの対処法、被害者が自力でヘルメットを取り返した事例などをご紹介します。
窃盗犯が新品ではなく中古のヘルメットを狙う理由
窃盗犯が新品ではなく中古のヘルメットを狙うのは「盗みやすく確実に売れる」というのが、大きな理由です。実は近年、窃盗件数自体は減少していると同時に検挙率は増加しています。
窃盗件数が減少し、検挙数が増加した背景としては、防犯カメラの普及や高画質化があります。2020年2月に朝日新聞デジタルが行った調査によると、2019年の窃盗事件において、容疑者特定に至った手がかりは、約10件に1件が防犯カメラの画像でした。(朝日新聞デジタル)

このような時代の流れの中で、窃盗犯がバイク用品販売店を狙うのは現実的ではありません。ヘルメットは大きくて持ち出す際に目立つうえ、大型の用品店にはほぼ間違いなく顔を認識できる程度の画質を持つ防犯カメラが設置されているからです。
一方で、個人が所有しているヘルメットは駐車場などでの管理が甘いことも多く、窃盗犯としては手の届きやすい標的なのです。
試しに首都圏の人気ショッピングエリア・東京都世田谷区二子玉川駅近くの商業施設に併設されているバイク駐車場に停めてあった全バイク11台について、ライダーが車体を離れている際にヘルメットをどのように管理しているかを確認してみました。

結果、最も多いのは「バイクのミラー部分などにヘルメットを引っ掛けただけ」の5台、ついで「ヘルメットロックにホールドしている」の3台、残りが「ヘルメットが見当たらない(ライダーが持ち歩いているか、シート下などに収納している)」の1台、「ヘルメットが複数あり、ヘルメット同士をあごひもでつないでいる」の1台、「ヘルメットをバイクの隣の地面においている」の1台でした。
もちろん、実際に触ってみたわけではないので、もしかすると防犯ブザーの設置などの対策がなされていたものもあるかもしれませんが、半数以上のヘルメットが簡単に持ち去れそうに思えました。
これでは、素人でも時間や手間をかけず簡単に盗み出すことが可能です。
また、盗難の難易度以外にも窃盗犯がヘルメットを狙う理由として、ヘルメットの中古価値が高いことが挙げられます。
中でも「アライ」や「SHOEI」などの有名ブランドの現行モデルは、中古品でもオークションやフリマアプリで3~7万円の価格がつけられています。
簡単に盗めて売ろうと思えば高く売れるので、個人のヘルメットは窃盗犯に狙われやすいのです。
出先でヘルメットが盗まれたらどうすればいい?
ツーリング中など、出先でヘルメットを盗まれた際にはどうすればよいのでしょうか。盗難の被害にあったからと言ってヘルメットを被らずにバイクの運転をするのは交通法規違反となり、当然取締りの対象になります。ヘルメットなしでバイクを運転する所謂「ノーヘル」で取締を受けた場合、乗車用ヘルメット着用義務違反として違反点数が1点加点されます(違反金は0円となっています)。
ヘルメットを盗まれたらまず、警察に通報しましょう。
すぐに警察に通報する理由として、時間が経過するほど犯人の特定が困難になるからというのももちろんありますが、事情を説明することでおまわりさんがヘルメットの調達に協力してくれる可能性もあります。
たとえば、筆者の知人がヘルメットを盗難されて通報した際には、パトカーでバイク用品店へ連れていってもらえたそうです。
さらにSNSでは、ヘルメットの盗難に遭って通報したところ、駆けつけたおまわりさんが原付き白バイ用のヘルメットを持参して貸し出してくれたという報告もありました。

しかし警視庁の広報課によると、ヘルメットを盗難されたライダーへの対応は細かく決まっているわけではなく、現場に任されているとのこと。そのため、警察官から前述のような協力が得られるかどうかは場合によると言えそうです。最悪の場合には、バイクを押して帰るかタクシーなどを利用して最寄りの用品店へ行き、ヘルメットを購入するしかありません。
ヘルメットを盗まれないようにするには……
ヘルメットを盗難から守るためにはどうすれば良いのでしょうか。前提として、トップケースやシート下収納があるなら、ケース内に収納しましょう。慣れた窃盗犯は、盗難したヘルメットを高く転売するため、必ずヘルメットのメーカーや年式、外観を確認してから盗難するといいます。ヘルメットをケース内に入れてしまうことで、外から見えなくなるため、盗まれるリスクは大幅に低下します。
ケースがない場合でも、ヘルメットはヘルメット袋に入れたり布をかけたりして、外から見えないようにしておくと盗難抑止効果が期待できます。
ケースのないバイクの場合、ヘルメットロックは防犯対策の基本です。
車両にロックが標準装備されていなければ、アフターパーツのヘルメットロックを購入しましょう。窃盗犯は音を嫌うので、無理に開けるとアラームが鳴る機能の付いたものがおすすめです。
しかし、ヘルメットロックも万全の策とは言えません。慣れたヘルメット窃盗犯は、ハサミなどであごひもを切断して盗んでいくからです。この対策のためには、ヘルメットロックにあごひもを掛けるのではなく、D環などの金属パーツを掛けるようにしましょう。

また、盗難被害に遭わないためには駐車場選びも重要です。出先ではできるだけ自分の目が届く場所や、店内の窓から見える場所、監視カメラに映る場所に駐車しましょう。
ちょっとした用事なら、わざわざヘルメットロックをかけるのは面倒……と思うかもしれません。
そんなときは、ヘルメットを手に持って入店しましょう。結局のところ、これが唯一にして最強の盗難防止対策と言えるのではないでしょうか。
盗まれたヘルメットを自力で取り返したというレアなケースも
「盗まれたヘルメットを自力で取り返した」というレアなケースを、2件ご紹介します。
1件目は、Twitterユーザーの「げんた(@genta_s1krr)」さんです。
2020年6月、げんたさんのご友人2人のヘルメットが盗難されてしまいます。しかし、付近をうろついていた怪しい車のナンバーを記憶していたので、げんたさん達は全員で協力して周辺を探し回り、犯人の確保に成功しました。
犯人は未成年8人ぐらいのグループで、車の中を見せるように促したのですが応じず。警察が来る寸前になって観念したのか、盗んだヘルメットを出してきたのだそうです。
盗まれたヘルメットはSHOEIのX-Fourteenというヘルメットで、定価6万6000円〜8万3600円もする高価なものでした。
Twitterで話題になった投稿でしたが、発見現場のコンビニは筆者も利用したことがあるだけに驚いた記憶があります。
犯人を自力で確保したことで、盗難による経済的な被害は免れたものの、被害に遭ったご友人は朝まで事情聴取を受けたとのことで、かなりの時間と労力を取られてしまいました。この件を受けて、げんたさんも「みんなヘルメットロックしような」とTwitterで呼びかけています。
2件目の例は、同じくTwitterユーザーの「た か は し(@joji_saaan)」さんです。
2019年5月ごろ、た か は しさんは購入して間もないアライのRAPIDE-NEOというヘルメットを盗まれてしまいます。た か は しさんの場合には、ヘルメットをしっかりとホルダーに保管していたにもかかわらず、ホルダーの金属部分を切断して盗まれてしまったとのことです。手慣れた盗難犯の犯行と考えられます。


しかし盗難被害にあった後、た か は しさんは「ヤフオク」で盗まれたヘルメットが出品されていることを発見。すぐに出品している業者さんに事情を説明して、出品停止の対応を取ってもらったのです。
警察の調査の結果、た か は しさん本人のものである裏付けが取れたため、1ヵ月ほどで返ってきたようです。
ヘルメットを盗難から守るのは、最終的には自分自身です。楽しいバイクライフを送るために、普段から防犯意識を高めておきたいですね。
レポート/図表作成●近藤 写真●八重洲出版/げんた/た か は し 編集●モーサイ編集部・中牟田歩実