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初のインチネジ車、分解しやすい箇所から「学習」していこう
旧友・三平さんから譲り受けた、1980年式ショベルヘッドのローライダー。
先の1回目で錆(さび)と緑青(ろくしょう)にまみれたシビレる状況をご覧いただきましたね。外観はけっこう錆の浸食・腐食が進んでいたものの「過去に行った数多くの廃車寸前車体ベースからのレーサー製作を思えば、今さら驚く事もなかろう!」と、強制的な自己暗示をかけて進行していく所存です。
そして、どこから手をつけるのが良いか? と検討。どこもかしこもいずれは手を入れなくちゃならないだろうし、ともかく簡単に外せそうな部分や、シートに座って目に入るところからやってみようと考え、タンデムステップの取付け部材やチェーンケース、真っ赤に錆びたハンドル&ハンドルポストの表面から取掛かることにします。
機能的な意味で、車体を押すと虫歯で抜けそうな歯のようにグラつくハンドルポストは、早めに何とかしたいところです。取回しがしにくいし、何だかハンドルとアッパーステムの平行もだいぶ怪しい。何しろ、こういうのはちゃんと平行でないと気分が悪いです。どんな失敗をしでかすか分かりませんが、そのあたりをほぼ同時期に始めてみました。

■簡単に外せそうな部品その1は、バックミラー。ステーの赤錆を落とし、ミラーの裏側は真ちゅうのワイヤーブラシで軽く研磨してみました。これだけでもだいぶヨロシイ。

■手持ちの在庫、モデルガンの塗装に向くという缶スプレーを試してみよう♪

■左側はスプレーが少し乾いたところで、右側は塗った直後。耐久性はそれなりでしょうが、見た感じは悪くないですね。

■2本のボルトだけで固定されているチェーンケースを外して、全体を磨いてみることに。

■長年の放置にも関わらず、蓄積していたチェーンオイルのおかげか、チェーンケースの裏面には錆はナシ。

■定番のケミカル「さびとりつや之助」でピンホール錆を落としてみます。細かい錆はこれでOK。

■けっこう磨いたものの、しつこいピンホール錆と汚れの化合物(?)は残ってしまいました。これはなかなかの難敵。

■インパクトに真ちゅうワイヤーを付け、つや之助との合わせ技で研磨。これでかなり綺麗になりました。

■ハンドルポストのクロームパーツの腐食は、ケミカルでどうにかなるというレベルではなかったようです。

■「えーいままよ!」 と割り切って、ポリッシャーに240番のペーパーを付けて研磨。下地の銅下が出たところで、ひとまずハンドルに付けてみると……、案外この状態もシブくていいかも……?

■車体を壁に寄りかけて安定させ、サイドスタンドの研磨。スタンドの構造を学びつつ、ここも美化してみましょう。

■スタンドASSYを外し、ベースプレートも取外してみましょう。9/16インチのボルト3本を緩めます。

■ベースプレートの裏面も、錆と緑青でえも言えぬ表面になっていました。

■ベースプレートを磨く前に、レギュレーターを外します。ここのボルトは何故かメトリック10mm頭のネジでした。レンチの力を入れる方向は正しくないですが、レンチの10mm表記をご覧いただきたし。

■蜘蛛の巣とか虫の遺骸とか葉っぱとか、生き物達のかつての小宇宙が垣間見えますね。

■サイドスタンドの根本の赤錆。ここのめっき面は、絶望的な状態でした。

■軽めに240番、その後400番のペーパーを当てて赤錆だけ除去しておきます。

■これだけを見ると、廃車の部材としか思えません。

■試しに真ちゅうワイヤーで緑青レベルの腐食を落としてみます。ペーパーで研磨したら、もっと平滑度は出そうです。取りあえず、今はこの程度にしておきます。

■先々のことを考えて、裏面もしっかり錆を落としておきます。ここもインパクトを使用。

■だいぶマシになってきた途中の過程です。この後もしつこく錆を落とし、保護用のクリヤーを塗装しました。

■ここで一区切りにして、レギュレーターを含めて外したスタンドを車体に取付け。メタル~な感じに戻ってうれしくなります。

■右は未処理。左は真ちゅうワイヤーで汚れと錆を落としたボルト。これだけでも印象が変わります。
錆取り作業の傍らで、ケースからのオイル漏れ発生!
錆取り作業に取り掛かり始めた数日後には、別の事案が発生! エンジン左側のプライマリーカバーの下に”油の水溜り?”が出来ているではありませんか。エンジンをかけてもいないうちに……。
さすが古いハーレーじゃのう♪な~んて、笑ってる場合ではありません。コンクリートの床面に広がるオイルを拭き取り、パーツクリーナーその他で油分除去を必死に行い、受け皿とウエスを敷いて対策を講じました。ハーレーの分解などロクにやった事もないのに、いきなりカバーを外してガスケット交換と合わせ面の強制整備ですよ。
上記のハンドル周辺の作業開始と同時に、取り急ぎネット通販で該当年式に対応しそうなガスケットを発注し、プライマリーケース付近の油漏れ対策に取り掛かります。
文章で書くとざっくりした記述になってしまいますが、プライマリーケースの話以前にステムの調整でもトラブルが続出。深夜まで作業の続く日が何日もあり、作業をしてはホームセンターに走るわ(電動工具の乱用で研磨ツール消耗と塗料、薬剤などを調達)、いつしか金欠に陥るわでてんやわんや……。でもそんなのが、また苦しくとも楽しいんですけどね。
しかし、リアルな話、鉄部品のレストアの場合、余裕があれば実施したいのが再クロームめっきですが、ポンポン外注する余裕はない。なので、ある程度の期間は暫定措置の塗装を施し、余裕が出来たら徐々に再クロームしていきましょう。劣化部分を全部気前よく再クロームなどやった日にゃ、たちまち財政破綻するであろうし……(確度の高い予測)。 (つづく)

■ガスケット交換をするために、オイルの漏れ始めたプライマリーカバーを一旦外します。このままカバーが外せるか不明だったので、先にステップとチェンジペダル等を外します。

■部品の装着順番が分からなくならないよう、慎重に外していきます。

■8本のボルトを外し、プラハンでコンコン叩いたらあっさり外れた大きなカバー。内側は古いオイルの汚れが溜まっていたので、この機会に全部清掃。

■カバーの内側もスラッジを落として、合わせ面に深刻な傷がないかチェックします。

■カバー側の合わせ面に問題のありそうな傷はナシ。きれいになりました♪

■古いガスケットは極端に剥がれにくい箇所はなく、ケース側は綺麗に清掃できました。

■プライマリー後方下側にドゥエルピンの入りそうな穴があるのにカバー側に穴はなく、ドゥエルピンも不在。なんだか不思議な気分です。その上のネジ付近に小さな位置決めのピンらしき物体はあるのですが……。

■新品のガスケットと並べてサイズや形状を再確認。大丈夫そうです。

■しょっちゅうオイル漏れされちゃ困るので、液体ガスケットも塗っておきます。

■ドゥエルピンがないせいもあり、ボルトを通す前にガスケットがずれて落ちそうなので、養生テープで軽く貼り付け、ボルトを通すまでガスケットを安定させました。

■この丸カバー部分に微妙に漏れの形跡を発見。見るとボルトの通る周辺が凹んでますね。円周と”平面”になっていないとカバーの座面と合わなさそうなので、ハンマーで修正。

■これでオイル漏れは何とかなりそうですが、カバーのめっきがムラになって剥がれているのが気になります。

■とりあえずプライマリーケースの漏れ修理、スタンド、チェーンケース等の美化が出来ました。これだけの作業でも、楽しいもんです。
写真と文●小見哲彦
小見哲彦(こみ・てつひこ)
無類のバイク好きカメラマン。 大手通信社や新聞社の報道ライダーを経験してバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。2021年からは、防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を依頼されている。





































































