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インド生まれのリトルGSは、BMW‐GSスピリットの継承車なのか?

アジア市場向けのモデルを、域内で生産するという流れは、21世紀に入って間もなくから、ひとつの中小型車市場の潮流となっている。BMWが2017年にG310シリーズを販売したのもそうしたトレンドに沿ったもので、日本市場では普通自動二輪免許で乗れるBMWエントリーモデルとして、注目されている。
インドのTVSモーターカンパニーとの共同開発で生まれたG310シリーズは、ロードモデルのR、次いでアドベンチャーモデルのGSが市場に投入されBMWは日本での新たな排気量クラスに参入したわけだが、このリトルGSが、BMWのGSスピリッツを継承しているのか、ミドルツーリングモデルとして非凡な性能を確保しているのか試してみるのが、今回のお題である。
前置きが多くなりすぎる前に早速実車に触れてみるが、最初に感じたのは、既存のBMW‐GSの印象からするとはるかに軽いこと。そのため、オフアドベンチャーモデルとして適度に高めで幅広いハンドル、高めのシートだとしても不安感は少ない。足の裏は半分程度の接地ながら、車体が傾いても十分支えられる軽さなのだ。身長が170cmあれば不安は感じないはずで、160cm台だと少し手強いかもしれない。ただし、G310GSに付く標準シートに対して15mm低いローシート、15mm高いハイシート(価格は各4万6860円)が純正で用意されているので、体格に応じて選択する余地はある。

■身長173cmでの乗車姿勢。両足接地では足裏の半分以上が浮くが、車体を十分支えられる程度に力が入る。上体はほぼ直立した姿勢で、長距離ランでも疲れない設定。

■姉妹車G310Rとエンジンとフレームを共用しつつ、前後17インチのRに対し、オフの走破性も加味したGSは前輪に19インチを採用。ホイールベースはRより40mm長い1420mmとし、サスストロークも前後180mmに延長(Rは前140・後131mm)。

■コンパクトなウインドスクリーン、幅広のアップハンドルバー、ラゲッジラックの標準装備などもGSの特徴。
極低回転域のトルクは薄いが、歯切れ良い低中回転を味わえるG 310 GSの312cc単気筒

走り出してまず感じるのは、この単気筒エンジンの極低速のトルクは意外に細いということ。回転を上げずにクラッチミートを試みるとエンストしそうになるから、少しスロットルを開けつつ(3000rpm程度まで回して)つなぐほうが具合がいい。幸い低中回転での回転上昇は滑らかなので、そうしたところで手間はなく自然に発進できる。
3000rpmから上は軽やかに回っていくエンジンは小気味よい鼓動を伴い、トップ6速ギヤだと4000rpmで70km/h前後の速度。そこから上はスロットルを開けるだけで、実用的な加速が得られる。そのため、一般道を40~60km/hで走る際は、5速も多用するときびきび走りやすいかもしれない。
一般道を走り、ほかに感じたのは低速域から突き上げ感がなくて柔らかく、コシのある好印象の前後サスペンションの動きだ。前後とも180mmと十分なストロークが確保されたサスはオフ車的な作動性で、車体の挙動が掴みやすく、オフに分け入っても柔軟に動いてくれそうな想像が働く。
一点気になったのは、後輪を制動するブレーキペダルの位置。オフ系のモデルにしてはペダルの踏面が低く、あと1~2cmペダルの踏面を高くして操作したい印象だった。また、試乗車は走行500km程度だったためか、シフトの入り具合やタッチに硬さを感じる場面もあったが、これは慣らしを経てこなれてくるかもしれない。
力強さの湧き出る6000rpm以上の領域だが、わずかに気になる微振動
一般道を経て高速に入る。トップ6速のメーター読みで80km/h≒4800rpm、100km/h≒6000rpm、120km/h≒7200rpm。20km/h増速するごとに約1200rpmずつ回転が上がるエンジンは、5000rpmを超えたところから回転上昇に力強さを増して加速。
中回転から伸びやかに回っていくというよりは、比例的に車速が増す回転トルク型のエンジンで、その特性ゆえの扱いやすさを感じるが、6000rpmから徐々に微振動が出始め、最初はステップ付近、次にシート、7000rpmを超えた付近からはハンドルにも微振動が及び、ミラーは徐々に像がぶれ始める。
意外と微振動が出始める点に粗さを感じるが、その反面車体の直進安定性は不安もなく、外乱での影響も問題ない。車体のほうは、高速で常識的な車速を無理なく支えてくれる(日本の高速道路上で最も高い最高速区域は120km/h)点で、不満はまったく感じない。
ただし、同クラス・似たカテゴリーとして思い浮かぶトライアンフのスクランブラー400XやKTM390アドベンチャーのほうがエンジンの高回転域の伸び方は刺激的で、並列2気筒のホンダNX400のほうが上質。312ccという排気量的なハンデがあるので致し方ないが、大きな不満はなくともここまでのステージでのG310GSは、同車ならではの利点を感じるまでには至らない。

車体バランスの良さが光るワインディング、そつのないフラットダートの走破性を見せるG 310 GS
特筆する部分のない代わりに、大きな失点もないといった印象の、ここまでのG310GSだが、ワインディングは得意分野だった。後傾エンジンを含むディメンション、前後荷重配分が程よくバランスしているのか、切り返しに自然な軽快さがある上に接地感もしっかり感じられ、日本の低中速ワインディングでは不安は皆無。そうした点に、大柄ながらもそれを感じさせない運動性能という上級クラスのGSに通じる特性を感じさせるし、充実した電子制御技術やライダーアシストがなくとも不満も不安もない。とっても軽い上に、素のGS的なハンドリングの好印象もあるのだった。
ちょっとしたフラットダートに入ってもその印象は変わらず、オンロードモデルより長めの180mmというストロークが取られたサスは凹凸を適度に吸収。大きな石がゴロゴロを混じるガレ場や、ヌタヌタの泥濘地でなければ、十分に進んで行ける。重さという不安がなく、BMW-GSとしての利点も感じさせるパッケージを味わわせてくれるだろう。
アドベンチャーのGSとして個人的に物足りないと感じる部分は、11.5L容量と少なめな燃料タンクで、あと1~2L増量できればワンタンクで300kmノンストップで走れるだろう。とはいえ、増量されればこのライトなGSのメリットも薄まるわけで悩ましいところ。また、低中回転で小気味よく歯切れ良いエンジンが、もう少し上まで微振動を削ぎ落として回ってくれればなお有り難い。
かくなる上は、日本での普通二輪上限枠までの排気量アップしてほしいという要望もあるが、日本だけの事情で開発が進むわけもない現在のバイク市場だ。そうした諸々の要望が生まれるのも、このG310GSのディメンションと基本パッケージングがなかなかに具合がいいからでもある。

G 310 GS各部の紹介

■312cc水冷単気筒DOHCエンジンの大きな特徴は、約10度後傾したシリンダーと後方排気のレイアウト。吸気のストレートポート化のほか、マスの集中化、エンジンの重心を前方置けることでマシンの旋回性を向上させるなどの利点をねらったもので、クランク前方に1軸1次バランサーを装備。21年モデルよりユーロ5+対応となったほか、ライドバイワイヤ、アンチホッピングクラッチを採用。

■普通自動二輪クラスながら、GSらしいアドベンチャーツアラーの雰囲気を味わえるのが、比較的幅広なアップハンドルの採用。メーターを覆う程度のミニマムなウインドスクリーンは多少の整流効果はあるが、より高さのある社外スクリーンに交換したい部分。

■コンパクトなモノクロ液晶メーターは、中央に速度、下側にバーグラフ式回転計、左に燃料残量、右にギヤ段数を表示。速度表示の上には切り替えでオド、ツイントリップ、水温、平均速度&燃費、航続距離などを表示。

■シンプルな左グリップの操作系。下からホーン、ウインカー、ヘッドライト切り替え(DRL/ロー/ハイ)、グリップの逆側にパッシングスイッチを配置。なお、右側の操作系はセルボタンとキルスイッチのみ。レバーはクラッチ&ブレーキ側ともに、21年モデルからダイヤル調節機構付きに変更された。

■ヘッドライトのほか、ウインカーやテールも含めLED化されたのは2021年モデルから。写真は昼間走行時用のDRL(デイタイム・ランニング・ライト)が点灯した状態。

■前ブレーキは300mm径シングルディスクにバイブレ製4ピストンのラジアルマウントキャリパーの組み合わせで、過不足ない制動力。内チューブ径41mm倒立フォークは無調整式。前輪19インチホイールに装着されるタイヤは、メッツラー・ツアランス。

■アルミキャスト製両持ちスイングアームは、ダイレクトマウントでプリロード調整付きリヤショックに支持される。ブレーキは240mm径シングルディスクに片押し1ピストンキャリパーの組み合わせ。

■幅広で肉厚も適度にある前後一体型シートは、程よく快適。300km程度の走行では尻は痛くならない。後部には、グラブバーにもなり荷の積載にも便利なキャリヤを標準装備。

■キーロックの解除で取り外せるシート裏に、ETC2.0を標準装備。ただし、これが収まる場所以外に収納スペースはほぼない。

■試乗で気になったのが、ブレーキペダルの踏面がステップに対して低めなこと。現状では高さ調整がないので、ペダル踏面に1~2cmほどの厚みの板を挟みたい印象だ。

■走行240kmを超えたところで黄色い給油マークが点灯し、同時に速度の上の表示が自動的にRANGE(残りの航続距離)表示に切り替わる。燃料残量が2L強になった時点で黄色いマークが点灯する模様。
G 310 GS主要諸元
■エンジン 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク80×62.1mm 排気量312cc 圧縮比10.9 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力25kW(34ps)/9250rpm 最大トルク28Nm(2.85kgm)/7250rpm 燃費28.57km/L(WMTCモード値)
■変速機 6段リターン 変速比1速3.000 2速2.063 3速1.588 4速1.286 5速1.095 6速0.955 一次減速比3.083 二次減速比2.500
■寸法・重量 全長2190 全幅880 全高1250 軸距1420 シート高835(各mm) キャスター26.7° トレール98mm タイヤF110/80R19 R150/70R17 車両重量175kg
■容量 燃料タンク11.5L エンジンオイル1.65L
■車体色 コスミックブラック3(標準)、レーシングレッド’(スタイルラリー)ポーラーホワイト✕レーシングブルーメタリック(スタイルスポーツ)
■価格 74万円(標準)/75万円(スタイルラリー)/75万3000円(スタイルスポーツ)

文●モーサイ編集部・阪本一史 写真●モーサイ編集部、BMWモトラッド
BMWモトラッド
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