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白バイがガス欠することはあるの!?
今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。
私も10年間白バイに乗っていましたが、一度もガス欠になったことはありません。警ら活動が終わって、交通機動隊へ戻る時(以下帰隊と書きます)は基本的に次の活動を考えて満タンにします。もちろん場合によっては給油しないで帰隊する時もありますが、基本は満タン状態で車両を納めます。
白バイを常に満タンにしておくのには理由があります。交通取締り活動以外にも、急な事件や事故があれば出動しなくてはなりません。そんな時にガソリンがなくて現場臨場出来なかったり、途中でガス欠になったら洒落になりません。
白バイに限らず、緊急車両のほとんどがガソリンを満タン、または燃料残量が一メモリ減ったら給油するなどの決め事をしていることもあります。車に比べて白バイの燃料タンク容量は小さい(白バイに使われているホンダCB1300は21リットル)ため、よくメーターを確認してガソリン残量についてはシビアに管理しています。
警察車両全般のあるある!?
白バイは一人一人、担当車両を持っている場合がほとんどですが、地域課のお巡りさんや刑事さんはそうはいきません。パトカーや捜査用車両などは、引き継ぎで何人もの人が使用しています。
仕事で会社の車を共有で使っている方なら共感してもらえるかもしれませんが、「誰々が乗った後は給油されてない」「〇〇さんが使った後は車内が汚い」など、人によって使い方が雑な方もいます。特に最悪なのが、飲み残しの缶コーヒーがあったり、タバコを吸った臭いが残っていたり灰が散らばっていたりする時です(本来車内は禁煙のはずですが……)。
私も新人の頃、刑事さんの車両に急遽乗ることがありました。後付けの赤色灯(刑事ドラマでよく見るパトライト)を取り出すためにグローブボックス内を探していると、中からラーメン雑誌が出てきたこともありました。刑事さんは外食も多く、ラーメン屋や地元のグルメ店の捜査(!?)にも余念がありません。多忙で家に帰ることが出来ない方も多いので、外で食べる外食が唯一の安らぎと言っていたベテラン刑事さんもおりました。
話が白バイからそれましたが、白バイでの警らルートは下調べをしてから出動します。急遽、遠方へ行かなくはならない時は事前にルートを調べて、給油する場所なども入念に調べておきます。ガソリンスタンドは、スタッフ給油とセルフ給油がありますが、どちらで給油するかは県警によって異なります。
原則、スタッフ給油の地域もあれば、セルフ給油又はどちらも可というところもあり、それぞれの県で異なります。また、指定の給油所(契約給油所)があるので、決められた給油所でガソリンを入れることになります。
白バイのトラブルで多いのは、バッテリー上がり
長く乗っているライダーならば経験があるでしょうが、白バイも、パンクや故障によってどうにも動かなくなってしまう場合があります。幸い私が在職中は立ち往生することはありませんでしたが、他の隊員のバイクが故障したりパンクで動かなくなった場合に、応援に向かったことは何度かありました。
警察ではバイクなどを搬送できる4トンや8トンなどの大きめのトラックがあります。また、トラックがなくてもキャラバンやハイエースなどもあるので、白バイが動かなくなった場合は搬送車を使用して運搬します。
前述したように、白バイがガス欠でエンストという話はあまり聞きませんが、バッテリー上がりでエンジンが掛からないという話はよく聞きましたし、実際に私もありました。
白バイは赤色灯や無線機、ドライブレコーダーなど電装系の装備による消費電力が大きいです。しかし消費電力が大きいからといって大容量のバッテリーが装着されている訳でもないため、これらの装備をフル稼働させていた場合、エンジンのアイドリング回転での発電量ではまかなえない場合があります。
特に交通整理のため赤色灯を点灯させた状態で白バイを止めていると、エンジンをかけている状態でもバッテリー上がりを起こしてしまう時があります。現場が終了し、いざバイクで走り去ろうとしたらエンジンが切れていたり、走り出そうとした瞬間にエンジンがストールしてしまう場合があります。
これほどショックなことはありません。何故ならアレが待っているからです。

「押しがけ」できなきゃ一人前の白バイ隊員じゃない!?
アレとは、「押しがけ」のことです。
バッテリー残量が少しでも残っていれば、セルモーターを回す力がなくても押し掛けをしてやればエンジンが掛かる場合が多いのです。押しがけを簡単に説明すると、セルモーターを回さずに強い力で駆動力を与えてやるとエンジンが掛かるという仕組みです。詳しい説明は割愛しますが、これが重労働なのです。
なんせ白バイの重さは約270kg、通常走っているときはその重さを感じることはありませんが、人力でしかも押し掛けでエンジンが掛かるくらいまでバイクを押さなきゃならないとなると、相当な体力と力がいります。押し掛けをするときは、なるべく人目を避けて、少しでも下り傾斜になっている通行の邪魔にならない場所を探します。

あとは全力でバイクを押して、スピードが乗った時にクラッチを繋ぎセルのスイッチを押してやればエンジンを掛けられます。掛かからなければ何度もトライします。一人でダメなら応援を呼んで数人で押し掛けをしたり、最終的にエンジンが掛からなければ積載車でドナドナされていきます。
しかし、立往生してしまうと他の隊員の迷惑を掛けてしまうので、大前提として白バイ隊員は一人で押し掛けが出来なければいけません。
色々と書いてきましたが、白バイがガス欠で立往生することはほとんどなく、立往生する場合は故障やバッテリー上がりがほとんどです。もし、人力で一所懸命バイクを押している白バイ隊員を見た時は、心の中で応援してあげて下さい。きっとバッテリー上がりで押し掛けをしているはずです。
文●睦良田俊彦
睦良田俊彦(むらた・としひこ)1986年北海道生まれ
趣味:クルマ、バイク歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。
警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。
県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuber「臨時駐車場チャンネル」として活動。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。