バイクライフ

【元白バイ隊員が語る】寒い時期の防寒装備「隊員各自の工夫もあるぞ!」

白バイ

今回は白バイ隊員の冬の格好や防寒対策について紹介します。冬季のライダーの敵といえばなんと言っても凍てつく寒さ。極寒期にバイクに乗るライダーの方々は様々な工夫や装備で寒さ対策をされていると思いますが、もちろん白バイ隊員も工夫して寒さを乗り切る日々を過ごしています。

3つの季節に分かれる警察官の制服

警察官の制服は季節ごとに合服・夏服・冬服と、3つに分けられています。白バイ隊員も季節ごとに制服が変わり、夏は水色、春・秋・冬は青色となります。また白バイ隊員(交通機動隊員)が着ている制服は、色以外にも通常の警察官の制服とデザインが異なっています。

交通機動隊員が着ているものは制服とは言わずに「乗車服」「乗務服」と言われ、その名の通り通常の制服よりも車やバイクに長時間乗ることを考慮された作りとなっています。乗車服に関しても合服(春・秋)・夏服・冬服に分けられてますが、合服と冬服には大きな違いはありません。よく見ると冬服よりも合服の生地は少し薄く、色味も微妙に合服の方が薄くなっています。

島根県警察のHPより。通常期と冬で異なる色の白バイ乗務員の制服。同県警では、冬季の乗務服は革製を採用している模様

白バイ隊員だけの防寒服は、通称「シャカシャカ」

実は交通機動隊でも、白バイに乗車する時に着る防寒服といったものがあります。見た目は通常の乗務服と似ていますが、冬季間に着用するために作られた、いわば白バイ隊員専用の冬服です。昔は黒革の防寒服(革パン、革ジャケット)が主流でしたが、現在はほとんどがナイロン製の青色のものへと変わっています(一部の県では現在も黒革の防寒服を着用しています)。そして現在主流となっている青色の防寒服は、寒さを防ぐため様々な機能が施されています。

防寒服の機能について簡単に説明すると、ナイロン製の布地でイメージとしては少し硬いスキーウエアやスノーボードウエアみたいになっています。また、防寒服を着ていると、布地が擦れる音がシャカシャカ鳴ることから、よく「シャカシャカ」とか「シャカ」と呼ばれていました。バイク専用の装備なので、袖口や襟元にはゴムによって伸縮性を持たせてあり、風の侵入を防ぐ作りで、上衣・下衣ともにインナーが取り外し可能となっていて、暖かさを調整出来るようになっています。

また、通常の乗車服ではボタンは掛けボタンとなっていますが、防寒服は「パチン」とはめ込むスナップ式のボタンとなってます。もちろんボタンだけで止めるのではなく、ジャケットの開口部にはファスナーも備えられており、風の侵入を防いでくれます。

防寒服の他にも、白バイ専用の防寒手袋もあります。通常、支給される警察官の防寒用手袋は黒色の革手袋が主流ですが、白バイ隊員専用の防寒手袋は革製かつインナーも厚く、手首まで覆う長さの風防が設けられており、風の侵入による寒さを防いでくれて、夏用手袋とは比較にならないくらい保温性に優れています。また、白バイ専用ということもあり、グリップを握った際に力の掛かる場所には補強が施されています。

革製の防寒手袋。手袋から腕側も長くなっており、風の侵入を防ぐ構造

防寒装備のメリット、デメリット

防寒服や防寒手袋について紹介しましたが、それぞれメリットもあればデメリットもあります。まずメリットは、当然、通常の制服よりも防寒・保温性に優れており、白バイ専用設計ということで、冬にバイクに乗る際に必要となる機能が備えられてます。乗車姿勢をとっても上着がつっぱらないようになっていたり、ズボンもバイクに乗車したときのことを考えてデザインされていました。しかし、デメリットもあります。防寒装備ゆえに、バイクに乗っている時の操作感が著しく低下してしまいます。

防寒服のデメリットはなんと言ってもその重さと厚さです。冬にバイクに乗る方なら分かっていただけるでしょうが、布地が厚い分、重さや厚さにより体の動きが悪くなってしまいます。特にシャカシャカした生地のせいでニーグリップをした際に太ももが滑りやすく、バイクの操作がしにくくなる場面もあります。

防寒手袋も同様、厚い作りにより操作性が低下してウインカーを操作する際に誤ってクラクションを鳴らしてしまうなど、ライダーの方なら一度は経験したことがあるミスを起こしてしまいがちです。

また、雨が降ってきた時は大変です。防寒服は若干の撥水効果があるものの、完全防水ではありません。通常の乗車服よりもゴワゴワしている分、カッパを着るのも大変です。防寒手袋も同様に完全防水ではないため、水が染みるととても重くなってしまいます。

手の平側。グリップを強く握る部分は補強の当ても入っている

やっぱりある、白バイ隊員それぞれの防寒対策

ここまで白バイ隊員に支給される防寒服等について紹介してきましたが、白バイ隊員それぞれの個人的な防寒対策もあります。ただ、白バイ隊員の防寒対策と言っても一般のライダーの方と大して変わりません。私が在職していた時に定番となっていたものはユ●●ロの「ヒートテック」。上下ともに使用していた隊員が多くいました。

寒い日には「今日ヒートテック着てきた」「ヒートテック着てくれば良かった」など、事務所や更衣室でこのようなやり取りがよくありました。そして、バイク用品店やワークショップで良さげな防寒グッズを購入した際は、隊員同士で情報共有したり、先輩、上司の使用している用品を真似したりしていました。

また、乗車服の中にカイロを貼ったり、インナーダウンを着て厚めのソックスを履いたりして寒さをしのいでいました。そのほか、電熱ベストなどを活用している隊員もいました。

結局はコレに尽きる!? 「一番の防寒対策」

防寒対策と言えるかわかりませんが、やっぱり一番は「気合」でしょうか。冗談のようで本当の話、厳しい先輩や上司は寒い時に「寒いと思うから寒いんだ」「辛いと思うから辛いんだ」とスポ根のようなことをよく言ってました。

その理由は、通常のツーリングのように寒いから休む、疲れたから休むとをいったことが容易に出来ないためです。寒いからといってどこかお店に入って暖を取ることも出来ませんし、事件や事故があればどんなに寒くても外にいなければなりません。

もちろん、事故を起こす訳にはいかないので、日頃の訓練で体力をつけ、寒い中でもコンディションを保つために体調管理は徹底して行っていました。どうしても耐えられない場合は、近くの警察署や交番で休憩していました。

色々と書いてきましたが、元白バイ隊員の私がお勧めする防寒対策、というか私が実際にやっていたことを紹介したいと思います。防寒着などで寒さ対策をするのは当然ですが、バイクを乗る前に十分に体操やストレッチをして体を温めてあげると体の冷え方が全然違います。また、どうしても寒すぎる時は、バイクに跨る前に少し走って、ちょっとでも体を温めることをお勧めします。

水色が鮮やかな夏服。この時期にはまた冬とは異なる大変さがある模様

文・睦良田俊彦

著者プロフィール

睦良田俊彦(むらた・としひこ)1986年北海道生まれ

趣味:クルマ、バイク
歯科技工士を経て警察官となり、約15年間勤務(白バイ隊員歴約10年)。

 

警察学校卒業後は約3年半の交番勤務を経て交通部門へ。白バイ警察官として第一線で交通取締りをメインに活動し、ライダーのための安全講習、交通安全啓発イベント、マラソン大会先導、大統領車列先導など、様々な経験を重ねてきた。

県警主催白バイ大会での優勝経験もあり、白バイ新隊員の育成などにも携わった後、巡査部長の階級で依願退職。現在は退職後の夢でもあったライディングレッスンなど、ライダーのためになる活動が出来る場を作るべくYouTuber「臨時駐車場チャンネル」として活動。バイクイベント等に積極的に参加し、出身の北海道で開催のライディングレッスンで講師も務めている。

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