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「アオシマ」のブランドでバイクやクルマ、キャラクターものなど、様々なジャンルの模型をリリースしてきた青島文化教材社。同社の個性的なところとして、乗り物系で言えば通常モデルだけでなく、改造車やデコトラなどユーザーカスタム的な車両、ドラマやコミックの劇中車仕様など、実に「通好み」な商品展開がある。
そうした企画はどのように生まれるのか? 青島文化教材社のスケールモデル企画チーム、中西英登さんにお話をうかがった。
中西英登さん●服飾の専門学校を卒業するも、全く畑違い(!?)の青島文化教材社に2000年に入社。現在に至るまで企画一筋。最初に手がけたのはモーターライズの1/32「頭文字D AE86リトラクタブル仕様」
創業100年を迎えた青島文化教材社「草創期から異端派だった?」
──創業100周年ですが、今日に至る経緯をお教えください。
中西●飛行家だった青嶋次郎が1924年に前進となる青島飛行機研究所を創業し、1932年に模型飛行機、1961年に架空のスピードボードをキット化したようですが「ブルーバード号」という、最初のプラモデルが登場しました。
──バイクのプラモデルはいつ頃登場したのですか?
中西●1973年に発売された、漫画『ワイルド7』に登場するCB750フォアが最初です。内容はオモチャ的で、純粋なスケールモデルでは同時期に『1/16クラシックモーターサイクルシリーズ』が出ております。ハーレー、エース、ヘンダーソン、ミリタイアといった、1910〜1920年代のバイクがモデル化されています。
──マニアックな選定ですね。
中西●輸出を考えていたのかもしれませんが、どういう経緯で生まれたのか、今となっては不明です。
──CB750フォアといえば2023年12月に新発売されたキットはかなり精密ですね。どういう経緯で製品化に至ったのですか。
中西●2015年に同様のコンセプトでCB400フォアを出しています。その頃タミヤさんが1/12スケールでホンダのRC166を精密な内容でモデル化されて、うちもこれくらいやらなきゃ、という意気込みで作りました。その評判がよかったものですから、次出すなら750だろう、と。
製品化にあたり、初期の砂型を所有している静岡のバイク屋さんで取材させてもらいました。あちこち修理されて初期型とは異なるパーツが装着されていたりしているので、そういった部分に関してはネットの画像を探し出し、それを元に型を起こしています。
──画像から作れるんですか?
中西●形がだいたい決まっているものであれば可能です。おかげさまで、コレが出るのを待っていたという声がすごく多く聞かれて、売れ行きも良好でした。
「企画を挙げてダメ出しされることはほとんどありません」
──製品化と言えば、「族車」やデコトラなど個性的なプラモデルも多く出ていますね。
中西●バイクの族車は90年代に手掛けて結構売れましたが、コンプライアンスという文字が出始めた頃から商品化が難しくなりました。弊社では、企画担当者が面白いなと思ったもの、そのときに流行っているようなものに目をつけて「これをやってみたい」と会社に挙げるんです。他社だとおそらくダメと言われるようなものでも。それで社長からダメと言われたこともほとんどありません。それが、外からはちょっとアウトロー的に見えているのかもしれません
──実車の世界では絶版車が人気ですが、そういった傾向はプラモデルにもありますか。
中西●コロナ禍の巣ごもり需要でCBX400FやGS400といった絶版車のキットが売れました。ですが、これらは今ほど加工技術が進んでいない、実車が現役だった時代に作られたものなので、(プラモデルの)設計に無理があるというか、組み立てるのが結構大変なんです。完成してもあまり似ていないし(笑)お客さんから「うまく作れない」というクレームが多く寄せられました。
今の技術で新規に起こせばいいのですが、プラモデルを製品化するのは何しろお金が掛かります。家が一軒建つほどなので回収するのも大変ですし、プラモデルが売れていた時代と比べると、ゼロの数がひとつかふたつ変わってくるくらい減っています。昔のキットを再生産という形で長く作り続けているのもそういう理由からです。
プラモデルの世界も「タイパ」重視に!? それを踏まえた製品も開発
──バイクの世界では高齢化が叫ばれて久しいのですが、プラモデルはどんな傾向にありますか?
中西●スケールモデルは40代後半以降の方、ガンプラをはじめとするキャラクター系は20代後半か、もっと若い方が主軸になります。
──若い世代がスケールモデルに流れてくる期待はあるのでしょうか
中西●我々もいろんなジャンルを手掛けていますが、それぞれのユーザー層がかぶるということはほとんどありません。一品一品ターゲットが異なるというか。キャラクター系が好きな人がスケールモデルに手を出すかというと、なかなか出さないんですね。キャラクター系とそれ以外とで大きな溝がある感じです。
弊社でもスケールモデルとキャラクター系のチームに分かれていて、私はスケールモデル専門です。複数の企画を掛け持ちで担当したりしますが、美少女フィギュアなどを担当する人はほぼフィギュア専門です。その分野に精通した人と言いますか、お客さんと同じような感性や趣味性を持った人が担当しないとお客さんに響かないんでしょうね。
私にはどういうところにフィギュアのツボがあるのかさっぱり分からないのですが、その分野に精通した人が出す製品って、やっぱりよく売れるんです。
──CB400フォア、CB750フォアに続く第3弾は期待できますか?
中西●今のところ予定はありませんが、世の中の流れ的に、簡単に作れるものが好まれる傾向にあります。私が企画したクルマのプラモデルで「ザ☆スナップキット」という、接着剤や塗料を使わずに組み立てられることを売りにしたシリーズがありますが、これが今クルマのプラモデルの中で一番売れています。今後何か出すとしたら、バイクでも同じ方向を進むかと思います。
若いユーザーに向けての取り組み
──バイクのプラモデル、完成品でも結構ですが、進行中の企画などありましたらお教えください。
中西●ダイキャスト完成品シリーズの「スカイネット」からゴールドモンキーを6月に発売したほか、NSR250R SPが9月発売予定です。NSRはロスマンズのロゴを再現したためか、近年では珍しいくらいの予約数が入っているようです。
──ロゴまで再現されるのは、最近の模型では珍しいですね。
中西●販路が国内のみで、ロスマンズはもう日本では販売されていない銘柄ということで版元さんからもオーケーがもらえました。今はインバウンド需要が高いということもあり、外国人観光客が結構買っていかれるようですが、従来のプラモデルだと、何で箱絵には色がついているのに中身はついていなくて、しかも組み立てるのに工具が必要なんだと、棚に戻して帰る人も中にはいるそうです。
──とはいえ、海外でもプラモデルは売られていますよね。
自分の国でそういう売り場に行く習慣のない人が、たまたま日本の売り場に立ち寄ったからだと思います。ヨーロッパには昔からプラモデル文化がありますが、アメリカは出来合いのものを買うことの方が多いようです。
──何をキット化するのかはお客さんからの要望などで決められたりするのですか?
中西●昔は要望が多く寄せられたものをキット化することがありましたが、最近はそれも少なくなりました。要望をくれる人は思い入れが強すぎて、それを世の中に出しても売れるとは限らないので、その辺の見極めが重要になってきます。ですが、お客さんから寄せられるアンケートはがきなどは一通り目を通していますよ。皆さんどういうものを気にされているのかなって。
──そうなると、担当者の個人的な好みを反映させる余地はなさそうですね。
中西●私もどちらかというと古いバイクで、かつ細かい作りのプラモデルの方が好きなのですが、選定されるのはこういうのが売れそうだから、という理由の方が大きいです。CB400フォアやCB750フォアのキットは昔からプラモデルを作り続けてきた年配の方に人気ですが、若い方にもどんどん作ってもらいたいので簡単につくれるものにシフトしていかなくては、と常日頃から思っています。
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