目次
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備
四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっているという印象があるかもしれない。
あらためて「フォグランプ」を装着して公道を走るためのルール(保安基準)について整理してみよう。
その前に、フォグランプについてのユーザーマインド的ムーブメントについて振り返ってみると……四輪においては公道を使うモータースポーツ「ラリー」において夜間走行時の視界を確保するためにヘッドライトに追加されたイメージが強い。
フォグランプという名称を直訳すると「霧の灯り」となるが、霧の濃いヨーロッパでは市販車においてもフォグランプは必須アイテムといえる。なぜなら通常のヘッドライトでは十分に役立たないことがあるからだ。
視界が悪い状態で、手前を広く照らすフォグランプは特定地域においては生活必需品として認識される機能といえる。
ただし、ラリーマシンの場合は補助的な意味ではなく、むしろメインのヘッドライト以上に前方を明るく照らすための追加ランプという意味合いが強い。厳密にはフォグランプではなく、アシストランプ(補助灯)と捉えるべきアイテムだ。
日本国内においては夜の峠道を疾走する「走り屋」が装備したことで、1970~80年代にかけてフォグランプの後付けというカスタマイズが広まった。また、1990年代のRVブームにおいて、大きな丸形フォグランプを備えることが、RVの記号として認識されていた面もあるだろう。
「フォグランプ」はロービームより低い位置に取り付けるべし!
最近のSUVにおけるトレンドとしてオートキャンプも流行っているが、そうしたシチュエーションで役立つものとして、車体のルーフ付近にアシストランプを装着することも多い。また、かつてのラリーシーンではドアミラー付近にランプを装着していたこともあったが、こうした位置は「フォグランプ」としては不適切といえる。なぜなら保安基準でNGとされているからだ。
日本の公道を走るすべての車両が守るべきルール「保安基準」においてフォグランプのことは「前部霧灯」と称される。その基準を示す告示(*)から重要な項目をピックアップ、わかりやすく言い換えると以下の5点となる。
- 他の交通を妨げないものであること
- 白色または淡黄色であり、同一であること
- 同時に3灯以上点灯しないこと
- 点滅するものでないこと
- ヘッドライト(ロービーム)の水平面以下に取り付けること
*道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2009.10.24】<第一節>第199条(前部霧灯)
上記に加え、四輪乗用車の場合は、フォグランプの上縁が地上800mm以下、下縁が地上250mm以上になるという条件もあるが、二輪車および側車付き二輪車においては、こうした取付高に関する基準はない。
というわけで、保安基準に則ればルーフ付近に取り付けたスポットランプやボンネットに載せたアシストランプを走行中に点灯することは不可なのである。
逆にいうとアシストランプを取り付けること自体はNGではなく、停車時のみ点灯させるのは許される。
同時に点灯できるのは2灯までとして、装着位置についても保安基準を守っているならば、際限なくフォグランプを装着することも理屈上は可能となっている。
二輪車にフォグランプを装着するとき気を付けたいのは、フォグランプはヘッドライトの状態にかかわらず点灯・消灯ができるようにしなければいけない点だ。ヘッドライトが常時点灯のためフォグランプも常時点灯するような配線にしてしまうのはNGで、フォグランプについてはオン/オフのスイッチを備えなければならないのだ。
そもそもフォグランプは霧で視界が悪いときに有効なパーツである。日常的に点灯してしまうと対向車のドライバーやライダーが眩しく感じることもあり、迷惑をかけてしまう。
カスタマイズ的マインドでフォグランプを装着したユーザーの本音としては「点灯させた状態がカッコイイ!」と思ってしまうかもしれないが、不要なときには消しておくのがフォグランプの正しくカッコいい使い方であることはしっかりと認識しておきたい。
レポート●山本晋也 写真●トライアンフ、三菱自動車、ホンダ、日産 編集●上野茂岐
道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2009.10.24】<第一節>第199条(前部霧灯)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokukokuji/saikoku_199_00.pdf