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10社以上のメーカーが存在する「バイク王国」台湾
日常移動の足として、二輪が生活に根付いている台湾。通勤ラッシュ時にスクーターがひしめく写真などが様々なメディアを通じて紹介されるが、実際台湾国内には日本でも有名なKYMCO(光陽工業)やサンヤン(山陽工業)のSYMなどをはじめ、10社以上のバイク・スクーターメーカーが存在するという。
そんな中、当記事で取り上げるのが台湾のハートフォード(Hartford)モータースである。工作機械のマシニングセンタなどを製造する協鴻工業を親会社とし、ハートフォードは1995年に二輪車製造部門として設立された。OEMでの二輪用エンジン供給など15年以上の生産経験を経て、自社ブランドで完成車をリリースするまでになり、着実に成長してきた新興ブランドと言えるだろう。
現在の同社では、125/150/250/450ccのオンロードモデル、オフ系では170/220/450モデルなどが存在するが、2023年からハートフォードの取り扱いを始めた日本の正規輸入元ウイングフットは、まず150ccモデルから導入を開始。それがこのミニエリート150である。
前後12インチホイールの小さな車体だが、やる気満々の水冷150ccエンジン
導入の理由について、ウイングフットは輸入車の中では数少ない150ccの排気量と、前後12インチの小径ホイールを履くレジャーバイク風の車格を挙げている。日本では125cc超の軽二輪枠に入り、車検は不要でありながら小型自動二輪と同様に高速道路の走行可能。可愛いだけでなく、実用性と経済性も備えているというわけだ。
同排気量クラスの国産車には、スズキのジクサー150(ストリートファイター風ネイキッド)、ヤマハ YZF-R15(フルカウルのスーパースポーツ)があるが、ミニエリート150のデザイン・車格はいずれともキャラが被らない。
そこからは尖った走りや動力性能というよりも甘口の穏やかな乗り味が想像されるが、水冷OHC4バルブの単気筒+ボッシュ製32ビットECU制御のフューエルインジェクションに加えて、スリッパークラッチや2チャンネルABSも装備している。けっこう本気の装備だ。
「ミニエリート150は、レジャーバイクの雰囲気なのに動力性能には相当力を入れている感じです。この妙なコンビネーションが、他にはなくて面白いんじゃないかと思い、まずはこのモデルから導入してみようかと考えました」と、ウイングフット広報担当の佐々木進人さんは語る。
まさに、今回モーサイ編集部が注目したのも、その点。ジクサー150に試乗した際、その意外なる万能性と、経済性の良い好燃費、ひいては12Lタンクでの航続距離の長さに感心した身としては、これは乗ってみたいとミニエリート150をお借りした次第。早速公道に繰り出してみよう。
■前後12インチホイールを履いた125ccレジャーバイク的な車格に、想像以上に本気の水冷単気筒エンジンを搭載したハートフォード・ミニエリート150。ラジエターコアからエンジン各部に伸びるホースが、水冷ユニットを物語る。
■車輪を隠して上半分だけを見れば、ゼファーベースの改造カスタムのような雰囲気もある。小さなメーターバイザー、ティアドロップ型タンク、タックロール入りダブルシート、大型グラブバーもそんなムードを高めている。
■コンパクトな車体が分かる斜め後方からの眺め。前後12インチのホイールに加えて、ホイールベースは1160mm。125ccの標準的なロードスポーツ車よりかなり短い。数値を気にすると、これで高速を走れるのか不安になるが、軽二輪のナンバープレートが堂々と付く。
見た目はエ◯プっぽくても、もっと獰猛!?
実車を前にして見回し、またがって連想するのは、かつてホンダで販売されたエイプだ。
類人猿=APEに由来する車名の同車は、ホンダの伝統的レジャーモデルのモンキー(横型エンジン車)に対して、縦型エンジンを搭載。そして人間に最も近い動物として、親しみやすい存在でありたいとの思いも込められて車名が決まったというが、ソリッドで懐かしさも感じるタンクからシート、テールにかけてのミニエリート150の造形は、確かにエイプっぽい。
丸みを帯びた造形やメーターバイザー、2本ショックのリヤサスペンションなどに、独自の個性はあるが、車格も含めて可愛らしくて穏やかなモデルという雰囲気を漂わす。
全長は1745mm、ホイールベースは1160mm。サイズも車格もレジャーバイク並みのパッケージに詰め込まれた水冷エンジンは、ブラックアウトされてただならぬ(!?)雰囲気を醸すのだが……。
水冷単気筒OHC4バルブのエンジンは、ほぼスクエアに近いボア・ストロークゆえに、低回転でも相応に粘り、高回転もそこそこ回る特性を想像しつつ、軽いクラッチをミートして発進。すると、125ccクラスの単気筒よりも明らかに鋭く車体がスッと前に出る。
……が、走り出してすぐ、前後サスペンションはポンポン跳ね気味で硬いと感じる。この車体のポップな動きが軽快な印象につながっているのかもしれないが、リヤサスペンションのプリロードを調整して少し柔らかくしてもいいかもしれない。
【原付二種のレジャーバイクと比較】
ミニエリート150の車体寸法は、全長1740mm・全幅825mm・全高1010mm・ホイールベース1160mm・シート高700mm・車重117kg(乾燥)。改めて比較してみると、本当に以下の2台の新旧ホンダ製レジャーバイクと大差ないのだが、唯一違うのは、50mm近く幅広な全幅。原付二種モデルより高い速度での走行を考えての仕様なのか?
ホンダ エイプ100
「〇〇のような……」と形容されることもあるミニエリート150にとっての〇〇=エイプ100(現在は絶版車)。そのサイズは全長1715mm・全幅770mm・全高970mm・ホイールベース1190mm・シート高715mm・車重90kg。シンプルな空冷エンジンゆえにエイプ100は軽量だが、車体寸法は近似値。
●エンジン:空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク53.0×45.0mm 排気量99cc ●性能:最高出力4.6kW(6.3ps)/8000rpm、最大トルク6.6Nm(0.67kgm)/6000rpm ●変速機:5段リターン ●価格:31万3950円(2008年最終モデル)
ホンダ モンキー125
モンキー125もミニエリート150に比較的近い車格で、全長1710mm・全幅755mm・全高1030mm・ホイールベース1145mm・シート高776mm・車重104kg。こちらも空冷エンジンの分、車重はミニエリート150より軽くなっている。
●エンジン:空冷4ストローク単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク50.0×63.1mm 排気量123cc ●性能:最高出力6.9kW(9.4ps)/6750rpm、最大トルク11Nm(1.1kgm)/5500rpm ●変速機:5段リターン ●価格:44万円
一般道では3000~5000rpmの低中回転で事足りる、150ccエンジンの動力性能
一般道を流しているときに多用するのは、大体3000rpmから上で、5000rpmまでの間。トップ6速ギヤで60km/h≒3700rpm、70km/h≒4500rpmといった辺りだが、5000rpm以上回してシフトアップしていけば、交通の流れを十二分にリードできる。またその際、スタタタッを駆け上がる感じのエンジン回転も、なかなか爽快で、スロットル操作に対してのピックアップも良好。
パワーの盛り上がりを感じるのは4000rpmからで、5000rpmを超えるとエキゾーストの抜けがさらによくなったかのようにサウンドが高音となり、回転上昇も鋭くなる。150ccを侮るなと主張するがごとく加速していくが、そのまま調子づいて加速し続けると、一般道ではイケナイ速度になってしまうので要注意だ。
つまり150ccのエンジンというのは、一般道では十分に余裕があってキビキビと回せ、さらには交通の流れをちゃんとリードできるポテンシャルを持つということ。これはジクサー150に試乗した際にも感じたが、この排気量、回せなくてストレスがたまる大排気量とも、パワーに余裕がなくて後方から煽られる性能とも違う。一般道では誠に使い勝手のいい排気量なのだ。
■身長173cmの筆者がまたがった状態。アップライトな乗車姿勢で窮屈さはなく、両足接地ではヒザが曲がったうえでべったりと着く(シート高は700mm)。そして、上体がゆったり感じられるのは、比較的幅広で握る左右グリップ位置のせいか。
■冷却系統の補機類やホースに覆われ、エンジンシリンダー部がほぼ見えない車体右側からの眺め。水冷OHC単気筒4バルブ+6速ミッションの主張は控えめ!? 同排気量帯のエンジンでは珍しくスリッパークラッチも採用。排気系はちょうどエンジン真下付近の膨らんだ部分にキャタライザーを内蔵。
■車体左側から見たエンジンは、機能に徹してのっぺりとした外観だ。ボッシュ製32ビットECUで、燃料供給も緻密に制御。また、クランクシャフト前方にバランサーシャフトを内蔵し振動も抑制。ちなみに、テスト車は走行400kmほどの新車状態で、最初はミッションの入りは若干シブめだったものの、そこから300kmほど走ると入り方もスムーズになってきた。
■ハンドルは同クラスのレジャーバイクとしてはゆったりした幅を持ち、操作しやすく疲れない形状。高速走行も考えると、コレくらいでちょうどいいのだろう。
■コンパクトな五角形の液晶メーターには、回転、速度、ギヤ段数、燃料残量、時計、トリップ&オドなどを表示。液晶パネル上部には、ABS、ニュートラル、水温、ハイビーム、エンジン異常、ウインカーなどの各種警告灯が並ぶ。バーグラフ表示の回転計は、1000rpmを3目盛りで区切っているため、正確な回転数を読み取りづらい。
■着座位置が低いため、普通の自動二輪車と比較して地を這うような感じのするミニエリート150で、いざ高速道路へ。メーター読み80km+αの速度で、回転は5000rpm台後半。まだ余力がありそうな感じだが、さらにスロットルを開けてみるとどうなるか!?
ハートフォード・ミニエリート150主要諸元
■エンジン 水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ ボア・ストローク57.4×58.0mm 排気量150.1cc 圧縮比11.1 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式─ 始動方式セル
■性能 最高出力11.2kW(15.2ps)/8250rpm 最大トルク12.5Nm(1.28kgm)/7250rpm
■変速機 6段リターン 変速比── 一次減速比── 二次減速比──
■寸法・重量 全長1740 全幅825 全高1010 軸距1160 シート高700(各mm) キャスター── トレール── タイヤFR120/80-12 乾燥重量117kg
■容量 燃料タンク6L
■価格 59万9500円
レポート&写真●モーサイ編集部・阪本
ウイングフット TEL03-3897-7255
https://wingfoot.co.jp/
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