バイクライフ

高性能電動バイク「エネルジカ」は、軽二輪=250ccクラスなのに大型自動二輪免許が必要!?

イタリアの超高性能電動バイク「エネルジカ」最高速も航続距離も凄い!

3月22~24日の3日間、盛況の内に会期が終了した東京モーターサイクルショー2024。国内4メーカーのブースなどは相応な混雑ぶりだったものの、そのほか時代を先取りしたモデルの展示エリアなども、ギャラリーが引きも切らずの状態だった。そんなメーカーのひとつが、イタリアの高性能電動バイクメーカー「ENERGICA」(エネルジカ)だ。

イタリアで初の電動スポーツバイクを開発したエネルジカのモデルは、フルカウルスーパースポーツのEGO(エゴ)+と同RS、ストリートファイター風モデルのEVA RIBELLE(エヴァ・リベル)と同RS、アドベンチャースタイルのEXPERIA(エクスペリア)、クラシックレトロモデルのESSEESSE(エスエス)9+と同RSといったラインナップ。ショー会場にはそれら全主要モデルが勢ぞろいした。

一般的な電気自動車の充電スポットを模したブースに各車が置かれ、シート下の充電ポートに差し込む方法などが説明されていた。ちなみに、エネルジカ各車は、高速道路やコンビニ、大型駐車場などに設置された充電スポットでの急速充電(所要30~40分程度で80%程度まで充電可能)のほか、自宅や会社、宿泊施設などでの普通充電(所要5~8時間で満充電でき、設備は自宅などへも設置可能)の両方が選択できる。

そしてエネルジカ各車の大きな特徴と言えば、高出力と長い航続距離で、最も高性能なエゴプラスで最高速度240km/h、航続距離は420km(市街地)を公称。0~100km/h加速は2.8秒を誇る。

■エネルジカブースに置かれた電動モデル各車。国内各地にある急速充電用のEVステーションを模した施設から充電可能な様子を紹介していた。つまりエネルジカ各車は、国内で普及しているCHAdeMO(チャデモ)規格のコネクタを搭載しており、日本各地の急速充電施設を利用可能なほか、自宅や会社などで200V電源による普通充電も可能。

■後ろヒンジで開くシート下に急速充電用(車体前側)と普通充電用のコネクタを装備。写真は急速充電施設に繋いでいる状態。

比類なき高性能を持つEVゆえの、エネルジカ車特殊事情「運転免許に注意!」

かようなわけで、是非その性能と乗り味を試したくなるが、個人的に初めて知ったのは、このエネルジカのモデル群が「軽二輪登録であることと、にもかかわらず運転するには大型二輪免許(厳密に言えば、大型二輪AT限定免許以上)が必要」だということ。これには同モデル群がEVの高性能車だという特殊事情が絡んでいる。

従来のエンジン車であれば排気量によって原付一種(50cc以下)、原付二種(50cc超から125cc以下)、軽二輪(250cc以下)などと分けられるものの、エンジンを積んでいない電動バイクの場合はそれが当てはまらない。
基本的に電動バイクは駆動モーターの定格出力(最高出力ではない)で分類され、道路運送車両法では、その区分は以下の3つになる。ちなみに定格出力とは、「安全な運転状態において安定して出すことのできるパワー」と定義されているが……。

【道路運送車両法での電動バイク区分】
●定格出力0.6kW 以下:原付一種
●定格出力0.6kW超1.0kW以下:原付二種
●1.0kW超:軽二輪

電動バイクの場合、現状ではどんなにパワフルなモーターを積んだバイクでも、軽二輪以上の車両がない(つまりすべて電動バイクは車検がない)。
しかし、ガソリンエンジン車のように軽二輪(排気量250cc以下)=普通二輪免許で乗れる車両とは限らず、大型自動二輪免許でないと乗れないモデルがある。エネルジカ各車がまさにソレだ。
運転免許区分に関わる道路交通法・同施行規則では、定格出力によって、前述の3つではなく、以下の4つのクラスに分けられているのだ。

【運転免許に関わる道路交通法での電動バイク区分】
●0.6kW以下:原付免許
●0.6kW超1.0kW以下:小型限定普通二輪免許(通称・小型二輪免許)
●1.0kW超20kW以下:普通二輪免許
●20kW超:大型二輪免許

日本国内のエネルジカのウェブサイトには、定格出力が表記されていないものの、本国サイトではパワーの項目で「Peak(=最高出力) 126 kW – 171 hp/Sustained(=定格出力) 110 kW – 149 hpとあり、エネルジカ各車の運転には大型二輪免許が必要ということになる。実際、エネルジブースの解説スタッフからもそのように教えていただいた。

最高速が200km/h以上になるモデルなのだからそれも納得できる区分だが、軽二輪だから普通二輪免許で乗れるものだろうという自身の思い込み(間違い)に、今回初めて気づいた次第。なお現在日本で入手できる電動バイクにおいて、運転に大型二輪免許が必要というモデルは、エネルジカのモデルのみのはずだ。

■車体後部ライセンスプレート位置に掲示されたエネルジカ・エゴプラスのスペック。最高速度240km/h、航続距離420kmの表記に目を奪われる。

航続距離も高性能!1充電で約400km走れる

もうひとつ、エネルジカ各車のスペックで関心するのが1充電での航続距離。4輪車と異なり、大きくて重いバッテリーを積みにくいバイクの特性上、ほとんどの電動バイクは100km以上の航続距離を確保できない。
しかし、エネルジカ各車は400km近い航続距離を謳っているのだ。さぞかし大きく重いバッテリーを積んでいるのだろうと想像するが、各車の車両重量は、大体260kg前後。軽くはないが、国産のスズキ ハヤブサやホンダ CB1300SFといったモデルとほぼ同等。車格はミドルクラス程度に感じるので、さほど取り回しに苦労するレベルではなかろう。

そして、ブースにいたスタッフ氏の解説によれば、実際に走らせた場合の航続距離は「高速道路を制限速度内でたんたんと走れば、限りなくスペックの航続距離420kmに近い数値になります。それ以上で元気に飛ばした場合は、大体300kmくらいが満充電で走れる目安になるでしょうか」とのこと。

各モデルは基本受注生産。納車までは約半年待て!

この辺の性能、ワンタンクで走れるガソリンバイクと同等であり、頂戴したコメント通りならツーリングでも現実的に使える。となれば、あとは実際に試乗して気に入るかどうかであり、気に入れば受注へと進むわけだが(!?)、ここから先は高性能な電動バイクゆえの相応に高いハードルが待ち受ける。

「エネルジカの各車は、基本4つのモデルが用意されていますが、受注生産の形を取っています。ホイールやサスペンション、各部パーツなど、好みのパーツを選択して、実際の仕様を決めていただいてから1台ずつイタリア本国で生産していますので、受注から納車まで、大体半年ほどお時間をいただきます」とのこと。特別な1台を作ってもらえるのだから、それはいい。期待しながら、待つことにしよう。だがちょっと待てよ、エネルジカっていくらくらい? 

改めて頂戴した資料を見ると、(オーダーした仕様にもよるが……)最安のエスエス9プラスでも495万円からで、最上級スーパースポーツのエゴプラスRSでは633万4800円! オーダーより前に、先立つものが必要……。まずは一生懸命貯めることから始めようか。

エネルジカの主要モデル

イタリアを拠点に電動スポーツバイクを開発製造すつエネルジカは、2022年秋より日本への導入を開始。基本のモーター&バッテリーユニットは共通ながら、パワー特性とスタイリングを変えた4モデルをラインナップしている。そしてアドベンチャーモデルのエクスペリアを除く、各モデルには加速性能を高めた上級版のRSも用意する。なおエネルジカ全車は、クラッチレスで変速機構を持たない(加減速はスロットルの開閉とブレーキ操作での減速のみ)ため、厳密に言えば大型二輪AT限定以上の免許で運転可能だが、世の中に大型二輪のAT限定免許所持者ってどれくらいいるんだろうか?

Ego+(エゴ・プラス)RS

スーパースポーツルックのエネルジカ製最高峰モデル。STDと加速性能を高めた上級版のRSもラインナップ。

スペックの< >内はRS

最高出力:126kW(171hp)
最大トルク:215Nm
最高速度:240km
航続距離(市街地):420km
加速度(0-100km/h):2.85秒<2.65秒>
シート高:810mm
充電時間:急速充電=30~40分、普通充電=7~8時間
価格:571万円~<595万円~>*塗色・装備等により価格差あり

Eva Ribelle(エヴァ・リベル)RS

フルカウルモデル、Egoシリーズのハイパーネイキッド版。Egoシリーズに準ずる高性能を誇り、STDと加速性能を高めた上級版のRSを用意。

スペックの< >内はRS

最高出力:126kW(171hp)
最大トルク:215Nm
最高速度:200km
航続距離(市街地):420km
加速度(0-100km/h):2.85秒<2.65秒>
シート高:790mm/充電時間:急速充電=30~40分、普通充電=7~8時間
価格:価格:539万円~<562万円~>*塗色・装備等により価格差あり

Experia(エクスペリア)

新設計の電動パワートレインとバッテリーを搭載し、低速域での走行性能向上と乗り心地のよさを追求したアドベンチャーモデル。

最高出力:75kW(102hp)
最大トルク:115Nm
最高速度:180km/h
航続距離(市街地)420km
加速度(0-100km/h):3.55秒
シート高:847mm
充電時間:充電時間:急速充電=30~40分、普通充電=7~8時間
価格:522万円~*塗色・装備等により価格差あり

EsseEsse9+(エスエス・ナイン・プラス)RS

EgoやEvaシリーズと異なり、出力特性を抑えてカジュアルに使える仕様としたクラシックレトロ系モデル。STDと加速性能を高めたRSをラインナップ。

スペックの< >内はRS

最高出力:80kW(109hp)
最大トルク:200Nm
最高速度:200km/h
航続距離(市街地):420km
加速度(0-100km/h):3.05秒<2.85秒>
シート高:790mm
充電時間:急速充電=30~40分、普通充電=7~8時間
価格:495万円~<519万円~>
*塗色・装備等により価格差あり

report&photo●モーサイ編集部・阪本 画像提供●エネルジカ(エスター)

CONTACT

株式会社エスター(エネルジカ正規代理店)
TEL078-855-2266
https://energica-moto.com/

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