■念願の偵察部隊風特製バンパーが付きました。素材は……?
偵察部隊のバイクが付けている車体ガード……いいな
こんにちは。カメラマンの小見です。
初期の錆落としなどレストア的な作業が多かったKLXも、前回記事にしましたフォグ搭載で、構想を練っていたミニアドベンチャー化への勢いがつきました。
本物のラリー仕様車ということでは、かつてスズキのDRビッグ/パリダカ仕様やBMWのGSシリーズも林道での企画ページ等で自走撮影の経験が少なからずあり、それがどういうものかは分かります。
ですが、このKLXの主な用途は自転車山岳レースでの、細い林道における追跡撮影。そして気ままに(のんびり)アドベンチャー車両っぽい雰囲気でツーリングも楽しめたらいいなといった願いもありました。
そんなところで、ラリー仕様車的ムードは大事ながら自衛隊の偵察部隊のオートバイ(KLX兄弟ですね)のバンパーが、ラリー仕様車のエンジンガードよりも自分の指向に合っていそうに思えたのです。
雑誌や広告などふだんの撮影のほかに、陸上自衛隊の練馬や朝霞駐屯地などに別件で赴く際には偵察部隊のバイクを間近で見ていて「こういう車体ガード、良いな」と思っていました。
かれこれ、練馬の偵察部隊が編成変えする以前の第1偵察隊(1偵)の頃からでしょうか。
■広すぎず、それでいて足元をしっかりガードしてくれる見本=陸上自衛隊の偵察バイクです。兄貴分KLX250がベースになっていますね。以前からのイメージとして、この雰囲気にしたかった!
■上部にラジエーターが付いているのもあってか、偵察バイクのガードは下方に付いていますね。ガード内側には防弾板なのか、板材も。自分のKLXには、板材までは要らないかな? 練馬駐屯地にて。
強度が高すぎてもいけないところが……
市販のアンダーガードを装着しておくのも良い手段ではありますが、転倒時のフォグランプや膝下の保護まで考えると、バンパーの製作を真剣に考えざるを得ないと思っていました。
過去に重量車でバンパーが付いていたのは、若いころに所有していた1台目のZ2だけ。40~50代に乗っていたCB750Fourは、エンジンガードをカスタムの後期に取り付けたくらいでした。
じつはこうしたガード類についても、気になっていたことがありました。ガードやバンパーの強度が高過ぎると、クラッシュ時にガードに加わった力の影響で、取り付けられたフレーム側が歪んだり曲がったりするケースがあるのです。
では、どうすればよいか。もともと125ccのオフロード車用のバンパーなんて、ほぼ見当たりません。
「ならば強度のやや低めなパイプを使った部材で、独自にバンパーを作れたら(ピコーン)?」
何か月かそんなことを頭に浮かべながら日常を過ごしていたところ、昔からのバイク仲間が「これ、要ります?」と譲ってくれたのが、使い古した軽量車用レーシングスタンドでした。
大型バイク用のバンパーより明らかに細い。けれど、125ccの車重やクラッシュ時のダメージを受けたときに曲がって衝撃を吸収しそうな部材と考えると、中古レーシングスタンドは最適……!?
有り難くスタンドを受領。傷だらけだったのですぐに錆を落とし、仮塗装までしておきました。
■猫屋敷君からレーシングスタンドをいただきました。
■このスタンド、当初は錆があちこちに浮いていて、表面が傷んでいたんです。補強ステーなど不要そうな部分はさっさと切断してしまう狩野さん。
■「取り付け場所の候補は、まずエンジンハンガーだよねー」と、さっそく位置決めで私と合意する狩野さん。もう一箇所はフレームの加工も辞さないつもりでした。
■スタンドの、本来スイングアーム付近に引っ掛ける部分もバシバシ切っちゃいます。
■この曲線を生かそう!ということで、バンパーの上側はこの部分で決定。
■どんどん切断されていくレーシングスタンド。
■すっかり左右に分離され、想定上センターとなるべき部分を合わせて置いてみる。
■上部センターを仮留めし、車体に合わせて下側の構成を検討しているところ。
■フロントホイールやエキパイとの干渉を考えて、位置を仮決め。
■上下逆転して、バンパー下側の採寸。
■想定上で下側の曲がりとなる部分については、パイプに斜めカットを入れて再接合する方針に決定。
■バンパー下側=6~70度ほどの角部分が、斜めカットして仮溶接した部分。
■この曲げ部分は要らないよね、と相談しているところ。カットして何らかの手段でエンジンハンガーのボルトで共締めにする感じになりそうです。
■バンパー上側の想定取り付け位置をここに決定。フレームには何もありません。U字ボルトでクランプするかフレームに手を加えるか……。
■バンパー下側の曲線をさらにカットしてエンジンハンガーのボルトとの位置関係の微調整にかかります。ここも斜めに切ってステーを作る感じになりそう。
レーシングスタンドが姿を変え、バンパーに!
都内葛飾区の狩野溶接工業さんに上記レーシングスタンドを持ち込み、作業開始。
事前にアイデアは伝えてあります。執刀医は同社代表の狩野敏也氏。ご多忙の合間をみてのオペレーションとなります。
Vストローム650やイーハトーブの細かい部分など、自作カスタム部品で使い勝手を向上させている狩野さん。バイク乗りでもあり、キャリヤのアタッチメントや燃料ボトルのホルダー、サイドカバーのアルミ板金までやってしまう御仁です。
KLX改造の狙いにも理解を示してくださり、バンパーの強度に関する意見もうまく噛み砕いて、フレームの追加加工や部材の溶接を試みてくれました。
中古レーシングスタンドの曲線をどう使うかを考え、直線構成でよさそうなところはスピーディにカットしたり繋げたりして仮付け。アウトラインが完成したら、車体から外して本付けのTIG溶接でガッチリと繋いで、それらしいバンパーを完成させてくれました。
これで前回の記事で取り付けたフォグランプは、転倒してもしっかりガードされるはずです。
■板材に8mmのボルトを通して頭をカット、そこをTIGで溶け込ませる溶接処理。裏側にはボルトのネジ部分が突き出ています。
■製作した2本のボルトと一体型のステー。これをKLXのフレームに取り付けます。
■製作したボルト付きステーをフレームに点付け溶接したところに、もう一枚の同寸板材を当てて、ネジに通したところ。この板材にバンパーを溶接して一体化させます。
■この位置関係で溶接して板材と一体化させます。
■板材を車体に仮組みした状態で仮留めしたのち、板材ごとバンパーを外して半自動で溶接固定。
■取り付けに余裕を持たせるために、穴の内径を少し拡大しておきます。
■エンジンハンガーに接続させるステーを作り、仮留めした端材に合わせ、バンパーに部分的な切れ込みを入れて曲げの余裕を作っているシーン。ステーから伸びる端材は直角に出ているので、それに合わせる修正。
■画面で右側は仮留め後、左側はカットしてこれから点付けする前の図です。(車体の斜め左前方から見ています)
■角の補強を入れてからカットした箇所の点付けにかかるところ。2段の曲げになっています。
軽微な転倒では問題なし!を確認
ちなみに、実際に、強度的には軽度な立ちゴケレベルではバンパーはしっかり機能してくれたうえに曲がることはありませんでした。
陸上自衛隊の偵察バイクの観閲式で行われているようなシミュレーションのひとつに、走行→ブレーキターン→横倒し→小銃で反撃といった一連の流れがあります。それを私もガード取り付け後に実験してみたところ、問題なく再現可能でした。
つまり立ちゴケ程度は大丈夫。実地でクラッシュしたら?は、いつか分かるでしょう。
さて、「KLX125ミニアドベンチャー化」の追加工作には、狩野さんのイーハトーブSPLを参考にしたワンオフ製作が続きます。燃費の良い125ccとはいえ、山岳撮影で万一のガス欠は避けたいもの……。どうしましょうか……。
(次回に続く)
■車体から外し、ここからは溶接棒を加えてTIGでしっかり溶接。
■エンジンハンガーに取り付ける部分の接合もしっかり溶接。
■溶接でできた余分なところはサンダーで削り、滑らかに処理。エンジンハンガーに付けるステーも不要箇所はここでカット。
■これで完成です! 加工途中に付いた傷や焼けは、あとで自分で塗ればヨシ。フォグも守れるし、こんな形状が欲しかったんです!
■自分で再度、シルバーに塗って完成! 一応、車体色に合わせたつもり。
■取り付ける前に、溶接でフレームが焼けたところをタッチアップ。放っておくと錆やすくなります。あ、エキパイもそろそろ再塗装かな?
■エンジンハンガー下側のボルトは、少し長いボルトに交換。いざ取り付けです。
■邪魔にならない出っ張り加減で、ツーリング車両のバンパーほど大きくない寸法。舗装路でのバンク角に問題なく、ダートで横倒しにしてみるとクランクケースもガード。狩野代表、ちょうどういい形で実現してくれました。
■嬉しくなって、ついフォグも点灯させてみたところ、です(オマケ)。
レポート&撮影●小見哲彦
取材協力
●(有)狩野溶接工業
http://kano-w.o.oo7.jp/company.html
●陸上自衛隊 第1師団 広報班
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/1d/
プロフィール●小見哲彦
無類のバイク好きカメラマン。
大手通信社や新聞社の報道ライダーとしてバイク漬けになった後、写真総合会社にて修行、一流ファッションカメラマン、商品撮影エキスパートのアシスタントを経て独立。神奈川二科展、コダック・スタジオフォトコンテスト等に入選。大手企業の商品広告撮影をしつつも、国内/国外問わず大好きなバイクを撮るように。『モーターサイクリスト』誌ほか多数のバイク雑誌にて撮影。防衛関係の公的機関から、年間写真コンテストの審査員と広報担当人員への写真教育指導を2021年より依頼されている。
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