バイクライフ

タイヤやホイール、それ自体が発電機に!? 「歪み」や「遠心力」で電力を生む研究が行われている!

今のモビリティは電子制御が当たり前

タイヤの数に関わらず、モビリティの電動化というのは世界的なトレンドになっている。化石燃料を使ったエンジンだけで走るクルマやバイクは消滅する……などとも言われているが、ハイブリッドパワートレインから発展して全電動化になるのか、人工燃料が生まれるのか──。様々なソリューションのアイデアは存在しているが、実質的にCO2を排出しないカーボンニュートラル社会を実現する未来は確実にやってくると言える。

それとは別にモビリティの電脳化も進んでいる。もっともわかりやすいのはAI(人工知能)を活用した自動運転だろう。そうでなくとも、各種の電子制御による運転アシスト機能は、現代のユーザーにとって欠かせないものとなりつつある。

シンプルに自分の腕でバイクを走らせたいというライダーがいる一方で、6軸IMUに代表される電子デバイスに頼ることで安全安心に走りたいというニーズもある。現実的にいえば、電子制御をフル活用したマシンに腕だけで勝つというのは難しい。
また電脳化においては、IoT(モノのインターネット)も欠かせない要素となるが、クルマやバイクを制御するためのセンサー情報をサーバにアップロードして分析することで車両管理などに役立てるという動きも進んでいる。

タイヤやホイールで発電→空気圧監視システムに電力供給

たとえば、タイヤ空気圧を管理・監視するデバイスとして普及が進んでいる「TPMS」(Tire Pressure Monitoring System:タイヤ空気圧監視システム)というセンサーがある。仕組みとしては非常に小型の圧力センサーをバルブ部分に、データ送信ユニットをホイール内に設置することで、リアルタイムにタイヤ空気圧を確認するというものだ。

パンクを初期段階で知ることができるのは安全につながる機能といえる。また、スポーツドライブ&ライドにおいてもタイヤ空気圧をリアルタイムでチェックできることは役に立つ。TPMSのデータを車両コンピュータからサーバに送ることで走行距離データなどと合わせてタイヤの劣化を予想するというアプローチも進んでいる。

近年では二輪車でも大型モデル中心にTPMS標準装備車が増えてきている。イラストはカワサキ ニンジャH2 SXの資料から
カワサキの1000cc大型ツアラー・ニンジャH2 SXの上級モデル「SE」にはTPMSが標準装備される

ただしTPMSにも課題はある。指摘されることが多いのが、電源を確保するための手間とコストだ。現時点ではタイヤを外してボタン電池などを交換するというのが一般的だ。
その対策として有力視されているのがタイヤ&ホイール内でTPMSが必要な電力を発電することだ。

タイヤ&ホイールで発電するためのキーワードが「歪み」だ。
ジャパンモビリティショー2023(旧・東京モーターショー)にてスチールホイール大手のトピー工業が発表した新技術「TOPY GREEN WHEEL TECHNOLOGY」は、タイヤの変形に伴いホイールに発生する「歪み」を有効活用してTPMSに必要な電力を生み出そうという技術。具体的には圧電素子を活用した独自のホイール発電技術となっている。

四輪のスチールホイール大手、トピー工業が発表したホイールで発電する新技術「TOPY GREEN WHEEL TECHNOLOGY」

同じようなアプローチはタイヤメーカーでも進んでいる。ダンロップ・ブランドなどで知られる住友ゴム工業は2種類の発電デバイスを並列に組み合わせた仕組みによるTPMSへの電力供給を発表している。

低速域での発電を担当するのは、タイヤの歪みによる張力を利用した発電デバイス。そこに遠心力を利用するもうひとつの発電デバイスを組み合わせることで、高速域でも十分な電力を得られるという。2種類の発電デバイスを並列接続することで、幅広い速度域で安定した電力を確保、TPMSの安定した稼働を可能にしたという。

いずれにしても、タイヤ&ホイール内で発電と消費を完結させることで、TPMSのバッテリー交換不要にして、メンテナンスフリーで利用しつづけることが可能になる技術だ。
これはあくまで一例だが、モビリティの電脳化やIoTトレンドにおいては情報と電力供給のワイヤレス化は重要なアプローチであり、今後の技術進化を期待したいものだ。

住友ゴム工業が研究・開発する「タイヤ内発電デバイス」。タイヤ内に2種類の発電デバイスを取り付ける
住友ゴム工業の「タイヤ内発電デバイス」の発電メカニズム
住友ゴム工業の「タイヤ内発電デバイス」による発電量イメージ

レポート●山本晋也 画像●住友ゴム工業/トピー工業/カワサキ

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