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【スズキ ジクサー150試乗】150cc単気筒に体重75kgで最高速約110km/h「でも高速走行は意外なほどの安定感、全然怖くない!」

ジクサー150 スズキ

ジクサー150でワインディング

高速道路を走れる軽二輪で、約38万円で買えて、燃費もいいというウワサのロードスポーツ──スズキ ジクサー150。
まだ子どもの教育費が残っている50代家族持ちには(まさに筆者のことである)、懐に不安なくバイクライフを楽しめる救世主ではないか?
しかし、150ccという排気量でどこまで汎用性があるのかも気になる……ということで、ジクサー150を色んな場面でテストしてみる当企画。

ジクサーシリーズの最小排気量モデル・ジクサー150。インドで生産され、2017年から日本でも販売開始。2020年型でモデルチェンジしており、現行車は2代目に当たる。
テスト車は平成32(令和2)年排出ガス規制に対応した2023年型のマイナーチェンジ版で、最高出力13ps/8000rpm、最大トルク1.3kgm/5750rpmの性能。

40~70km/hあたりの速度レンジで、ジクサー150が生きのよいことを「通勤試乗レポート」で紹介したが、今回は日常からの逃避がてら、週末にワインディングまで足を伸ばすことにした。
場所は都心から2〜3時間で行ける奥多摩方面だ。青梅街道を経て国道411号線に入る。何度も走っているルートだが、片側一車線で多摩川沿いののどかな区間に入ると、ツーリング気分が盛り上がってくるもの。オール下道で、ここまで2時間ほど走ってきたが「前下がりの形状で疲れるのでは?」と懸念したシートの違和感は、不思議と尻の痛みにまで進行していない。自分がジクサー150の乗車姿勢に慣れてきたのか?

国道411号から深山橋で国道139号に折れ、そこからすぐに三頭橋で奥多摩周遊道路(都道206号)に入る。ドライブやツーリングの定番ルートとして人気の道だが、ご存知のようにコーナーを攻めるライダーの多さでも知られる。
ここはひとつマイペースで行こうと思いつつ走り出すと……野太いサウンドとともに脇を抜いくビッグバイクたち。ちょっと闘争心じわじわ湧き上がってくる。そして400ccや250ccのスポーツバイクに追い抜かされたところで、後ろについて行ってみた。低中速ワインディングが続くルートだが、うまく行かない。
3~4速を多用し、時にタイトコーナーで2速を使いつつ上りを立ち上がるも、回転数は割と簡単にレッドゾーンに近づいてしまう。レブリミッターが働くのでエンジンを壊してしまう心配はないが、ジクサー150で400cc以上のモデルについていくのはかなり厳しい。

ライトウェイトモデルゆえに切り返しはひらひらと軽く、車体を寝かそうと特に意識しなくても、視線を向けた先に自然と進んでいく。車体のジオメトリーもいいのだろう、ハンドリングは素直だ。
だが、ワインディングを流すだけで意外とエンジンを回し切ってしまうジクサー150の場合、コーナーの立ち上がりで(この時点で6000rpm以上)、さらにトラクションをかけるべくスロットルを開けても余力が残っていない。そこがもどかしいが、安全の神様の啓示だなとマイペースに切り替える。
そして、悟る。ジクサー150は250ccクラス以上のバイクとつるんで走るより、ひとり走りを噛み締めるバイクなのだと。

LEDの異型ヘッドライトが特徴的なフロント周り。フラットなアップハンドルとの組み合わせで、ストリートファイター風のスタイルだ。

右側のデュアルパイプマフラーエンドがアクセントとなるリヤビュー。昨今のトレンドか、リヤフェンダーはスイングアームマウント。

70km/h制限の自動車専用一般道を快走するジクサー150。トップ5速での回転数と速度の関係は、約4500rpm≒60km/h、約5200rpm≒70km/hといったところ(いずれもメーター読み)。
奥多摩周遊道路、月夜見第二駐車場で休憩。結構な数のライダーがワインディングを楽しんでいたが、ジクサー150では自然とマイペースで流す気分になってくる。

ジクサー150で高速巡航「速くはない、でも全然怖くはない」

下道の移動、ワインディングでの心地よい運動で満足したところで、帰路へと舵を切る。否、実際は舵を切るってほど大仰な操作ではなく、ジクサー150はひょいっと向きを変える。そして思う。ショートホイールベースで気軽さを味わえる半面、短めのスイングアームの動きはトラクションのオンオフを実感しにくい要素でもあると。しかしそれは無いものねだり!?  路面との濃密なコンタクトを感じたければ、相応のパワーと重量感、車格のあるモデルを選べばいいのだ。

そんなことを考えつつ田舎道を流し、高速道路を使って戻ることにする。普段、ヤマハ セロー225(最高出力20ps)を愛用しているせいで、ローパワーモデルでの高速走行には慣れているが、そうしたモデルで気をつけるのは、走行車線の中央あたりを流れに乗って走ることだけだ。
無論前方の状況や後続車の動きには注意するが、大概の場合、走行車線は80~100km/hの速度域で流れているし、その速度が物足りなければ後続車は追い越していく。その流れに身を任せていればいいのだ。ちなみに、車線の左端を走らないのは、横着な輩に間近な横を追い抜かれる恐怖を味わわないためだ。

さて、ジクサー150ではどうか。高速の本線に合流する際の加速は、造作もない。トップ5速に入れた80km/h時点でエンジンの回転数は約5750rpm。ちょうど最大トルクを発生する付近だ。90km/hにもすぐに達し、さらにスロットルを開ける。トップギヤ5速、100km/h時の回転数は7250rpmくらいだか、この付近からスロットルを開けても加速が伴わない感じとなる。
それでもスロットルを緩めずにいると速度はじわじわ上がり、110km/h付近で考え込むように加速をしなくなる。そのときの回転数は約8250rpm。レブリミットまであと少し回る余地はあるが、もう伸びない。少しの勾配のありなしや風向き次第で、速度が増したり減ったりを繰り返すだけだ。  

後日、高速の120km/h区間で最高速度チャレンジをしてみたが、メーター読みで110km/h+αくらい。驚かされたのはその速度域でも全然怖くないこと。
比較的風が弱めだったせいもあるが、それ以上に心強かったのがジクサー150の意外に落ち着いた車体挙動。決して高級とは言えない、リヤにプリロード調整のみが付く前後サスペンションは、路面の継ぎ目を割と穏やかにストンッと受け止め、直進安定性も揺るがない。
またエンジンがどんな回転域で回っていても、気になる振動がどこにも発生しないことも大きい。これら車体の挙動とエンジンから感じるストレスのなさゆえ、ジクサー150で前述のように最高速を試しても、怖くも疲れもしない。スカッと飛ばす楽しみはもちろんないが、高速でのジクサー150は、案外あっさり仕事をこなす感じなのだった。

速度制限120km/h区間で最高速を試す。平坦で風弱めな状況での速度計は110km/h少々を示した。そのときの回転数は8000~8250rpmを行ったり来たりだ。

結構回して走ったが、走行512km、ガソリン10.4L消費。燃費はリッター49.2km

週末のワインディングランを終え、再び通勤の日常使用に。
自宅と都心にある編集部の往復を2回繰り返したところで、1回目の燃料残量警告(残り約3.0Lで点灯)、そして最終通告として2回目の燃料残量警告(残り約1.2Lで点灯)が出たところで給油。走行512kmで10.4Lの給油量、燃費は満タン法で49.2km/Lとなった。50km/Lには届かなかったが、かなりの好燃費なのは間違いない。

オーナーレビューなどでは「60km/Lの好燃費が出た」と紹介している例もあるが、これはかなりエコランをした場合ではないだろうか。大人しく走れば燃費は間違いなく伸びるが、筆者はワインディングでかなり回し、高速で最高速も試し、街なかではピークトルク域を多用してきびきび走らせた。そうした上での燃費としてこの数値には心底感心した。
燃費は国産250ccロードスポーツの約2倍良し、新車価格も概ね国産250ccロードスポーツ対して20~30万円は安い。それでいて、通勤からたまの日帰りツーリング、そしてごく稀に高速道路を交えた長旅……そんな使い方がこれほどフィットするモデルはそうそうないのではないか。だから50代のご同輩、ジクサー150は本当におすすめです。

ただし、オーナーとなって長く乗るならオイル管理には注意しようと思う。
ジクサー150のオイルは全容量で1.25L、オイル交換時で1L。非常に少ない量で各部の潤滑を頑張っているわけで、その分オイルの負担も大きいはず。オーナーレビューでは高回転域を多用した場合はオイルの減りが早まるとの声も見かけた(1000km走行で0.1Lほど減ったという)。好燃費で健気に頑張ってくれる分、せめてオイルのこまめなチェックと3000km前後での交換くらいは励行したいところだ。

奥多摩からの帰宅途上、走行417kmで燃料計が最後の一目盛に。同時にガソリンスタンドアイコンも点滅し始めるのだが、そこから100km以上は走り続けられると分かった。
燃料の残量警告は二段階あり、最初の警告(燃料計1目盛+ガソリンスタンドアイコン点滅)の後、バーグラフの1目盛自体が点滅して、最後通告のように給油を促す。この時点で走行距離は507kmだった。
給油時の走行距離は512kmで給油量は10.4L。満タン法で燃費は49.2km/Lだ。タンク容量は12Lだから多少誤差があっても1Lは残っており、ギリギリまで使えば計算上550kmほどは走行可能ということになる。

スズキ ジクサー150の特徴や装備を写真で解説

空冷単気筒OHC2バルブの154ccエンジンはボア・ストローク56.0×62.9mmとロングストローク型。
車体右側へ取り出されたエキパイの太い部分にキャタライザーを内蔵。フレームはエンジンを前後から支持するダイヤモンド型を採用。空冷フィンがかなり細かく刻まれているのが印象的だった。
コンパクトな液晶メーターは中央が速度計、上部にバーグラフ式回転計(250rpm刻み)で9500rpmからレッドゾーン。そのほかギヤポジション、燃料計、時計、オド/ツイントリップ、電圧などを表示。メーターの上にあるライトはシフトインジケーターで、任意の回転数を設定できる。
左スイッチは、前方からパッシング(黄色いボタン)、ヘッドライトハイロー切り替え、ウインカー、ホーン。
右スイッチボックスは、キルスイッチ、セルボタンというシンプルなレイアウト。
フロントフォークはインナーチューブ径41mmの正立式で十分な剛性を確保。ハンドル切れ角はスタンダードなロードスポーツとしては若干少なめに感じる。
燃料タンク容量は12Lで、250ccクラスに匹敵するボリューム感がある。このホールド感とこのボリュームが排気量クラス以上の走行安定感に貢献している印象。好燃費も手伝い十二分な航続距離を確保。
266mm径シングルディスク+片押し2ポットキャリパーのブレーキはABS付きで、必要十分な制動力を確保。純正装着のフロントタイヤはダンロップのアローマックスGT601F(バイアス)で100/80-17サイズ。
ベーシックなチェーン調整機構を持つスチール角パイプ製のスイングアーム。純正の428サイズチェーンはクリップ式のシールタイプ。メンテナンスに重宝するセンタースタンドは標準装備だ。メーカー指定のタイヤ空気圧は1/2名乗車時ともフロント200kPa、リヤ225kPa。
短めながら存在感あるマフラーは、十分消音されつつ小気味よい音を奏でる。純正装着のリヤタイヤはダンロップのK510B(ラジアル)で140/60-17サイズ。ブレーキは220mm径ディスク+片押し1ポットキャリパーの組合せ。
リヤのモノショックサスは7段階のプリロード調整機構付き。標準は最もソフトの側から2の位置。走り始めは硬い印象を受けたが、一人乗り+適度な荷物積載では必要十分な荷重性能だと思う。
ステップは身長173cmの体格で違和感のない適度な位置。ヒールプレートを使っての「カカトホールド」もしやすかった。
2020年型=2代目から前後セパレート型となったシート。座面はゆったりサイズで、やや前下がりになっている。インドでは2名乗車も日常なのか、後席の座面も十分な広さでクッションも肉厚だ。
リヤシート下には書類と工具+αの収納スペースがある。ETC車載器を取り付けるなら、ここに収納か。グラブバー取付けステー前方にある突起はヘルメットフックで、左右に1個ずつある。
身長173cmの筆者がまたがった状態。足着きは両足のカカトまで接地。ハンドル位置は近すぎず遠すぎずの位置で、程よく幅広い。

レポート●阪本一史 写真●モーサイ編集部/スズキ

スズキ ジクサー150主要諸元

■エンジン 空冷4サイクル単気筒OHC2バルブ ボア・ストローク56.0×62.9mm 排気量154cc 圧縮比9.8 燃料供給装置フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル

■性能 最高出力9.6kW(13ps)/8000rpm  最大トルク13Nm(1.3kgm)/5750rpm

■変速機 5段リターン 変速比 1速2.750 2速1.750 3速1.300 4速1.045 5速0.875 一次減速比3.181 二次減速比3.000

■寸法・重量 全長2020 全幅800 全高1035  軸距1335 シート高795(各mm) キャスター24°50′ トレール100mm タイヤF100/80-17 R140/60-17 車両重量139kg

■容量 燃料タンク12L  オイル1.25L

■価格 38万5000円

■車体色 トリトンブルーメタリック、グラススパークルブラック、ソニックシルバーメタリック/パールブレイズオレンジ

トリトンブルーメタリック
グラススパークルブラック
ソニックシルバーメタリック/パールブレイズオレンジ
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