バイクライフ

ヨーロッパ提言の「e-fuel」(人工ガソリン)って何だ!? 内燃機関バイクの救世主となるか

EUはエンジン禁止を見直し、「e-fuel」でカーボンニュートラルを目指す

今日、世界各地で気候変動が生じていると言われていますが、その要因のひとつとして挙げられているのが地球温暖化。
化石燃料を使う人類の経済活動が大気中の二酸化炭素濃度を上げ、二酸化炭素の温暖化効果によって平均気温が上がっていく……というのが基本的な構造ですが、つまり、気候変動は人為的なものだというのが世界のコンセンサスとなっています。

環境対策でよく目にする「カーボンニュートラル」というのは、人為的に排出される二酸化炭素を無くそうというものであり、その政策においてはEU(欧州連合)が積極的かつリードしているという面があります。

モビリティ関係でいえば、二酸化炭素を排出するエンジンを廃止し、ゼロエミッションと呼ばれる電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)に変更しようというのがEUで生まれた流れとなっています。

そんなEUでは、2035年以降は原則としてエンジン車の新車販売を禁止する方針を固めています。ただし例外として「e-fuel」を使う場合においては販売を認めるという、エンジン車が生き残る「抜け道」を用意したことが話題となりました。

こうしたニュースの見出しだけを都合よく解釈して「エンジン車はこれからも消えない」と思ってしまうのは間違いです。ポイントは「e-fuel」を大前提としていること、そしてカーボンニュートラルの方針はまったくブレていないということです。

「e-fuel」というのは、ある種の流行言葉のような部分もあり、特定の燃料規格を示す言葉ではありませんが、カーボンニュートラルな人工燃料を意味するというのは共通認識といえるでしょう。

具体的には、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによって生み出した電力により水電解をすることで用意した水素と、工場などから排出される(もしくは大気中に存在する)二酸化炭素を合成することで生み出された、ガソリンや軽油と似た特性の炭化水素(液体)を「e-fuel」と呼んでいます。

2021年時点での「e-fuel」試算コストはリッター700円

水の電気分解、水素と二酸化炭素の合成といった技術はすでに確立されています。そのため「e-fuel」を量産することはけっして難しいものではなく、合成するための製造コストを考えても、非現実的なものではありません。

たとえば日本の資源エネルギー庁が発表している試算コストでは、「e-fuel」製造にかかるコストはリッター当たり33円となっています。
ガソリンにかかっている税金は、リッター当たり53.8円となっています。「e-fuel」に関して揮発油税などを免除する方向となれば、製造コストは十分に吸収できそうです。

ただし、上記はあくまで「製造コスト」に限った話。
課題となるのは、カーボンニュートラルの水素を手に入れるために多大なコストがかかる点です。資源エネルギー庁が2021年に発表した試算によると、日本国内でカーボンニュートラルの水素を手に入れ、それを材料にして「e-fuel」を作ろうとすると、トータルで1リッター当たり700円のコストがかかるとされています。

コミューター的モデルは電動化、高級スポーツ車ユーザーは「e-fuel」と住み分けになる?

さすがに、これでは庶民が利用するエネルギーとしては現実的ではありません。
2023年時点でのガソリン価格(レギュラー)が160円前後ですから、4倍以上となります。
1リッターで100kmを走れるような超好燃費のバイクが登場したとしても、日常の足としてバイクを使うユーザーにとってはランニングコスト面でかなり厳しい状況となるでしょう。

技術革新などがあり、仮に「e-fuel」のコストがリッター当たり200円程度に収まったとしても、原付クラスの小型モビリティであれば家庭でバッテリーを充電して走る電動車のほうがよほど低コストで走ることができます。

実際、ホンダの一般ユーザー向け電動スクーター「EM1 e:」(原付一種)は1.3kWhの交換型バッテリーで53km走るというのがカタログスペックです。地域で異なる基本料金などを一旦無視して、全国の電気料金を平均すると1kWhの電気代は35円弱。

充電時のロスを考慮しても、交換型バッテリーを満充電するのに50円程度で済むといえます。つまり1km1円で走れるのが電動スクーターの経済性で、それには「e-fuel」では太刀打ちできません。

ホンダが初めて一般ユーザー向けに販売する原付一種の電動スクーター「EM1 e:」。2023年8月24日発売で、価格は29万9200円(バッテリー、充電器込みの価格)。
ホンダ「EM1 e:」は交換型バッテリーを採用し、シート下に搭載する。ゼロから満充電までのバッテリー充電時間は約6時間。

筆者が自動車メーカーの関係者やエンジニアにヒアリングした話では、「経済合理性からほとんどの二輪車は電動になるだろう。一部の趣味性が強いモデル(リッタークラスのスーパースポーツなど)についてはコスト度外視でe-fuelを使うことを認めるユーザーも出てくるかもしれないが……」という未来予想図を業界的には描いている印象です。
もちろん「e-fuel」の製造においてイノベーションが起き、再生可能エネルギーの電力よりもローコストになれば話は変わってくるでしょうが……。

レポート●山本晋也 写真●八重洲出版/ホンダ 編集●上野茂岐

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