バイクライフ

バイクの「車載エアバッグ」は普及する? クルマでは歩行者保護のエアバッグなど発展も進んでいるけれど……

バイク エアバッグ ホンダ PCX

「交通死亡事故ゼロ」を目指し、各自動車メーカーは様々な取り組みを行っている

今日、カーボンニュートラルを実現するために自動車業界の技術や資本が集中していると思いがちですが、じつは世界中の自動車メーカーやサプライヤーでは「交通死亡事故ゼロ」を目標に掲げていることが少なくありません。

日本メーカーでいえば、停止まで対応した衝突被害軽減ブレーキ「アイサイト」を実現したことでしられるスバルは、2030年までにスバル車が関わる交通死亡事故ゼロを目指しています。
そうした流れは二輪メーカーにも影響しています。二輪での交通死亡事故ゼロというのは素人目にもハードルが高いことは明白でしょうが、二輪・四輪の両方を生産しているホンダは、2050年にすべてのホンダ車がかかわる交通死亡事故ゼロを目指して様々な技術開発をしています。

たとえば二輪と四輪が関係する死亡事故では交差点での「右直事故」が多いと言われますが、右折する車両のセンサーで直進してくる車両を検知し、そうしたシチュエーションでの交通事故を減らすためのシステム開発を行うなど、先進安全機能は確実に進化しています。
車両同士がぶつかるような事故の発生を減らすことも必要ですが、それでも事故自体をゼロにするのは難しいのも事実。そこで事故が起きてしまったときの被害を低減するメカニズムの開発も進んでいます。

スバルは歩行者保護用エアバッグを装備した車両を販売中

すでに実車に投入されている技術としては、スバルが先行している歩行者保護エアバッグが知られているところでしょう。フロントバンパー内のセンサーが歩行者との接触を感知すると、ボンネット後方からエアバッグが飛び出してきて歩行者の頭がクルマの硬い部分(フロントガラスやAピラー)に当たることを防ごうというものです。

スバル・フォレスターの歩行者保護エアバッグ。

最近の自動車は衝突安全性を高めるために乗員が座っているキャビンスペースを頑丈にすることが必要ですが、そのためにはピラー部の強度を高くするのが技術的なトレンドとなっています。しかし、ピラーが丈夫ということは衝突時の攻撃性が強まるということでもあります。
歩行者やサイクリストを保護するためにAピラーをエアバッグなどで包むことで攻撃性を抑えるというの考え方が生まれているのです。

このように書くと、そもそも「ピラー部分を柔らかいもので巻いておけばいいじゃないか」と思うかもしれませんが、ピラーが太くなると死角が増えてしまい、それも事故を誘発してしまいます。可能な限り細くて頑丈なピラーにすることが必要と考えると、アクシデントが起きたときのみエアバッグでピラーを包むという手法は有効といえます。

それはさておき、こうした車外向け=衝突者向けのエアバッグは二輪に乗るライダーのことを考えているのでしょうか。

研究レベルではライダー保護エアバッグというアプローチもあるかもしれませんが、現時点でのトレンドとしては、ライダーの保護は二輪の車体にエアバッグを組み込むことで実現しようという方向で技術開発が進んでいます。

ホンダは車載エアバッグを採用したモデルを販売している。5代目ゴールドウイング(GL1800)の2007年モデルからエアバッグを装備したグレードを設定。同車が量産二輪車としては世界初のエアバッグ装着車である。現行型ゴールドウイングにもエアバッグは継続して採用されている。
2023年時点でホンダはゴールドウイング以外にエアバッグを装備した車両を販売していないが、多くの人が利用する小排気量車へ装備することも踏まえ、研究・開発は続けられている。写真は現行型PCXにエアバッグを装備した実験車両(2021年のもの)。

スウェーデンの大手自動車部品サプライヤーが二輪車用車載エアバッグを2025年から生産する予定、これを機に普及が進む!?

たとえば、エアバッグ業界のトップランナーといえるスウェーデンのオートリブ社は「Bag-on-bike」(自動二輪車本体へ搭載するエアバッグ)を開発、 2025年第1四半期より生産開始する予定と発表しています。

車体にセンサーやエアバッグといったユニットを搭載するということは設計段階から考慮する必要があるのは明らかで、サプライヤーであるオートリブ社が量産を開始するということは、どこかの二輪メーカーがBag-on-bikeを採用することを決定しているであろうことが容易に想像できます。
エアバッグ標準搭載の二輪車が街を走る時代は間近に迫っているのです。

スウェーデンのオートリブ社が開発した二輪車用車載エアバッグ「Bag-on-bike」。エアバッグそのものだけでなく、衝突検知センサーを含めた統合的なシステムとなっている。

現状では、二輪ライダー向けエアバッグというと、身に着けるベストタイプや内蔵型ジャケットが主流で、それは転倒時の安全性を高めることが主な狙いといえます。

公道における車両同士の衝突といったシチュエーションも考慮した二輪用エアバッグの登場と普及が、すべてのモビリティと歩行者を対象とした交通死亡事故ゼロに貢献することに期待したいと思います。

最後に大事なことをお伝えしたいと思います。エアバッグなどの技術進化も大切なファクターですが、交通死亡事故ゼロにはライダーの安全意識を高めることが何よりも重要なことは言うまでありません。

とはいえ、メーカーやサプライヤーの努力を無にするような、無茶なライディングをすることは避けてほしいと願うばかりです。


着用型エアバッグの例

■イタリアのライディングウエアメーカー・ダイネーゼは2000年頃からライダー着用型エアバッグの構想・研究をスタート。2006年にサーキットでのテストを行い、2007年にはレース(MotoGP)の現場へ投入。練習走行中に転倒したライダーのエアバッグが展開、その効果を初めて世界に公開する形となった。

2007年MotoGP バレンシアGPでシモーネ・グロツキー選手が練習走行中に転倒し、ダイネーゼのエアバッグが作動したときの瞬間。当時はエアバッグが外側に展開される

■レーシングスーツだけでなく、現在では通常のライディングジャケットにも数多くエアバッグ搭載モデルをラインアップするダイネーゼ。エアバッグはジャケット内側に展開され、下記写真の「スマートジャケットLSスポーツ」では胸や背面を保護する。

ダイネーゼ・スマートジャケットLSスポーツ(18万2600円)。メッシュ生地を使用した春・夏向けジャケットで、ベンチレーション機能や透湿性も備えている。エアバッグだけでなく、肩とヒジにプロテクターも装備する。

レポート●山本晋也/上野茂岐(キャプション) 写真●ホンダ/スバル/オートリブ/ダイネーゼ

写真・資料協力

■ダイネーゼジャパン
https://www.dainesejapan.com/

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