バイクライフ

EVには必須の「リチウムイオンバッテリー」、普通のクルマ用バッテリーにはナゼ採用されない?

バイクでは「リチウムイオンバッテリー」の純正採用例が出てきている

モビリティの電動化が進んでいる今日だが、電動パワートレインといえばバッテリーに溜めた電力によりモーターを駆動するという電気自動車のシステムを想像する人も多いことだろう。
いま日本で買える電気自動車(二輪車含む)の多くは、その駆動用バッテリーとして「リチウムイオンバッテリー」を採用している。
「クルマ用のバッテリー」といえば、オーソドックスな鉛蓄電池を思い浮かべるかもしれないが、鉛蓄電池は信頼性こそ高いが、非常に重いため駆動用バッテリーとしては向いていないのだ。

EM1 e: バッテリー ホンダ 電動バイク
電動二輪車もその多くがリチウムイオンバッテリーを用いている。写真はホンダ初の一般ユーザー向け電動バイク「EM1 e:」で、脱着交換式バッテリーを採用している。

逆にリチウムイオンバッテリーは、いまの量産技術でいえば軽さとコストにおいてウェルバランスのバッテリーといえる。そのため高電圧な駆動用バッテリーとしては主流になっている。

一方バイクに目を向けると、少しでも軽くしたいスーパースポーツモデルやオフロードの競技専用モデルにおいては、小型軽量というリチウムイオンバッテリーのメリットを活かして、エンジン始動のセルモーターや電装系に電力供給をするための補機用バッテリーとして採用する例が出てきている。
趣味性の強いバイクの場合、エンジンをかけずにいる期間が長くなってしまうこともあるが、リチウムイオンバッテリーは鉛蓄電池に比べて自己放電が少ない傾向にあるため、長期放置をしてもスマートなエンジン始動が期待できるのもメリットとなっている。
軽量かつ長寿命というのが補機用バッテリーとしてリチウムイオンバッテリーを採用する理由といえる。


バイクでリチウムイオンバッテリー純正採用車を近年拡大しているのがホンダだ。1000ccスーパースポーツのCBR1000RR SP/CBR1000RR-Rファイアブレード、大型アドベンチャーモデルのCRF1000Lアフリカツイン/CRF1100Lアフリカツイン、市販モトクロッサーのCRF450Rなどが採用例。またダカールラリー参戦マシンのCRF450ラリーにも採用されている。

リチウムイオンバッテリーを純正採用するホンダ CBR1000RR-RファイアブレードSP
ホンダの二輪車で純正採用されているエリーパワー社製のリチウムイオンバッテリー

電気自動車やハイブリッドカーでは当たり前だが、普通のバッテリー(補機用バッテリー)では見ないわけ

しかしながら、四輪ではスポーツモデルであっても12Vの補機用バッテリーとして、リチウムイオンバッテリーを採用しているケースは世界的にみても稀だ。
その大きな理由はコストであろう。アフターマーケットパーツでは競技用として12Vのリチウムイオンバッテリーが販売されているが、標準採用されている鉛蓄電池のおおよそ2倍〜10倍という価格帯となっている。特殊なスポーツカーを除くと、こうしたコストアップを許容できるモデルはほとんどないといえる。

リチウムイオンバッテリーは低温に弱いというウィークポイントがある。
バイクメーカーが標準採用している補機用リチウムイオンバッテリーは摂氏マイナス10度という低温化でもエンジン始動を可能にしているが、実際問題として道が凍りそうな気温、かつ雪が降っているような状況でバイクに乗るライダーはほとんどいないだろう。

四輪の場合は、降雪地域で使われることも考慮しなければならないし、もっと低い気温においてもエンジンを始動させる能力が求められる。摂氏マイナス25度の雪国で、外に駐車してキンキンに冷えたクルマでも問題なくエンジンを始動させる能力が求められる。

「衝撃によって発火しやすい特性」クルマのエンジンルーム搭載には不利

さらに四輪の補機用バッテリーはエンジンルームに置かれることが多いのもリチウムイオンバッテリーを採用するハードルを上げている部分もあるだろう。

四輪の場合は、様々な角度からの衝突実験をクリアしなければならない。中には64km/hのオフセット前面衝突といったハードなメニューもある。衝突時にはエンジンルームが原型をとどめないほど潰れてしまう……そんな実験映像を見たことがある人もいるのではないだろうか。

エンジンルームが潰れるのは、それによって衝撃を吸収して、乗員のいるキャビンを守るためなのだが、そんなエンジンルームにリチウムイオンバッテリーを置くのは、またリスクといえる。
なぜならリチウムイオンバッテリーは、衝撃によって内部が破壊されると激しく発火してしまうという特性があるからだ。そのため電気自動車やハイブリッドカーではリチウムイオンバッテリーが変形しないよう丈夫なケースで守っている。
リチウムイオンバッテリーを補機用バッテリーとして採用するために、そうした丈夫なケースを用意するのであれば、軽量化というメリットは相殺されてしまう。

もっともリチウムイオンバッテリーを車内に置いて、補機用バッテリーとして利用することができれば、衝突安全性は確保されると思うかもしれないが、そもそもリチウムイオンバッテリーがコスト高という課題をクリアできるわけではない。
そうであれば、いろいろな意味で手堅い鉛蓄電池を選ぶほうが合理的といえるのが、現時点でのトレンドだ。仮に将来的にリチウムイオンバッテリーのコストが相対的に下がるようなことあれば、話は変わるかもしれないが……。

レポート●山本晋也 写真●ホンダ/モーサイ編集部 編集●上野茂岐

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