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休暇を利用して、以前から行きたかったショップや飲食店を訪ねることも多くなる年末・年始。ドライブを兼ねたショッピングや食べ歩きで日ごろ行くことのない街に出かけると直面するのが、「クルマ、どこに止める?」という駐車場所の問題です。
2022年10月には、都内の人気ラーメン店がTwitterで「路上駐車する人が多くてひどい」と自店を訪れる客の駐車マナーに苦言を呈したうえで、昼の営業を休業するという事態が話題になりました。
路上駐車に対して向けられる世間の目は冷たく、市街地では駐車監視員による取り締まりも厳しいので、いい加減なこともできません。改めて、路上駐車の考え方や駐車が許される条件、違反になる条件を確認しておきましょう。
路上駐車が禁止されている場所は2パターン
「路上駐車は違法」というのは当然のルールだと思われがちですが、法律の定めをひも解くと実はそうではありません。道路交通法には「道路に駐車してはいけない」とは書かれていないのです。
ただし、次の2パターンのうち、いずれかに該当する場合は路上駐車禁止です。
●標識や標示によって駐車が禁止されている場所(指定禁止場所)
●法律で駐車禁止が定められている場所(法定禁止場所)
駐車禁止の標識が立っていないからといって安心してはいけません。
標識・表示による規制がなくても、次の場所は駐車や駐停車が禁止されています。
【駐停車禁止場所】
交差点・横断歩道・自転車横断帯・踏切・軌道敷内・坂の頂上付近勾配の急な坂またはトンネル
交差点の側端または道路の曲がり角から5メートル以内の部分
横断歩道または自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5メートル以内の部分
安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分および当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
乗合自動車の停留所またはトロリーバスもしくは路面電車の停留場を表示する標示柱または標示板が設けられている位置から10メートル以内の部分
※当該停留所または停留場にかかる運行系統に属する乗合自動車、トロリーバスまたは路面電車の運行時間中に限る
踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10メートル以内の部分
【駐車禁止場所】
人の乗降、貨物の積卸し、駐車または自動車の格納もしくは修理のため道路外に設けられた施設または場所の道路に接する自動車用の出入口から3メートル以内の部分
道路工事が行なわれている場合における当該工事区域の側端から5メートル以内の部分
消防用機械器具の置場もしくは消防用防火水槽そうの側端またはこれらの道路に接する出入口から5メートル以内の部分
消火栓、指定消防水利の標識が設けられている位置または消防用防火水槽そうの吸水口もしくは吸管投入孔から5メートル以内の部分
運転免許の学科ではこれらの法定禁止場所についても学ぶはずですが、忘れてしまっている方も多いでしょう。これらの場所は、たとえ標識・標示がなくても駐車や駐停車が禁止されていますが、言い換えればここに挙げた条件に該当しなければ「駐車・駐停車違反にはならない」ことになります。
もっとも、市街地では多くの場所が指定禁止、そうでなくても法定禁止に該当するので、路上駐車OKという場所はほとんどないというのが現実です。
駐車禁止場所ではなくても違反になるケースがある
指定・法定のどちらにも該当しなければ、駐車や駐停車禁止の違反にはなりません。ただし、禁止場所に該当しなくても路上駐車が違反になることがあります。クルマやバイクを含めた「車両」を駐停車する際は、以下のように法律で定められた方法に従わなくてはなりません。
駐車する際は、道路の左側端に沿い、かつ、ほかの交通の妨害にならないようにしなくてはならない
人の乗降や貨物の積卸しで停車するときも、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、ほかの交通の妨害にならないようにしなくてはならない
路側帯が設けられており、路側帯の幅が0.75メートル以下なら車道の左側端に沿い、路側帯の幅が0.75メートル超なら左側に0.75メートル以上の余地を空けて路側帯に入って駐車する
※白の実線2本や白の実線と破線の標示がある場合は路側帯に入れない
歩道上に駐車してはいけない
道路の右側に駐車してはいけない ※いわゆる「逆駐」
駐停車している車両の右側に並んで駐車してはいけない ※いわゆる「二重駐車」
道路に対して斜めに駐車してはいけない
これらのルールに従わない場合は「駐車・停車の方法」の違反となります。また、これらのルールに従っていても、道路の右側に3.5メートル以上の余地がなければ「無余地駐車」という違反です。
さらに、駐停車の方法や余地の確保を守っていても、同じ場所に12時間以上、夜間は8時間以上にわたって駐車すると「道路を車庫代わりにしている」と判断され、自動車の保管場所の確保等に関する法律、通称「車庫法」の違反となります。
指定・法定禁止場所への駐停車や駐停車の方法違反、無余地駐車は道路交通法違反で、こちらは違反切符による処理が可能です。ところが車庫法違反は違反切符による処理の対象外なので反則金の納付では済まされず、3か月以下の懲役または20万円以下の罰金が科せられます。軽微な違反行為として処理されるのではなく犯罪として前科がついてしまうので、長時間の路上駐車は絶対にやめましょう。
路上駐車OKの条件を理解すれば路駐は可能! だが、都市部に限れば適応する場所を見つけるのは難しいかも?
どこかに駐車したいのに近くに有料の駐車場やパーキングメーターのある時間制限駐車区間がないと「路上駐車するしかない」と考えるかもしれません。
やむを得ず路上駐車する際は、まず周囲に駐車禁止・駐停車禁止の標識や標示がないことを確認しましょう。標識・標示によって禁止されていなくても、交差点や曲がり角、駐車場や店舗の出入口付近などは駐車できません。クルマの左には歩行者が、右にはほかのクルマが安全に通行できるだけの余地も必要です。
・標識・標示や法律によって駐車・駐停車が禁止されている場所ではないこと
・クルマの左右に必要な余地を空けること
この2点を満たしていれば、基本的に路上駐車でも違反にはなりません。
とはいえ、市街地にはこのような条件を満たす場所が少なく、たとえ条件を満たしていても交通量が多い道路では迷惑になってしまうでしょう。駐車違反にならなくても、自分の駐車が原因でほかのクルマが事故を起こすとその責任の一部が課せられることもあります。
事情があってクルマに戻れなくなると、車庫法違反として厳しく処分される危険もあるので、少し離れていて面倒でも安全な駐車場を探して利用するのがベストです。短時間なら市街地でも数百円の出費で済むはずなので「小銭程度でクルマも免許も守れて無用なトラブルも回避できるなら安いものだ」と考えましょう。
レポート●鷹橋公宣
元警察官・刑事のwebライター。
現職時代は知能犯刑事として勤務。退職後は法律事務所のコンテンツ執筆のほか、noteでは元刑事の経験を活かした役立つ情報などを発信している。