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【ダンロップ・ロードスマート4をテスト】疲労度を研究した「長旅に効く」タイヤがさらに進化!

1月23日追記:カワサキZ900RSとスズキ・ハヤブサに装着した場合の短評を追加いたしました

『疲労軽減』に着目したロードスマートシリーズの最新作

「ツーリングタイヤ」の命題と言ったら、昔から筆頭に挙がるのはウェット路面での安心感とライフの長さで、近年ではそれらに加えて、冷間時の暖まりの早さや摩耗時の性能維持なども、重要な課題になっている。
そういう見方においては、ダンロップのロードスマートシリーズも、基本的な方向性は他社のツーリングタイヤと同様だ。
2020年3月1日から発売が始まるロードスマート4が導入した、偏摩耗を抑制するトレッドパターンや、ロードスポーツ2の技術を転用したPCL構造、新開発のHI SILICA Xコンパウンドなどは、いずれも前述した性能の向上に貢献する技術なのだから。
ウェット性能とライフの向上は、ツーリングライダーにとっては歓迎するべき要素。しかもロードスマート4の場合は、走行距離が伸びて摩耗が進んでも、性能の劣化は最小限に抑えられるという。

パッと見では先代を継承していると思えるものの、ロードスマート4のトレッドパターンは完全な新作。剛性向上と偏摩耗抑制を実現するため、溝を細くすると同時に断面角度を刷新している

こちらは従来モデルのロードスマート3

リヤのコンパウンドを2層構造とし、深層に高発熱ゴムを使用するPCL構造は、ロードスポーツ2で培った技術の転用。なおリヤの表層コンパウントは、中央と左右で特性が異なる3分割式

ウェット路面での安心感とライフの向上を目指して、ロードスマートⅣは新開発コンパウンドのHI SILICA Xを採用。ロードスマートⅢと比較すると、シリカの充填比率は約150%となっている

ただしロードスマートシリーズは、2015年に発売を開始した先代のロードスマート3から、他社のツーリングタイヤではめったに話題にならない、“疲労軽減”に注力していることを公表し、その姿勢は新作のロードスマート4でも維持されている。
なおロードスマート4を開発するにあたって、横浜国立大学の名誉教授である小泉淳一氏の協力を仰いだダンロップは、ロードスマート3と4の比較テストを行う際に、ライダーの身体に心拍数センサーを装着して交感神経/副交感神経バランスの解析を行い、4の特性が疲労軽減に大いに役立つことを実証。こういった科学的なアプローチは、2輪業界では珍しい試みだろう。
素人目には数値化しづらそうな疲労度だが、現代の技術を用いれば“ストレス”として解析することが可能なのだ。タイヤメーカーでこういった実証を行っているのは、世界で唯一、ダンロップだけではないだろうか。

ロードスマート4発表試乗会には横浜国立大学の名誉教授である小泉淳一氏も登壇し、疲労が発生する原因とその解析方法を解説

ロードスマート3とロードスマート4のハンドリング比較

ロードスマート4の発表試乗会で、ダンロップが準備した車両は、FJR1300、ハヤブサ、ニンジャ1000、GSX-S1000、Z900RS、XSR900、SV650など、非常にバラエティ富んでいて、いずれも比較用として先代の3を履いた車両も用意。
残念ながらウェット路面は走れなかったものの、数時間に及んだ試乗中の気温が10度以下だったこと考えれば、ツーリングタイヤの素性を知るには悪くない状況だ。というわけで、さまざまな車両で感じたロードスマート3と4の差異を紹介しよう。

ロードスマート4で最初に感心したのは、冷間時の暖まりの早さと乗り心地のよさである。
この2つの要素に関しては、べつにロードスマート3の印象が悪かったわけでではないものの、4の進化は目覚ましく、特に乗り心地に関しては、まだここまで改善の余地があったのか!と驚くほど。これまでの僕は乗り心地を改善する最も有効な手法は、高品質なアフターマーケット製リヤショックの導入だと思っていたのだが、今後はそれ以前の話として、ロードスマート4の装着を考えることになりそうだ。

非常に良質なオールラウンドスポーツバイクなのだが、乗り心地はいまひとつ……の感があるスズキGSX-S1000/F。ロードスマート4はその問題を見事に解消してくれた

カワサキZ900RSの純正装着タイヤは、あらゆる状況をソツなくこなすダンロップGPR-300。ロードスマート4を装着すれば、あらゆる場面でソツがないどころか、1クラス上の充実感が得られる

ロードスマート4には、バイクのキャラクターをフレンドリーにする資質もあると思う。中でもスズキ・ハヤブサやヤマハFJR1300といった重量車では、その感触が非常にわかりやすかった

3と4は構造からして別物。乗り心地の改善を目指した4は、フロントにしなやかな特性のアラミドJLB、リヤにはカーカスラインのアールを大きくしたIPTプロファイルを採用している

とはいえ、僕がロードスマート4で最も心を動かされたのは、コーナリングの手応えだった。
この件については、ちょっと話が長くなるのだが、まず先々代のロードスマート2が「ツーリングタイヤらしからぬ」と言いたくなる、シャープでクイックな旋回性を実現していたのに対して、先代のロードスマート3は乗り手の操作に対する車体の反応が、よく言えば穏やか、悪く言えばルーズになっていた。その特性に対して、同業者の中には異論を述べる人がいたけれど、ハイグリップスポーツタイヤとは一線を画する、ツーリングに特化したロードスマート3の資質に、僕はかなりの好感を抱いたのである。
だがしかし、ロードスマート4の試乗会前日に配布されたプレスリリースには、キャンバースラストチューニングによって、軽快なロール特性を実現、操舵の重さを15%低減、などといった文字が記されていた。それを読んだ瞬間、僕は何だかダンロップに裏切られた気分になったのだが……。

プロファイルやパターン剛性の変更でコーナリング特性を構築することを、ダンロップは「キャンバースラストチューニング」と呼ぶ。軽快さを重視したロードスマート4は、フロントのプロファイルをやや尖らせると同時にパターン剛性を低く設定し、リヤはセンターにフラットな面を設けつつわずかに大径化されている

そんなことはまったくなかった。グイグイ曲がるのでなければ、まったりしているわけでもない、ロードスマート4のコーナリングは非常に実直でナチュラルだったのだ。
乗り手の操作に対する車体の反応と旋回性を比率で表すなら、ロードスマート4は路面状況や速度域に関わらず1:1という感触で、そう考えると先代のロードスマート3は1:0.8、ハイグリップ指向のα-14は1:1.5、ロードスポーツ2は1:1.3くらいだったような気がしてくる。
いずれにしてもロードスマート4のコーナリングは、先代の3より軽快かつイージーになっていて、それでいて高荷重を要求する雰囲気はまったくない。この絶妙な設定は、理想のツーリングタイヤを念頭に置いて、歴代ロードスマートシリーズで試行錯誤を積み重ねて来た、ダンロップならではだと思う。

また、ヤマハFJR1300やカワサキ1400GTR、BMW R1250RT、K1600GT/GTLといった、重量級ツアラーに適合する製品として、ロードスマート4は構造の強化を図った「GTスペック」がラインアップされる点もロードスマート4の特徴だ。
(GTスペックは、フロントが120/70ZR17の1種、リヤが180/55ZR17、190/50ZR17、190/55ZR17の3種)

なお肝心の“疲労軽減”に関しては、今回の試乗だけでは断言できないものの、乗り心地が良好なうえに、外乱の影響をあまり受けないから、路面の凹凸をムキになって回避する必要がなく、どんな場面でもスムーズにコーナーをクリアして行けるロードスマート4は(逆に4を体験した後だと、3のコーナリングは穏やかな反応を前提とした準備が必要だった)、高いアベレージスピードを維持しながら、長距離を淡々と走り続けられそうである。
例えば同じ車両を所有する友人とロングツーリングに出かけて、1台はロードスマート3、もう1台がロードスマート4を履いていたら、帰宅後の疲労感には相当な差が生まれるはずだ。

スポーツバイクのリプレイスタイヤで候補によく挙がるのは、α-14やロードスポーツ2といったハイグリップスポーツ系。ただしストリートがメインなら、ロードスマート4を選択肢に入れるべきだろう

歴代ロードスマートシリーズの慣例に従い、サイズはかなり豊富。近年の400cc~オーバー1000ccモデルに適合する前後17インチだけではなく、旧車ユーザーにうれしい前後18インチも設定。価格はオープン

 

問い合わせ●ダンロップ
TEL0120-39-2788(お客様相談室)
https://dunlop-motorcycletyres.com/

レポート●中村友彦 写真●真弓悟史 編集●上野茂岐

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