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バイクの美しさをキープできる各種コーティング。なかでも山城の開発したCR-1は100%のガラスコーティングなのが特徴。熱に強く、紫外線で劣化せず、被膜が極薄のためマット塗装にも施工できるといった特徴を持つ。そんなバイク専用ガラスコーティングのCR-1を、編集部員の愛車に実際に施工。その作業工程と効果を取材した。
そもそも「ガラスコーティング」ってなに?
クルマやバイクを新車で購入する際、販売店で「ガラスコーティング」を薦められた経験はないだろうか。恥ずかしながら筆者は「ガラスのように硬くてつるつるしたコーティング」という程度の認識しか持っていなかった。販売店ではさまざまなコーティングが用意されており、その最高級コースが「ガラスコーティング」で、高い=何かしらすごいんだろう、と。でも、ガラスコーティングってよく考えるといったい何なんだろうか?
山城のCR-1ガラスコーティングは、数ある「ガラスコーティング」の中でもよく選ばれている。
一体なぜなのか?
CR-1の施工業者向けの研修施設である「CR-1 STUDIO TOKYO」にお邪魔して、CR-1の技術解説を受けつつ、実際に施工してもらった。
山城 CR-1で扱う100%本物のガラスコーティングとは
山城CR-1のウエブサイトを見ると、CR-1は「100%本物のガラスコーティング」であるとうたわれている。「ガラスのような」コーティングではなく、本物のガラスを使ったコーティング……。しかし文系の筆者には、あの硬いガラスがどうやって複雑な形状をしている車体に密着しているのか、現地で実際に説明を受けながら施工してもらうまで、よく分かっていなかった。
吹き付けられる「ガラス」とは? どろどろに溶かして熱くなっているのだろうか?
そんな素人丸出しの質問を投げかけたところ、山城の担当者から分かりやすい答えが返ってきた。
「もちろん常温です(笑)。一般的なガラスコーティングは、樹脂や油脂を基にシリコンやフッ素を添加していますが、CR-1は違います。文字どおり、100%本物のガラス被膜を形成するガラスコーティングです。その液剤が空気中の水分と化学反応し、最終的には施工面にガラス成分のみが残されて被膜になるんです」
そう言って、コーティング液の入ったボトルを見せてくれた。
空気中の水分と化学反応を起こしてしまうだけに、「使用する分だけここから取り出した後は、ボトル内を窒素で満たし、未使用分の液が劣化しないよう取り扱いに注意が必要」なのだとか。
管理の難しい液剤を使っても100%のガラスにこだわる
CR-1はバイク全体の美しい外観を保つべく、バイク専用に開発されたものだ。当然、エンジンやエキパイ、ブレーキキャリパーなどといった高温になる部分への施工も含んでいる。100%のガラス被膜だからこそ耐熱温度が1300℃もあり、高温になる部分へも施工が可能となる。
しかも、純度100%のガラスは完全な無機質。化学的に非常に安定しており、紫外線による経年劣化もほとんどない。物理的に削り取ったりしないかぎりその被膜は半永久的に保たれ、バイクの美しさをキープしてくれるのだ。
一番人気の「フルコース」を体験!
筆者のバイクは2020年に新車で購入したヤマハ MT-03。これに施工してもらうことにしたので、まずは研磨からスタート。しかし、新車購入の際に施工してもらうのがほとんどである「CR-1 ガラスコーティング」の「フルコース」にはあらかじめ研磨、洗車、脱水、脱脂が含まれている。新車でも研磨や洗車、脱脂が必要なのだろうか?
「新車でも輸送の間に汚れは付着しますし、場合によっては細かなキズもあります。この下地作りの工程は新車であっても大変重要なのです。CR-1の作業工程は『段取り8割』。下地作りに非常に時間をかけます」
ちょっと考えればわかるような質問をした自分が恥ずかしい。
CR-1ガラスコーティングはキズを埋めるような厚塗りではない
施工してもらうMT-03にはすでにキズがあった。コーティング剤がキズを埋めてくれて、目立たなくなるのかと思っていたが、そうではないらしい。小キズはあくまで下地作りの工程である「研磨」によって目立たなくする。CR-1ガラスコーティングはあくまで下地の表面に沿うように薄く塗る。凸凹の表面は凸凹のままということだ。
正直なところ、厚く塗ってくれたほうが得した気分になるし、念入りで頑丈な気がするのだが……。
「例えば燃料タンクは外気温によって収縮・膨張しますよね。被膜を厚くするとそれらの動きに被膜が追随できなくなり、ガラスコーティングにクラック(ヒビ)が入る恐れがあるんです。その点CR-1は0.1マイクロメートル(1万分の1mm!)と非常に薄い被膜なので、クラックが入らないのです。もちろん薄くてもJISの鉛筆硬度試験で9Hという硬さを実現しています。被膜が薄いので、つや消し塗装のヘルメットなども質感をそのままにコーティングできるという利点もあります」
「厚塗りはしない」というその塗装工程を見守っていると、非常に繊細な手つきで少しずつミストを吹きかけている。熟練の技といったふうだ。このような繊細さが要求される作業を、どの加盟店でも同じクオリティで再現してもらえるのかだろうか? 結論から言えば、それについてはまったく心配する必要はないとのこと。
「CR-1ガラスコーティングは、専用の施設で座学から実技までしっかりと研修を受けたプロショップのみで施工いただけます。また、下地作りからCR-1の塗布に至るまで、プロショップ全店で同じ「こだわりの道具」を使います。もちろん、山城から全国各地のプロショップに出向いてフォローもしています。お客さまの多くがご自身の2台目以降のバイクへの施工を希望してくれますし、家族や仲間にお薦めしてくれる方もいます。クオリティについてはご満足いただけていると思っています」
仕上がりの美しさにほれぼれ!
今回、比較のためにタンクカバーの右半分にだけガラスコーティングを施工してもらったが、その仕上がりのすばらしさは一目瞭然。
また、CR-1を施工した後は、とにかく汚れが付きにくくなり、水で流せばほとんど落ちてしまう。汚れやすいエンジンやホイールなども、洗車が劇的に楽になった。お手入れの時間が短くなった分、もっとツーリングを楽しめそうだ。
CR-1は、すでに所有している愛車への施工も可能だが、新車購入時に施工した方が効果的だという。筆者も、現在納車待ちしている新車にぜひ施工してもらおうとの考えを固めた。
CR-1ガラスコーティングは、全国のバイクディーラー、二輪用品店など認定プロショップで施工してもらえる。
人気メニュー「フルコース」は、6万2700円〜(124cc以下のオフロード・新車の場合)。バイクの種類(ネイキッドかフルカウルか)、排気量の大小、新車かどうかなど、細かな料金設定があるので、自分のバイクがどれに当てはまるのか、まずはCR-1ウェブサイトでチェックしてもらいたい。
※キズの有無や大きさなどによって追加料金が発生する場合もある。
レポート●MC編集部・仲田素子 写真●小見哲彦