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■筆者のYZF-R1に入れたのは、A.S.H. FSE MOTO-SPEC(現行はリニューアルされ、FSE E-Specとして販売)。100%エステル化学合成油を使用し、群を抜く潤滑性・耐摩耗性とともに耐久性も実現。レースシーンの高温高圧下に耐えうる性能を持つ、ということはすなわち、公道ライダーが体験する苛酷な猛暑ツーリングでも同様に粘度が落ちず、エンジンを守ってくれる。5w-40、10w-40、10w-50。価格は5940円(税込)。
「ノンポリマー」だから叶えられた、粘度低下率ゼロ!
こちら「モーサイ」で折に触れご紹介しているアッシュオイル。繰り返しの紹介には理由がある。その徹底した品質へのこだわりだ。
一般的なエンジンオイルでは、増粘剤「ポリマー」を配合することが多い。このポリマー、オイルの粘度調整の目的で配合されているのだが、エンジン内で高温高圧にさらされると分子がちぎれ、次第にスラッジ化していく。こうなると、オイルはもう設計通りの性能を発揮できない。これが俗にいう「エンジンオイルの劣化」の要因のひとつである。
粘度調整のためにポリマーを使うと、結局オイルの劣化に繋がってしまう。ならばどうすればいいのか? その問題に正面から挑戦したのがアッシュオイルだ。開発者のJ.C.D.プロダクツ・岸野氏が導き出した結論は「増粘剤としてのポリマーを用いない、ノンポリマー仕様のオイルを作る」ことだった。
そんなわけで、アッシュオイルは全グレードでノンポリマー。ベースオイルの配合を工夫することで「使い続けても油膜が切れない」粘度低下率0%を実現させているのである。
ノンポリマー=スラッジが発生しにくい=エンジン内をクリーンに保つ効果も期待できる。しかも粘度低下率ゼロ……ここまでメリットが揃っている高品質なオイルはそうそうない。
そこではたと思い立ったのが、筆者が所有している初期型YZF-R1へのアッシュオイルの投入だ。昨年中古の車体を購入して数ヶ月後にアッシュオイルを投入、これまで1年間かけてフィーリングをテストしてきた結果をご紹介したい。
お年を召したエンジンを労るためにも「アッシュオイル」! ……快調とはいえ、何せ御年23歳のYZF-R1なので
ヤマハYZF-R1は、1998年に発売され「リッタースーパースポーツ」というジャンルを形成するさきがけとなった名車。筆者が所有するのは、発売2年目の1999年式(仕様は初年度の1998年式と同一)で、発売から23年が経過している。こちら縁あって昨年中古の車体を購入したもの。
前オーナーが大切にしていたらしく、美しい外観で、SS元祖としての存在感は健在。エンジンフィールも年式を考えれば悪くはない。とはいえ、エンジン内部のヤレ、特にシール類の劣化による吹き抜けや、猛暑による熱ダレは避けられない。さらに気になるのが変速時のショックである。
オイル本来の役割である潤滑のみならず、清浄、冷却、密閉、防錆まで高い性能を誇るアッシュオイルを使えば、旧車R1のエンジンを乗りながら労ることに繋がるのではないか? こう考えて、開発者の岸野氏に相談してみた。相談内容は、
・オイルのグレードは何を選ぶか?
・どの粘度を使うのが適切か?
である。
ちなみに、アッシュオイルには4つのグレードがあって、今回岸野氏にすすめられたのが最上位グレードの「FSE(100%エステル化学合成オイル)」! 植物油由来のエステル化学合成油を100%使用したエンジンオイルで、エンジン内部に二重の保護膜を作り抜群の潤滑性を発揮するという。
「どうせ使うのなら、最上位グレードでアッシュオイルの性能を体感してもらいたい」というのだが、実はこのグレード、なんとワークスレベルのモータースポーツにも使われるという、アッシュのフラッグシップオイルなのである。
ちなみに、オイル粘度は原則としてメーカー指定を選べば間違いない、ということで、ヤマハの指定する「10W-40」をチョイスした。「オイル粘度はワイドレンジの方がいいだろう」と勝手に思い込んでいたのですが、そうではないのですね……勉強になります。
特別なオイルでも、交換手順は基本通り。適切なオイル量になるよう注意を
高品質なアッシュオイルも、交換手順自体は普通のオイル交換と同じ。
走行後・もしくは暖機運転後、オイルが温まった状態でドレンボルトを外して古いオイルを抜き、2回に1回はエンジンに取り付けられているオイルフィルターも新品に交換する。その後、ドレンボルトを組み付け、エンジン上部にあるオイル注入口から新しいオイルを規定量まで注ぎ、キャップを閉めて完了となる。まったく通常どおりのオイル交換作業だ。
抜いた古いオイルを観察すると「こんなに汚れているのか!」と驚かされた。普段自分で整備はしない自分でも、このくらいの作業は簡単。たまには自分でオイル交換してみるのも面白い。
なお、オイル交換時は規定量通りの注入を厳守しよう。エンジン下部についているオイル点検窓、これがついていない車体では、オイルフィラーキャップについているレベルゲージを使って確認する。
ちなみに旧車の場合、金属部品同士のクリアランスが広がっていることがあり、走っているうちにエンジンオイルが減ってしまうこともある。オイル交換時期でなくてもマメにオイルレベルをチェックするのがおすすめだ。
真夏のオイル交換で、シフトフィールと水温に大きな変化があった!
高品質なエンジンオイルで、旧車SSのエンジンを労る……といっても、実は交換時は半信半疑だった。というのも、筆者はこれまで一般的に言われる有名ブランドの高級オイルを使用した経験が複数回ある。正直に言うと、フィーリングの向上はイイ!と感じるものも「それなり……」と感じるものもある。そしてファーストインプレッションの素晴らしさに感動したオイルでも、1000km走ったあたりからもうシフトフィールが悪くなり「持ちが悪すぎる!」と残念に思うこともあったからだ。
そんな微妙な記憶がフラッシュバックしながら、アッシュオイルへのオイル交換。
ところが、試走してみた結果、シフトフィールが大幅に改善していることを即座に体感できたのである。通常、オイル交換直後はどんなオイルを入れてもそれなりにシフトフィールがよくなるものだが、アッシュオイルはその度合いが別次元だった。
ニュートラルから1速へ入れる時は、わずかに「ガシャッ」というショックを感じるが、2速以上の変速では、シフトアップ・シフトダウンともほとんどショックを感じない。足に伝わる「カチッ」という節度感のあるシフトフィールは、これまでさまざまなオイルを使ってきた中でも未体験のもので、非常に驚かされた。
さらに、交換は昨年8月。連日35度Cを超えるレベルの猛暑が続くタイミングだったが、アッシュオイルへの交換以降は流れの悪い街なかを走っても、交換前より明らかに水温の上がり方が緩やかになった。
冷却ファンの回る頻度も少なくなり、なるほどエンジンオイルには確かに冷却作用があるのだな……と実感させられた。
加えて、1年経って燃費メモを振り返ってみると、交換前はリッター15~16km、アッシュオイルへ交換した後はリッター17~18kmと、燃費も少々向上しているのが嬉しいポイントだった。
1年以上経っても、ノンポリマーが効いている! まだ劣化を感じず!!
筆者のYZF-R1は、現時点でアッシュオイルに交換後13ヶ月。約2500kmを走行した。
一般的なオイル交換の推奨サイクルは、5000kmもしくは12ヶ月とされるため、既に推奨サイクルを超えて走っているが、100%エステル化学合成油は一般的なエンジンオイルよりも性能が高く、さらにアッシュオイルには、使い続けても粘度が落ちない=油膜が切れにくいという特徴がある。岸野氏によれば「アッシュオイルも長く使えばオイルの自然劣化は発生します」とのことだが、まだ体感できるほどの劣化は少ない……ということで、引き続きこのまま様子を見ようと思っているところ。
もちろん、アッシュオイルならではのロングライフの恩恵は受けつつ、愛車が訴えてくる変化には耳を傾け、もしオイルの劣化を感じた時にはちゃんとオイル交換を実施したい。
アッシュオイルの力を借りて、御年23年の旧車SSをまだまだ楽しんでいきたい気持ちだ。
レポート&撮影●増田恵子
問い合わせ●ジェイシーディジャパンTEL075-644-4176
○ジェイシーディプロダクツ
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