これまで様々な車種にアッシュオイルを投入し、その実力を測って来た当コーナー。空冷エンジンの旧車から水冷エンジンの比較的新しいモデルまで、原付クラスでもナナハンでもテストを行ってきた。
……が、まだテストをしていないエンジンがあった。
そう、スズキ伝統の油冷エンジンだ。
2020年のジクサー250/250SFの登場により、にわかに(?)注目が集まった油冷エンジン。ギヤやピストンの潤滑のみならず、エンジン本体の冷却にもエンジンオイルを活用するのだから、エンジンオイルの重要度もほかのエンジンよりも高いはずである。多分。
今回はSACS(Suzuki Advanced Cooling System)──つまり、旧型の油冷エンジンとA.S.Hの相性を見ていこうと思う。
スズキの新/旧油冷エンジンは何が違うの?
ジクサー250/SF250に搭載される新型油冷システムSOCS(Suzuki Oil Cooling System)はエンジン内部の水冷エンジンの冷却水のように、冷却経路(オイルジャケット)にオイルを通して冷却する。エンジンの外観も冷却フィンはなく、水冷エンジンのような見た目となっている。
それに対して従来の油冷システムSACSは、燃焼室やピストンにはオイルを噴射して冷却。シリンダーの冷却は細かく切った空冷フィンの間に走行風を通し行っている。
またアッシュオイルを取り扱うジェイシーディプロダクツ代表で、自身も開発に携わている岸野 修さん曰く──。
「オイルを各部へ吹つけた際にオイルが各部品に吸着してくれないと、油冷効果は薄れてしまいます。オイルが粘度低下すると熱を吸収する前に流れ去ってしまいますから。つまり、粘度が安定しているオイルほど各部品にオイルがしっかりとまとわりついて熱を吸収するので、冷却効率が高まると言えます」とのこと。
粘度低下の原因となるポリマー(増粘剤)を使わず、「熱ダレが少ない」という強みを持ったA.S.Hオイルは、油冷エンジンとも相性がいいということだろう。
スズキ油冷マシン GSX1100Fに化学合成油「FS MOTO-SPEC」を投入
今回使用したのはレースシーンでも対応できるハイスペックさと高いロングライフ性を両立させた化学合成油「FS MOTO-SPEC」。
粘度は10W-40、10W-50の2種類あるが、今回は10W-40をチョイスした。
昨今は新型コロナウイルスのアンチクショウのおかげでツーリングなどもあまり行けず、前回のオイル交換から800km程しか走れていないのだが、前回オイルを換えたのは2020年の2月……ほぼ1年近く経ってしまっているので、オイル交換のサイクルから見れば適当であろう。
エンジン回転感とミッション:気付いたふたつの変化
オイル交換後一番に気付いたのが、アイドリング時の静粛性の向上。これまで常に付きまとっていた「カシャカシャ」という、メカロスの音が消えたのである。
そしてもうひとつ、シフトタッチがスムーズになった点のもわかりやすい改善ポイント。
これまでシフトアップ・ダウンのときに常々感じていた、「カカカ……ガシャコン」とでもいうべき引っかかりがなくなり、「シャコン」と非常にスムーズに入るようになった。
距離は走っていないとはいえ、1年近く使い古したオイルからまっさらな新品オイルに交換したのだから、フィーリングが向上するのは当然だろう。
が、オイル交換で今回ほど劇的な変化が見られたことはないので、個人的にはかなり驚いている。
その一方で、首都圏でも最高気温が1桁台が続く冬期なのと、オイルに負荷をかける(?)ハードな走りをテストできていないので、オイル冷却効果にどのような変化が出るかなどを調査しきれなかったのがくやまれるところ(もっともGSX1100Fに油温計などを備えている訳ではないので、そもそも温度変化などを目で確認できないのだが……)。
春~夏にかけて気温が上がった環境のなかで(&世間がある程度落ち着いていれば)しっかり距離を重ねたとき、エンジンフィーリングにどんな変化があるかを調査・レポートしていきたい。
レポート&写真●モーサイ編集部・加賀
A.S.H.クオリティの真髄
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