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レース以外でも効果あり!エアロヘルメットは速さだけじゃなく「快適な走りにも効く」

ロードレースの空力技術が一般ユーザーのヘルメットにも

後頭部に取り付けることでスタビリティを高め、首の自由度を上げるオプションパーツの「レーシング・スポイラー」を装着したアライの最高峰フルフェイスヘルメット、RX-7X。

最近のヘルメットの独特なフォルム、気になりませんか?
あの後ろ側に伸びた形状には、もちろん理由があるんです。「エアロヘルメット」なんて呼ばれる形状は空力効果をねらったもので、ロードレース用ヘルメットから始まったものですが、ツーリングでも十分その効果を実感できます。

空力効果の恩恵を受けて、ヘルメットが走行風でフレないようになれば、視界が安定していて疲れにくくなりますので、イイんですよ。

ヘルメット形状で、走りは変わる

空気力学=エアロダイナミクスは、バイクの形状だけじゃなくヘルメット形状に対しても効果があって、上手く使えばライダーの味方になってくれます。

AGVの「PISTA GP RR」の空力特性を表したイラスト。後頭部のリヤスタビライザー/リヤスポイラーが空気を後ろに整流してくれるので、空気の渦が発生しにくくなります。

バイクとライダーは空気の中を進んでいるので、よくも悪くも乱流を起こしてしまいます。ヘルメットの前頭部から後頭部、そしてウエアの背面に流れる空気は、ヘルメット後頭部から背中にかけて渦を発生させて、渦の内側(ライダー側)には負圧域が出来ます。

バイクのデザイン(カウリングやスクリーン形状など)、ライディングポジション(上体の前傾度や頭の位置)、速度などによっても渦や負圧域は変わりますが、ヘルメットのフォルムでも大きく違ってきます。その最もわかりやすい例が最新ヘルメットの後部、リヤスタビライザー/リヤスポイラーなどと呼ばれる部分の形状です。

現在のMotoGPで使われているヘルメットの多くは、後頭部にリヤスタビライザー/リヤスポイラーを備えています。左のライダーはAGVのヘルメットを着用する、モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチームのヴァレンティーノ・ロッシ選手(MotoGP 2020年シーズン)。

現在のMotoGPでは最高速が350km/hにも達し、空気の流れの乱れは即スピードダウンにつながります。同時にライダーにとって、ヘルメットのフレはライバルと戦う上で大きなネガティブ要素です。そこで登場したのが、エアロヘルメットです。

かつてのレースシーンで使われていたヘルメットは、おなじみの丸いフォルムでした。現代のライダーが着用するヘルメットとは、頭頂部から後部の形状がかなり異なります。写真は1983年の世界選手権でNS500を駆るフレディ・スペンサー選手で、アライのヘルメットを被っています。
アライヘルメットを着用し、現在MotoGPにLCRホンダ・イデミツチームから参戦中の中上貴晶選手(写真はMotoGP 2019年シーズン)。

エアロヘルメット登場以前に、レーシング用レザースーツ(いわゆる革ツナギ)の背中のコブが誕生したのはご存知でしょうか。これは転倒時などに頸椎部分を守る目的(そのためネックガードとも呼ばれます)のほかに、フロントカウルやヘルメット、そして背中にかけて流れる空気を整流することもねらいでした。

さらに現在ではこのコブが、給水用バッグ(キャメルバッグ)やエアバッグ用コントロールユニットなどを入れるスペースにも利用されています。そして、コブへの空気の流れをより整えるために、ヘルメット後部を後ろに伸ばした形状が生まれたのです。

SHOEIのヘルメットを着用するレプソル・ホンダ・チームのマルク・マルケス選手(MotoGP 2019年シーズン)。
SHOEIの最高峰フルフェイスヘルメット、エックスフォーティーンの風洞テストの様子。マルク・マルケス選手も開発に携わりました。

後ろにスポイラーを装備したり本体を長い形状にしたヘルメットは、自転車競技などでも使われています(特に集団で競うのではなく、単独で時間を競うタイムトライアルの場合です)。

自転車のタイムトライアル競技で使われているエアロ形状ヘルメットの一例。ベルギーの自転車用ヘルメットメーカー「レイザー」のTT用ヘルメット「ボランテ」というものです。

ちなみに空気は上面だけでなく横からも下からも流れ、渦も巻きます。バイクをライディングする際は、頭・首や上体の動きを妨げてはいけないので、ヘルメットの下側は空力的にあまり効果的な形状にはできませんが、後部だけでなくヘルメット全体で空力特性をよくしようとする試みがなされています。

MotoGPだけでなく、量産市販車による最高峰のレース「スーパーバイク世界選手権」でも当然エアロヘルメットは大活躍中。後頭部の透明なパーツがスポイラーです。写真はスーパーバイク世界選手権で6連覇を達成したカワサキレーシングチームのジョナサン・レイ選手。

エアロヘルメットの具体的なメリットは?

ではエアロヘルメットの形状に、具体的にどんな効果があるかというと、ヘルメット(頭)の浮き上がり(Lift)、後方に押し付けられる(Drag)、横ブレ(Yawing)が軽減されます。

エアロ形状を追求したSHOEI エックスフォーティーンが、従来型エックストゥエルブに対し、「Lift」「Drag」「Yawing」をどのくらい軽減したかを表したイラスト。

特に最新型フルフェイスタイプでは、横ブレが大幅に軽減される傾向があります。ヘルメットのフレは複合的に起きますが、結果、ライダーは視界がブレてよく見えなくなりそうなとき、視界を確保するために頭の動きを抑制しようとして力を入れ、目、首、肩が疲れてしまうのです。

これはレースでは言うまでもなく大問題ですが、ツーリングでも長時間走れば疲労は蓄積し、もちろん安全上もよくありません。実際に最新エアロヘルメットで高速道路を走れば、その効果はだれでも体感できます。頭のフレが従来型よりも小さく、クリアな視界を維持してくれます。

そして昨今、ヘルメットのエアロ形状化はレース対応のフルフェイスタイプはもちろん、ジェットヘルメットにも及んでいます。
ヘルメットメーカーは、ヘルメットの形状を風洞実験でのデータなどから決定しています。ただし、エアロヘルメットの効果をより引き出す場合、ライディングフォームも大きく影響します。

後頭部にエアロ形状を取り入れたジェットヘルメットの一例、SHOEIのJクルーズII。

カウル付きモデルなら前傾姿勢を取って、スクリーンと頭の距離や高さを探ってみることです。感覚としては、頭をスクリーンに近づけて潜るようにして、風切り音の静かな位置を探します。整流効果が高い位置だと音が小さくなり、頭の位置がブレず安定してくるはずです。

この前後・高低位置は、カウリングやスクリーンの形状、身体の大きさ、ライディングフォームのよし悪し、ウエア(バタ付きがないか)でも異なりますが、とにかく静かで楽な位置がいいのです。

このことは、カウリングのないネイキッドやクルーザーにも当てはまります。メーターはその形状や取り付け角度などで、けっこう空気を上や横に飛ばしてくれていて、その飛ばした空気の内側に頭を入れれば効果が出てくるのです。
そしてヘルメットがエアロ形状であれば効果がさらに出ます。向かい風が強いとか、横風でフラフラする場合は、どんなバイクでも伏せてこの位置を探れば安定性も増すのです。
ヘルメットに求められる性能は安全性が第一ですが、その安全性を増すという意味でも視界の安定性は重要です。

また付け加えると、ヘルメットのフレはフィット性が甘い場合も起きます。サイズが合っていないと、風圧でズレるからです。本当にフィットしたサイズなのか、内装がヘタって緩くなっていないのかなども要チェックです。
ちなみに、風切り音はちょっとの形状の段差、溝、凹凸でも発生するので、ヘルメットメーカーは相当気を遣って設計・デザインしています。
プロライダーなどが、革ツナギに付くスポンサーワッペンをやめてプリントにしてフラッシュサーフェイス化しているのは、空力性能追及のためです。

そして、残る問題はライダーの肩とヘルメットの間です。ここは風切り音(つまり乱流です)が起こる場所です。
ウエアがダブついていると、風切り音なども大きくなります。ダブダブのカジュアルウエアにエアロヘルメットでは(もちろん個人のファッションの好みは自由ではありますが……)、高い空力性能は望めません。
ライディングフォームも然りですが、やっぱりヘルメットも含めた人車一体感が大事なのです。

レポート●石橋達也 写真●ヤマハ/ホンダ/アライ/SHOEI/AGV/HJC/レイザー 編集●中牟田歩実/上野茂岐

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