1970年代後半から連綿と続いた国内メーカーのナナハン自主規制が解かれ、大型二輪免許が教習所で取得可能となった平成初頭。リッターバイクが憧れではなくなった時代に咲き誇ったのは威風堂々たる"4発モデル"だった。
report●小川恭範
一時は「猫も杓子(しゃくし)も」状態に
世界に名だたる4大バイクメーカーが軒を連ねる国、ニッポン。
だが、そのお膝元では「国内仕様は750㏄まで」という自主規制が1980年代を通じて重くのしかかり、同じく70年代後半から行われていたバイク免許の〝限定解除〟制度と相まって、「ビッグバイクに興味はあるけれど自分にはハードルが高すぎる」と多感な時期に悶々としながら〝中免〟で乗れる250&400のレプリカモデルで欲求を発散するライダーが数多く存在していた。
だが、元号が替わって間もない平成2(90)年から、オーバーナナハンの国内仕様車が相次いで登場。
さらに平成8(96)年9月には、待望の大型二輪免許制度がスタート。
教習所でビッグバイク免許が取得できるようになったため、抑圧された20年余りを耐え抜いた元ヤングライダーがこぞって教習所へ。
腕に覚えのある人々は念願のライセンスを手に入れるや、渇望していたリッタークラスへジャンプアップ……。
空前のビッグバイクブームが始まった。
海外メーカー製ツアラーなどで〝上がる〟にはまだ早い。
とはいえ、バリバリのスーパースポーツや300㎞/hマシンはちょっとね……という、ある意味一般的な多数派ライダーの受け皿としてピタリとハマッたのが、まさしく「ビッグネイキッド」というジャンルだったのだ。
往年の名車をモチーフにしたフォルムやディティール、実にコンベンショナルなリヤ2本サス(金色が望ましい)、何より堂々とした並列4気筒エンジン……。
古典文法にのっとりつつも最新の技術が投入された〝ザ・二輪車〟は、アップライトなライポジとエンストしづらい太いトルクをもれなく標準装備しており、扱いやすさも十分過ぎるほど。
実際、筆者もモーターサイクリスト誌のアルバイト時代、CB1000SFに初搭乗したときの感動は忘れられない。
畏怖(いふ)を覚えるほどの巨躯(きょく)なのに、いざ走り出すと予想の斜め上をいく軽快過ぎるほどのハンドリング。
恐怖など微塵(みじん)もなく楽しく走っているだけなのに、周囲の人からは「そんなにデッカイバイク、よく運転できるねぇ」と勝手に尊敬されてしまう。
ゆえにツーリング、カスタム、走行会……何にでも使える高い汎用性を求めるライダー(リターン含む)への最適解として多くの人に選ばれてきたのは当然のことだろう。
〝御三家〟とも言えるCB、XJR、ZRXは、互いの出方を見ながら排気量拡大と改良を繰り返し、平成末期、厳しくなる一方の環境諸規制の影響で生産中止に追い込まれるまで、大排気量車のメインストリームに居座り続けた(CBはいまだに健在)。
そして今、新時代を告げるZ900RSやCB1000Rが大人気。日本人ライダーの定番ジャンルとしてビッグネイキッドは永遠なのだ。
「プロジェクトBI G- 1」の衝撃
巨大なガソリンタンクは23Lという容量以上の迫力。いざまたがると前方視界の半分を占めるようなイメージ(少々大げさ)。
空冷にこだわったXJRも大人気に
ヤマハならではの端正なスタイリングに、ツアラーFJ1200譲りの空冷並列4気筒エンジンを搭載。
1年前に先行して発売されていた400ともども人気を博した。
異形のストリートファイターも登場
カワサキZ1000(手前)やヤマハFZS1000フェーザーなど、SS譲りの心臓を持ち、エッジの効いたボディをまとう"ストリートファイター"系も2003~05年ころ相次いで登場した。
【平成バイク大図鑑4】なにより夜がアツかった平成前夜 フルスロットル狂想曲