ヒストリー

【カタナヒストリー】カタナはなぜ”名車”に成り得たのか。初代から新型までを振り返る

1981年に世にリリースされ、生産終了から長い時が経つが今なお絶大なる人気を誇る旧型カタナシリーズ。
世のバイク乗りならば誰しもが知っているであろう伝説のカタナたちを、今回は振り返っていこう。

report●山下 剛/高野栄一

今も語り草となる〝ケルンの衝撃〟

スズキ初の4ストローク並列4気筒エンジンとなるGS750はDOHC2バルブヘッドを採用して1976年に登場。2年後にはGS1000を完成させ、AMAスーパーバイクで常勝マシンとして名を馳せる。
79年、4バルブ化しつつ吸気効率を向上させる新技術、2渦流燃焼室TSCCを装備したGSX1100Eを生み出す。
日本ではGSX750Eが発売されるが、これについた俗称は〝べこ〟、牛である。当時、スズキは他を圧倒する高性能マシンを持っていたが、外観は決して洗練されたものではなく、それはスズキにとっても解決すべき問題点だった。

そんな折、スズキはドイツのデザインコンペに出品されたターゲットデザインの作品に活路を見出しデザインを依頼、生まれたのがGSX1100Sカタナだ。
80年のケルンショーで初公開され、これまでの市販二輪車の常識にとらわれない造形、日本刀をモチーフとしたシャープな曲線が描くフォルムに人々は賛否両論まっぷたつ!

●日本刀をモチーフにしたカタナのデザインスケッチ。実車では高速域での風圧を低減すべくスクリーンが追加されて、シート形状も変更するなど、フォルムを極力崩さないように細心の注意を払いながらの修正が加えられた

二輪車の造形設計、すなわちデザインはカタナ以前と以後に分かれるといって過言でない。
それまでのバイクは、レースでの必然性から生まれたカウルが市販車に装着されるようになってからも、デザインは空力性能最優先であり、美しさや格好良さだけを追求したものは皆無。
良く言えば機能美、悪く言えば無骨に過ぎた。

しかしカタナは違った
ヘッドライトを覆うカウルから燃料タンクにかけての緩やかな弧で描く鋭角なラインが現す刃の美しさ。
シートを斜めのラインで色分けすることで示した柄。バイクの上半身で日本刀を模した発想と表現力に、世界の価値観は一変した。
それが〝ケルンの衝撃〟である。
 

’80 1100 既成概念を覆した革新的デザイン


造形設計を手掛けたのはハンス・ムートが率いるターゲットデザインで、1980年のケルンショーで初公開された。
原型となったのは、前年にドイツの二輪誌が主催したデザインコンペのためターゲットデザインがMVアグスタの依頼で製作した「Rosso Raptor」で、低く構えた流麗な上半身の造形はそのままに日本刀のモチーフを追加。
スズキのフラッグシップスポーツと意欲的なデザインが融合して生み出された。
 

’81 1100 プロトタイプのイメージをそのままに市販化

ケルンの衝撃の翌年に市販された初代GSX1100Sカタナは、プロトタイプとほぼ同じ造形で81年に登場。大きな変更点はスクリーンの追加である。
1074㏄空冷並列4気筒DOHC4バルブエンジンはGSX1100Eと同型ながら、チューンアップによって最高出力を111馬力まで高められ最高速度は230㎞/h以上を誇る。
日本でも逆輸入車が入手可能ではあったが、59万8000円だった750Sに対し1100Sはその2〜3倍以上の値が付けられ、多くのライダーにとって高嶺の花だった。

●左が1100Sで右はGSX1000S。1000SはAMAスーパーバイクのレギュレーションに合致させるためエンジンをボアダウン(72.0→69.4㎜)し排気量を998㏄としたモデルだが、AMAやTT-F1も排気量上限が1000㏄から750㏄へと下げられたことによって需要が減り、短命に終わった


 

●1100SのBSキャブレター(左上)と1000Sに採用されたVMキャブレター(右上)。1000SにもBSキャブ仕様が存在する (下)当時のバイクでは珍しいコンビネーションタイプのメーターもカタナのアイデンティティのひとつ。速度計は240㎞/h、回転計は1万2000回転まで目盛られレッドゾーンは9000回転から

 

→次ページ:当時のカタナに降りかかる悲劇!?

 

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