ヒストリー

名車ホンダ CBX400F「1982年新車時試乗レポート」400ccクラスに衝撃を与えたスーパースポーツ

CBX400F ホンダ

CBX400F「今なお人気は衰えることを知らず」

1974年、ヨンフォアの愛称で親しまれたCB400FOURで400ccクラスの4気筒化に先鞭をつけたホンダだったが、いくつかの理由によってそのモデルサイクルは短命に終わる。その後は2気筒エンジンのホークシリーズがこのクラスのホンダの屋台骨であったが、その間にカワサキ、ヤマハ、スズキが次々と400ccクラスに高性能4気筒車を市場に送り込み、免許制度の関係もあり、80年代初頭は400㏄マルチが大ブームとなっていた。そして満を持してホンダがリリースしたのが、今なお名車として語り継がれ、そしてその人気もまったく衰えない「CBX400F」である。

1981年冬、CBX400Fの新車発表時の試乗記事を『別冊MOTORCYCLIST』1982年1月号より抜粋し、ここに掲載する。
試乗を担当したライダーはモーターサイクリスト誌のテストライダーを過去に務め、第1回鈴鹿8時間耐久オートバイレースで8位のリザルトを残した、単気筒レーサー「ロードボンバー」の設計者、島 英彦氏である。

試乗「ホンダ CBX400F」

時代を先取りしすぎたCB400Fは400ccクラスマルチ全盛の時代を迎え、よりグレードアップしたCBX400Fで今再び王座を狙う。

鈴鹿サーキットを走る、CBX400F+島 英彦。

2順目のバッター

1972年、ホンダはCB750(1969年)、CB500(1971年)に続く、第3の4気筒エンジンとしてCB350Fを発表したが、それはスーパースポーツというより、ハイクオリティな大人のツーリングモーターサイクルといった色合いが濃かった。性能的にみても、CB350ツインに対して、特に優位に立つこともなく、ひたすらスムースで軽い走りをするバイクで、若者にアピールする要素は少なかった。
当時は免許制度が現在と異なり400ccまでの区分がなかったためもあり、このおとなしい自動二輪の売れ行きはかんばしいものではなかった。

そこでホンダのとった作戦は400ccへの排気量アップと、徹底的なデザイン変更によるスーパースポーツ化であった。これが現在でも名車と呼ばれるホンダドリームCB400FOURの誕生であり、同時に日本特有の400ccクラスの活発化にも拍車がかかった。しかし、この人気車種CB400FOURは比較的短命に終わることになる。ホンダ自身によれば「7年前は、暴走族、公害、省エネなどの社会問題があり、バイクにとって厳しい状況だった。スーパースポーツCB400FOURが名車といわれながら、我々の期待ほどに売れなかったのは、社会環境によるところも大きかった」。

そこで時代の要求に応えて、ホンダは1977年に2気筒3バルブのホークを発表した。アメリカンからスーパースポーツまでそろったホークシリーズは、一応の成功を収め、400ccブームは改正された免許制度にも助けられ、大きく伸びた。
そのブームの中で他社はSOHCツインのホンダに4気筒で対抗し、カワサキ Z400FX、ヤマハ XJ400、スズキ GSX400Fと市場には400ccマルチがあふれることになり、このクラスに駒を持たないのは、中型マルチの元祖、ホンダだけという皮肉なことになってしまった。

ホンダファンのCB400FOURをなつかしむ声は大きくなり、中古車市場では新車価格を上回るものさえ出るありさまだった。そうなればファンがホンダの新型マルチを期待しないほうがおかしく、ここ1〜2年、6気筒だ、いやV型だと外野の声は高まるばかりだった。
そんな喧噪(けんそう)の中、CBX400Fは1981年秋の東京モーターショーで、ファンの前に姿を現わした。
今さらいうまでもないが、エンジンはDOHC4気筒であり、ここにいたって、4社がまったく同じ土俵に上がったわけだ。今度はCBX400Fが最後のDOHCフォアということになる。

「最初に400フォアを出したウチとしては、2順目のトップバッターだと思っている。そのためには他社と同じものではダメで、持てる技術のすべてを注ぎ込んで、コンパクト、軽量ハイパワーを追求した」(ホンダ技術陣)
400フォアを野球の打者にたとえたわけだ。同じピッチャーを相手にして打つなら、2度目にはそれなりの策を持たなければプロではない、ホンダはそう言いたかったのだろうか。

機は熟した

「合理性だけを追求するのではなく、豊かで、ある程度自由なことをやっていいのが現代だと思う。そこで、400cc市場に刺戟を与えてリードするには、遠慮はいらないのではないか。走りに徹したCBX400Fも、今の時代なら受け入れてくれるだろう」
これが開発意図であり、結果としてCBX400Fは400ccとしては最高の48psの出力と、インボードベンチレーテッドディスクブレーキ、プロリンクサスペンションなどの最新技術を満載しながら173㎏(乾燥)の軽さで登場したわけだ。
もちろん、エンジン、ブレーキ、サスペンションのすべてが、完全に新設計であり、細かいスペックを注視するまでもなく、ひと目で新しいとわかる外観を持っている。

「ただし、遠くから見た時のシルエットが、今までのCB750Fなどと違い、これがホンダだという印象は薄い。その意味ではおとなしいデザインだし、今後の可能性を秘めていると思う。新設計のブーメラン型ホイールも、意外にも新しい感じがしない」とライダーの島英彦。
色彩の派手さと新機構の数々は、十分アピールするものの、CB750Fが持つフォルムそのものの独自性はやや弱いといえるかもしれない。

775mmという低いシートに腰を降ろすと、170cmの私には十分な足着き性が確保されていることがわかる。低いハンドルは、グリップラバー外側までで690mm弱で、シートに近いため、全体に上半身はピチッと決まり、実際以上にCBXを小柄なモーターサイクルと感じさせているようだ。これは走りだしてからもかわらず、取りまわしやすさにもつながっている。
「外観的にも、ステアリングへッドとへッドライトが低い傾向にあり、これがバイクを小さく見せている。ライディングポジションは足元をもう少しツメて欲しい。そうすれば、下半身の一体感はずっと向上するだろう」(島)
ライダーの目から見るハンドルまわりの豪華さは、CB750FやCBX(1000)と同等のもので、ジュラルミン鍛造のセパレートハンドルや中央に燃料計を配した、各種警告灯付きのメーターパネルは400ccクラス一のグッドデザインだ。

前後、特に後方からこのバイクを見ると、今までになかったものを発見できる。それはウインカーをテールランプと一体に組み込んで、スッキリさせてしまったことだ。前方の55/60Wのハロゲンランプをはさんで独立したウインカーの灯間も従来より狭い。
「4輪車から見られることが安全上重要なバイクの場合、新型のウインカーがどう映るか。今回の試乗では確認できなかったが、新しいものだけにやや不安だ」(島)

ニューテクノロジー

エンジン型式NC07E。空冷4サイクルDOHC4バルブ4気筒。

エンジンはDOHC4バルブで、カムシャフトはサイレントチェーンで駆動される。バルブはロッカーアーム(ホンダではアンダーフロアロッカーアームと呼ぶ)を介して作動させるタイプであり、シリンダーヘッドは、スズキのGSXに似たメカニズムを持つロッカーアーム採用の理由も、スズキと同じメンテナンスの容易さを第一にあげている。これは工場でのエンジン組み立て時にも生きてくる利点だから、生産コストを考慮せざるを得ない量産車に向いた方式ともいえよう。

ところで、DOHCにロッカーアームを使うこと自体はすでにCB450で10年以上も昔に経験済みだから、ホンダにとっては初体験ではないわけだ。
吸気21mm径、排気19mm径の各2本のバルブの中央にプラグは配置され、点火方式はメインテナンスフリーのトランジスタ方式だ。
エキゾーストシステムは、高回転での脈動効果を利用するため、1-4番と2-3番シリンダーからの排気をエンジン下で集合し、この直後で左右のパイプを連結するというもので、最後のマフラーは2本。これを右前方から見ると、かつてのCB400FOURをほうふつさせるのは、やはり血筋というものだろうか。

「CBX400Fで最も重要なのはエンジン位置を従来より20〜30mm下げたことだ。低重心はハンドリングの基本といってもいいもので正解だと思うし、反面やっとここまできたか、の感もある。これは4バルブやプロリンクとは別次元のことだが、絶対にこうあるべきだ」(島)
低重心の実現には、エンジン位置を下げる必要があるが、市販車では地上高の確保も重要項目である。エンジン下部を通るエキゾーストパイプがオイルパンをじゃまをし、今ひとつエンジンを下げられないことが多い。これを解決するためにホンダはオイルリザーバータンクを新設し、オイルパンを小型化した。リザーバータンクはオイル溜めとしてだけでなく、オイルクーラーとしても働くよう設計されているのはもちろんで、これは同時にスーパースポーツとしての外観にも一役買っている。

リヤはプログレッシブ リンケージ (プロリンク)サスペンション。量販車では世界初となる中空アルミキャストリアフォークが採用されている。

サスペンション、ブレーキにもエンジンに劣らず注目すべき点が多い。第一にはリヤサスにプロリンクが採用されたこと。モトクロッサーで開発されたこのメカニズムは、すでに輸出仕様のGL各車やCXターボには使われているものの、公道を走れる国内向け市販車にはXL250Rともども初のお目見えだ。ダンパーはエアー併用式で、ノーマル値は2kg/cm2だが、1〜4kg/cm2の調整が可能。
プロリンクの利点はプログレッシブな作動だけではなく、重量物の集中による運動性の向上も見逃せないところだ。
プロリンクの採用に伴って使われた実に長い中空のアルミダイキャスト製スイングアームは世界初のものだという。これをみても、ホンダがCBX400Fに注ぐ力の程がうかがえる。

フロントにエアー併用式フォークを使うのは、ホンダにとってすでに当たり前といえるが、TRAC(トラック)と名付けられたアンチノーズダイブは、プロリンクと同じく国内初登場だ。本誌でも市場したCXターボのものと作動原理は同じだが、テンションロッドを使うなど、やや異なる部分もある。
可動式キャリパーをブレーキング時のトルクを利用して動かし、これにつながれたバルブを閉めることによって、ダンパーオイルの流れをコントロールするもので、効きは4段階に調節でき、アンチノーズダイブ作動中でも、路面からの突き上げがあった場合は作動をキャンセルする機構を備えている。

フロントブレーキはデュアルピストンキャリパー+鋳鉄製ディスクプレートを採用、ドラムとディスクブレー キの長所を合わせもつインボードタイプ。

ブレーキは、フィーリングの向上を図って、ディスクプレートを鋳鉄製のベンチレーテッドタイプにしたことと、ディスクプレートを外側からはまったく見えないことの2点が注目される。一見してドラムのように見えるが、実はディスク外周、及び右側面は、一体となって回転しながら熱気をはき出す遠心ファンであり、左側は大型のエアースクープとディスクを通常と反対の内側からつかむキャリパーがある。ディスクプレートは外側に3ヵ所のみみを持ち、フローティング方式でホイール側にセットされる。


かくして、CBX400Fが大ヒットとなったのは多くの人が知るところだろう。革新的なメカニズムに支えられた走り、高回転を用いた加速やハンドリングもまた格別のものだったのである──。

ホンダ CBX400F 主要諸元

■エンジン 空冷4サイクルDOHC4バルブ並列4気筒 ボア・ストローク 55.0×42.0mm 排気量 399cc 圧縮比9.8 最高出力48ps/11,000rpm 最大トルク3.4kgm/9,000rpm
■ 変速機6段 変速比 1速 2.769 2速 1.850 3速1.478 4速1.240 5速1.074 6速0.931 1次減速比 2.565 2次減速比 3.000
■寸法・重量 全長 2.060 全幅 0.720 全高 1.080 シート高 0.780 軸距1.380(各m) 乾燥車重173kg 燃料タンク容量17L オイル容量3.0L タイヤサイズ前3.60H18 後4.10H 18 キャスター26度 トレール97mm
■価格 48万5,000円(ツートン) 47万円(ソリッド)
*数値はすべて発売当時のもの


リポート●島 英彦/佐藤康郎 写真●外園功光/八重洲出版 編集●飯田康博

*当記事は『別冊MOTORCYCLIST』1982年1月号の記事を再編集したものです。

■関連記事 後編:ホンダ CBX400F「1981年新車時試乗レポート」クラストップの48ps! 180km/hの最高速域でも不安なし

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