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スチールとアルミを組み合わせた3ピース式のダイヤモンドフレーム
空冷6気筒、空冷4気筒などの試行錯誤を経て、エンジンは4バルブの水冷並列4気筒と決まった。カウルを含めた車体は徹底的に空力を追求。
GPZ900Rが目指したのは、当時の市販車で限界と言われていた最高速240km/hを超え、最高速250km/hという性能だった。
*当記事は『別冊モーターサイクリスト1984年5月号』GPZ900R 対 FJ1100の記事を再編集したものです。開発エンジニアへのインタビューは当時のものとなります。
GPZ900Rのフレームはステアリングヘッドにつながるメイン部を高張力鋼管で作り、後方シートレールまでをアルミ角パイプで作っている。そして、一般的にはステップホルダーとなるアルミプレートをフレームのコネクションプレートとして使った、ボルトオンの3ピース式である。
前半分で全体の剛性をもたせて、後ろ半分は人が乗るだけだから、アルミでというわけだ。前半分もアルミで作れないことはない。しかし、必要な剛性をアルミで得ようとすると重量的なメリットが少ないわりに、コストがアップするためだ。
フロントホイールは16インチ。直進安定性を増すにはトレール量を大きくすることが必要だ。フロントフォークのオフセット量をこれまでの50mmから40mmへ小さくし、キャスターも26度から29度へ変えた。こうしてトレールは99mmから114mmへと長くなっている。
16インチホイールのハンドリングは、とかく軽すぎるとか切れ込みすぎるとかが問題となる。「16インチというのは、18インチと比べるとフロントまわりの慣性能率が小さいんです。これが、ハンドリングが軽すぎるとか、切れ込むとかいうことに効いてくる。だから18インチ並みの慣性能率を与えてやるよう、いろいろやりました」(ホイール、ブレーキ、サス担当・新名二郎技術部員)
フロントフォークブラケットから前、ホイールまでの動的なマスであるとか、車全体として見たときの重心位置、ホイールベースなどを検討。結果としてほどよい軽快さと18インチ並みの安定感を出した。
「空力を追求したGPZ900R」250km/hのカベを破った
16インチホイール採用は、空力特性向上という目的もある。ステアリングヘッド下面の地上高は、GPz750Fより38mm低い732mmにおさめられ、カウリングのウインドシールド上面は、地上高1215mmと、同じく45mmも下げられた。こうして、前を低くし、前面面積を小さくして空気抵抗を減らす。同時に、カウリングも風洞実験を重ね、空気抵抗の少ない形状を生み出していく。
これまでモーターサイクルの最高速度は、量産車では240km/hのカベをなかなか破れなかった。それを250km/hオーバーにまで高めようというのだから大変である。エンジン出力を10psやそこら上げたところで達成できる目標ではない。力を出すより空力をよくすることでスピードを上げようという時代なのだ。
いろいろやった結果、空気抵抗係数(Cd)でいうと、ハーフカウルのGPz750Fが0.4ぐらいであったのに対し、0.33に下げられた。
「バックミラー1個で何km/hとか、フラッシャー2個で何km/h違うとか、いろいろやりました。最高速250km/h前後は必ず出ます。アンダーカウルをもっと長くすると、さらに数km/hアップするんですが、メインスタンドが付けられなくなるので。空力というのはビスの頭を埋め込むとかいう、細かな部分をひとつひとつやって初めてトータルで効いてくるようですね。そのあたりはグラム単位でやる軽量化と似てるんじゃないかな?」(技術部商品企画班スタイリンググループ・栗島忠弘技術部員)
空力の追究と同時に、車体デザインも本格的に始まっていく。
「全長がやたらに長くなりそうなイメージがあったんで、後ろをチョン切ったようなのも考えました。フレームの後ろ半分が当時はキャスティングだったので、これを見せてもっとこう全体をメカトロニクスみたいにガチガチにいこうとか。でも北米マーケットを考えるとあんまり過激なものはアメリカで売れない。イルカのラインも抑え気味になりました」(栗島)
エンジンもまとめづらかった。
「シリンダーの特に左側はのっぺりして、何か光った物を付けないと機関車みたいになる。それで入れたのがヘッドの3本線です」(栗島)
カウリングがエンジンが見えるような形状になったのは横風に対処するためでもあった。また、フレームは最近の流行とは逆にカウリングで覆って目に触れないようにした。
「250km/hの世界ではチェーン」が保たない!?1
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