実のところ、メカニズム的には高性能をアピールする要素はこれといってない、オーソドックな構成のCB750。
しかし、それらが絶妙なバランスで「扱いやすい」という特徴を生み出していたのだと思うし、大型バイクとしてはリーズナブルな価格にも貢献していたのだと今となって思う。
report●上野茂岐 photo●沖 勇吾
「令和」の時代でも通用するんじゃないかと思う”ベストバランス”
前編で紹介したように、僕の印象とベテランライダーの声をまとめると、CB750の「乗りやすい」という特徴はこんなことなんじゃないだろうか。
「腕に覚えのあるライダーにはどこまでいけるか?というセンサーが明確で想いのまま操れて、ビギナーにとってはミスに対する修正操作もしっかり反映してくれる優しさもある」。
前編はこちら!! 【もう一度乗りたい90年代車】HONDA CB750編 (前編)
そこで驚くのは、CB750が至って普通の構造で作られていることだ。フロントは正立フォークで、リヤはツインショック。ブレーキはラジアルマウントでもないし、ABSもない。「レーシングマシン譲りの何々」もないし、電子制御機構もない。エンジンは空冷かつキャブレターで75馬力、数字だけ見れば大したことはない。

写真は最終型となった2008年モデル。1992年の発売から2008年の生産終了まで3度の年式マイナーチェンジが行われ、メーターの距離計が液晶になるなどの変更が加えられた。

そのほか、リヤサスペンションがリザーバータンクの無いタイプのものになる(そしてまたリザーバータンク付きのに戻る)、エンジンの塗装がシルバーからブラックになるなど、細かい変更は行われているが、エンジンやフレームなどの基本構成は変わっていない。
それゆえか70万円台半ばと新車価格がリーズナブルだったのだろうか。時代が10年以上違うし、ABSやETC、グリップヒーターなどが標準装備されているなど装備面での違いもあるので単純比較はできないが、ちなみにホンダNC750Xマニュアルミッション仕様は80万円後半だ。

センタースタンドが標準装備だったのも、地味ながら気に入っていた。チェーンの掃除に便利なんだもん。

荷掛け用のレール・フックもしっかりしていて使いやすかった。ほか、燃料タンクも20Lあって後続距離も十分だったし、それら実用性の高さも特徴のひとつだと思う。
とまあ、所有感を高めるような高性能さをアピールするようなところもなく、凝ったデザインというわけでもないのだけど、半面、気兼ねなく何にでも使える美点だったように思う。
実際、”公道教習車”ではなく”愛車”へと変わったCB750を、日帰りにロングにとツーリングに使うのみならず、街乗りの足としても使っていたし、どんな場面でも不満を感じることはなかった。
平成から新しい時代に変わるこの今においても、こんな万能性を持っていて、しかもビギナーからベテランまでが楽しめるというバイクはなかなか無いんじゃないかと思うのである。
なお、2008年に生産終了となり、2019年現在、中古車価格は結構高値安定である。走行距離が少なく、状態のいいものだと新車価格に近いものなんてのもある。
もう一度手に入れると考えるとちょっと困るが、良さが再評価されたと考えるとちょっと嬉しい(高い中古車価格の理由には今後二度と手に入らないであろう「キャブレター+空冷4気筒」というものへのヴィンテージ感みたいなものもあると思うけど)。

●なお筆者はCB750の後、600ccネイキッドモデルのヤマハXJ6(逆輸入車)に乗り、そしてその次にモトグッツィV7ストーン乗り……と、中間排気量車ばかりを乗り継ぐバイクライフを送る(未だにリッターバイクを所有したことはなし)。