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ヒストリー

ホンダ初代レブル、出生の秘密「エンジンは70年代の125ccビジネスバイクがご先祖様だった!?」

ホンダ レブル 初代

1985年に登場した初代「反逆者」ホンダ レブル(250)

現在売れている軽二輪(いわゆる250ccクラス)の筆頭と言えば、ホンダのレブル250だろう。街中でもツーリング先でも確かによく見かける。

クルーザーでありながら単気筒エンジンを搭載する点や、シャシー周りをブラックアウトし全体的にクールなイメージとしたデザインは、ありそうでなかったスタイルだ。
これまでのVツインクルーザーのように装飾メッキを配した意匠と異なり、独特な世界を醸し出している。

タンクや各部の形状は個性的ではあるが、各部が変にでしゃばっているわけではなく、全体的にイカしている。表現が難しいが、そんな感じがウケているのだと思う(筆者、昭和40年代生まれなもんでついついこんな言い方をしてしまう)。

2017年に突然復活(!?)したレブル250。エンジンは249ccの水冷DOHC4バルブ単気筒で最高出力26ps、車重は168kg(ABS仕様が170kg)。2017年当時の価格は53万7840円〜。
2020年のマイナーチェンジを経た現行型レブル250。各灯火類がLED化されたほか、ABSが標準装備となった。価格は59万9500円。

また、そんなクールなイメージにレブル=rebel(英語で反逆者の意味)の車名は似つかわしいが、その車名、ベテランライダーにとっては少し懐かしい。
1980年代の半ば、ホンダにはその車名を冠した250ccクルーザー……いや、当時でいうところの「アメリカン」があったからである。

「初代レブル」が登場したのは1985年、今(2022年)から37年前のことだが、当時の国内二輪市場はレーサーレプリカが活況を呈し始めた時期。
特に250ccクラスではスズキ RG250Γ、ヤマハ TZR250などが登場し、ロードレーサーからフィードバックした新メカニズムで性能を競いつつ、各社が過激なモデルを次々と送り出していた(ホンダが1986年にNSR250Rを投入して爆発的なヒットを記録したのは多くの方がご存知だろう)。

そんな時期に登場したのが「まるで高性能なんて関係ない」と言わんばかりにロー&ロングなアメリカンスタイルをまとった初代レブルであり、ある意味でそれは国内250ccクラスの潮流の中で「反逆者」だったのかもしれない。
もちろん当時もアメリカンのカテゴリーは存在していたけれど……。

ちなみに現在の250ccのレブルは「レブル250」という車名だが、初代レブルは排気量違いのバリエーションモデルもなく「レブル」だけが車名であった。

1985年登場のホンダ レブル(初代)。エンジンは233ccの空冷OHC2バルブ並列2気筒で、最高出力21ps/8500rpm、最大トルク2.0kgm/7000rpm、新車当時価格33万9000円。
1985年登場時に同時ラインアップされたレブル スペシャル(特別色のモデル)。当時の製品リリースでは、車名のレブルについて「直訳すると反逆の意。おしきせを排し、自由に行動すること」と説明。スペシャルは1万円高い値付けだった。

初代レブルの構成「こだわりの専用フレームと質実剛健な並列2気筒エンジン」

初代レブル(1985年モデル)。ロー&ロングの迫力あるデザインを確立しつつも、車重147kg(乾燥137kg)、シート高660mmという軽量コンパクトな構成も特徴だった。

初代レブルの立ち位置やコンセプトは斬新だったものの、中身は実に真面目で質実剛健な作りだ。

要となるエンジンは360度クランクの空冷並列2気筒なのだが、初代レブルには同系エンジンを積んだ「先輩アメリカンモデル」が存在する。
それが250T MASTER(マスター)と250T LAカスタムの2モデルだ。

ともに長めで寝かされたフロントフォークと段付きシートを採用し、当時定番の手法で国産アメリカンを具現化しているが、マスターは実用的な廉価版で前後スポークホイールとドラムブレーキを組み合わせた仕様。
一方のLAカスタムは、当時ホンダが新開発したブーメラン型コムスターホイール(アルミ)にディスクブレーキを装備し、各部にメッキ処理を施した仕様だ。

初代レブルの先代アメリカン、1981年登場の250Tマスター。コンパクトで軽量(車重141kg)、良好な足着き性(シート高730mm)が特徴。新車当時価格は29万円。
同じく1981年登場の250T LAカスタム(新車当時価格31万円)。エンジンはマスター&LAカスタムとも同様で、最高出力21ps/8500rpm、最大トルク2.0kgm/4000rpm。リッター58km(50km/h定地走行)という燃費性能もウリだった。
1982年には駆動系をベルトドライブ化した250TマスターS・D(サイレント・ドライブ)も追加発売された(新車当時価格30万円)。

1981年登場の上記2モデルはヒットモデルにはならなかったが、それを生かしてセミダブルクレードルフレームを新開発し、ティアドロップ型タンクやボブテールを採用するなど、より本格的なアメリカンテイスト(いわゆるチョッパー風味とも言えるか)を追求したのが初代レブルだ。

250Tマスター&250T LAカスタムからレブル250に至る空冷並列2気筒エンジンは、厳密には「250フルスケール」ではない233cc。ボア×ストロークは53mm×53mmのスクエアエンジンで、実用域を重視しつつ高速域との両立を狙ったものだ。

原型となったエンジンはビジネスバイクのCD125T(1977年~)。
これはボア・ストローク44mm×41mmの124cc空冷並列2気筒エンジンだが、このベースエンジンの気筒間ピッチ、ケース肉厚などの余裕を見つつ、最終的に排気量233ccのスクエアエンジンという形になったのだろう。

当時としては斬新なスタイルが非レーサーレプリカ層の支持を集め、初代レブルはそこそこのヒットとなった。その後も長くラインアップに載り続けたが、1998年の排出ガス規制によって生産終了(販売は1999年に終了)。
しかし、北米向けには2000年以降も生産・販売が継続され、少数が逆輸入車として国内でも流通していたと記憶している。

1977年登場のビジネスバイクCD125T。最高出力12ps/9500rpm、最大トルク0.96kgm/7000rpm、新車当時価格18万8000円。2001年まで販売は続いたが、1987年にミッションが4速→5速となった以外、デザインや性能は大きく変わらなかった。

初代レブルは軽量コンパクトな車体、経済性・耐久性にも優れていた

そんな初代レブルには幾度か試乗経験があるが、正直言って鮮烈な記憶を残す感じではない。なんというか、空気や水のように「素」の印象なのだ。

プルバックハンドルは無理なくライダーが手を添えられる位置にあり、ステップは着座位置から遠からずの自然な手前下。
シートは両足接地でも余裕でヒザが余るほど低いけれど、窮屈でもない。平均的なというか、体格の大小に関係なく日本人になじむライディングポジションといえる。

そして125ccのビジネスバイク用を原型とする並列2気筒は、穏やかに安定したフラットトルクで、低回転から気楽に速度を乗せ、高回転域ではやや苦しげとなるが、それなりに回る。
しかし、不満はない。低中回転と実用的な速度域で素直にバイクを走らせるという、きっちりした仕事をこなしてくれるからだ。

1988年からはスポーティなバージョンとしてフラットバー(一文字)ハンドル仕様も追加。当時価格は36万9000円。後に廃止となるが、このフラットバーフォルムは現行レブル250と通ずるものを感じる。

最高出力21ps/8500rpm、最大トルク2.0kgm/7000rpm(最初期モデルの数値)のエンジンは、引っ張れば120km/h強まで出せないことはないが、そもそも「それ以上」を求めていないライダーが気持ちよく鼻歌まじりに流す……それが初代レブルの乗り方、魅力であろう。

片や、上限45psの自主規制値内の性能で、180km/hを余裕で超えるスピードが出る、否、ちょっといじれば200km/hだって不可能じゃない──2スト4スト入り混じり、性能上限を各社で競い合っていた80~90年代前半の250ccスポーツモデル。

当時も今もそれらばかりが脚光を浴びがちだが、「レーサーレプリカブーム」の渦中にだって、身の丈に合って、自然に流せるバイクを求めていたユーザーがいたわけだ。
ブームに左右されず、我が道を行くある意味では「反逆者」とでも言おうか──。

しかし、勇ましくワイルドなネーミングに反し、初代レブル250は扱いやすいエンジンと軽量な車体に加え、経済性・耐久性にも優れた実直・優等生バイクでもあった。
そうした初代レブルの持つ特徴は、クールな雰囲気に生まれ変わった現行レブル250にも共通する部分かもしれない。

付録「その後の初代レブル系空冷2気筒搭載モデル」


ホンダ CD250U(1988年登場)

初代レブル系360度クランクの空冷並列2気筒エンジンはその経済性と実用性の特徴から、先祖返りするがごとく、1988年登場の軽二輪ビジネス車CD250Uにも活用された。
が、残念ながらCD125Tのようにロングセラーとはならず、短命に終わる。

ホンダ ナイトホーク250(1992年登場)

CD250Uに次いで、初代レブル系エンジンが活用されたのが1992年登場のナイトホーク250。
「シンプルで飽きの来ないアメリカン・スタイルのロードスポーツバイク」という少々不思議なコンセプトがハマらなかったのか、ナイトホーク250も国内では短命に終わった。


レポート●阪本一史(元『別冊モーターサイクリスト』編集長) 写真●ホンダ
編集●上野茂岐

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